第2章
「セヴェル! どうしてここに?」
「……セヴェル君……」
2人はセヴェルの登場に驚きながら複雑な気持ちで出迎えた。
「ここに来たらお前ら2人にあえると思ってな。しかし、
腹が減った……」
「私もお腹がすいた……」
それもそのはず。セヴェルは言うまでもなく、2人は朝食を
食べた後買い物に出かけたが昼食をとっていなかったのだ。
「じゃ、夕食を作りますね。ちょっと待ってください」
とりあえず夕飯を作る。
今日のメニューはパセリとバジル、ニンニクの効いたパスタと、
炙った干し肉を細かく切ってサラダの上に乗せたものだった。
「うめえ! パスタもサラダも両方うまいな」
「このパスタ、ハーブが効いてて美味しい……」
「そうですか? それはよかったです」
そうこうしているうちに夕飯を食べ終わった。
3人で夕食を食べた後茶を飲みながらこれからどうしようかと
いう話になった。
「ん? なんだルシェットその本は?」
セヴェルがルシェットの魔導書を見つけたようだ。
「中級魔法を覚えるための本ですよ。明日からルシェットさん
の練習のお手伝いをしようと思って」
「ふーん、魔法か。俺には無用の世界だな」
「中級魔法……うまくできるかな……」
「今のルシェットさんの魔力ならできますよ」
「じゃ、明日練習しよう。セヴェルはどうする?」
「俺は練習の見学するぜ。どうやって魔法を覚えるのか興味が
あるしな」
「それでは明日お弁当を持って行きましょう。何を詰めようか
迷いますね」
「おーい、ここでいいのか?」
ここは町から少し離れた草原地帯だった。ここなら誰に見られ
る心配もないだろう。
「えーっと……中級魔法は……。1種類しか書かれてませんね
炎の属性でその名前はフレイム……と書いてあります。僕には
扱えない魔法ですね。ルシェットさん用の魔法のようです」
「えいっ……フレイム!」
ルシェットがスタッフを掲げて魔法を唱えたが、何のことはな
い。初級魔法のファイヤーと威力は変わらなかった。
何度も練習するが、1回も成功しないままいたずらに時間が過
ぎてゆく。
「……フレイム! 何で成功しないの?」
「練習に失敗はつきものです。休憩を兼ねて昼ご飯にしましょ
う」
「はーい。お弁当何かな?」
「それは開けてみてのお楽しみです」
バスケットを開けると、1つ目がベーコンとスクランブルエッ
グときゅうりのサンドイッチ。2つ目が林檎を砂糖とバターで
焼いてシナモンをまぶし、生クリームを挟んだサンドイッチだ。
飲み物はメルカとミルクを混ぜたジュース。メルカにはマナを
回復させる効果がついているので魔法の練習の時にはぴったり
の飲み物だ。
「……フレイム! ああ、駄目。また失敗」
昼ご飯をちょこちょこっとだけ食べたルシェットが、魔法の発
動をできずに落ち込む。
「おい、そんなに焦るなよ。まだサンドイッチを1つだけ食べ
ただけだろ。マナ切れ起こしたって知らねぇぞ」
ベーコンのサンドイッチを食べながら、セヴェルが言う。
「そうですよ。マナ切れだけならまだしも、倒れられると心配
です」
ジュースをコップに注ぎながらエリュニスもそう言った。
「う……でも……」
その時ルシェットのお腹がぐうううぅぅぅ……と盛大に鳴った。
思わずお腹を押さえてしゃがみ込む。
「そらみろ。腹は正直だな」
「飲み物だけでもいいのでいかがですか?」
林檎のサンドイッチとジュースをもらい口にほうばる。心にし
みる甘さで気持ちがホッとした。
昼食を食べてから何度目かの詠唱だろうか。まずは落ち着いて
ゆっくりと呼吸を一つ。スタッフを掲げて呪文を唱えた。
「……フレイム!」
拳3つ分の炎がスタッフの先から発動した。初級魔法のファイ
ヤーがの炎が拳1つ分なので大きな進歩だ。
「……やった! ……でき……た……」
そう言って倒れこむ。エリュニスにおんぶされ、貸し住宅へと
戻ることになったのだ。
「……よく頑張りましたね。ルシェットさん」
そうエリュニスの声が聞こえた気がしたがルシェットにはわか
らなった。