第13章
「ふー、小屋についたー!」
「結構時間かかりましたね」
「うん、空を飛ばずに歩いたから」
「それは確かに便利そうですが
……」
荷物を置きに小屋の中に入る。
小屋の中はクモの巣とホコリに
まみれていた。
軽く小屋の中を掃除してから、
荷物を置いた。小屋の外は採取
用のカゴが置いてある。
「エリュニス、こっち」
「なんですか?」
小屋を抜け少し歩いたところに
小さな湖があった。水を両手で
掬い取ってみると、透明できれ
いな水だ。ルシェットは掬った
水を飲み、エリュニスは水筒の
中に水を汲み一口飲んだ。
「ふぅ。すーっとする」
「街の水よりも美味しいです。
喉にしみこんでいくような……
落ち着きます」
「この透明度ならポーション作
りにいいかな」
「そうですね。ポーション自体
の質も上がりそうです」
「早速薬草を採取するよ」
採取用のカゴを背中に背負って
薬草を採取しに出かけた。
薬草や木の実等がたくさん生っ
ている。明らかに毒がありそう
な薬草や茸、赤くて小さなベリ
ーの実なども採取する。思わず
つまみ食いしそうになる所をぐ
っとこらえた。今の季節はベリ
ーが沢山とれた。
「わぁ、ベリーが沢山」
「戻ったらベリーはジャムにし
ましょう」
ジャムの使い道を想像するだけ
で涎がでそうになる。隣を見る
とエリュニスがくすくすと笑っ
ていた。
「うぅ、笑われた……」
「すみません、つい」
「別にいいけど……」
「すみません、目を閉じて口を
開けてみてください」
「え、何?」
「はい。どうぞ」
「……! 甘酸っぱい」
「さっき摘んだベリーです」
「あ、美味しい」
「少しならいいと思って」
自然に口が綻ぶ。エリュニスが
少し笑顔だ。たわいもないこと
だが、酷く幸せだった。小さな
頃に愛情を注げられるべきだっ
たと思い出し、エリュニスはく
らりとするが必死に振り払った。
「あれ……?」
「どうしたの? エリュニス」
「いえ、最初に遭ったころを思
い出したんです。少しだけ顔色
が良くなった気がします」
「え、そう?」
「はい、嬉しいです。作った料
理も少し食べる量が増えてきて
いますし」
「私、太った?」
「いいえ、そういう意味ではあ
りません。いつ倒れるか心配だ
ったんですよ」
「暇だ……」
「暇というなら付き合ってくれ
ない?」
「何だ? 買い物か?」
「ええ、色々買いたいものがあ
って」
「何買いたいんだよ」
「それは秘密よ」
「仕方ねぇな、荷物ぐらいは持
っててやる」
「ありがと。期待してるわ」
「この薬草をすりつぶして、水
を入れてこの布でこして……」
「火が付きましたよ。ルシェッ
トさん」
「ありがと。液体を鍋に入れて
……と」
「後は煮詰めたら完成ですね」
「うん、作り方は記憶に残って
るから」
「どうやって覚えたんです?」
「薬草類を売り続けているうち
に店主さんが1冊の本を安く譲
ってくれたの」
「それで覚えたんですか」
「うん、そう。基礎の調合の本。
これを読んでポーション類を作
って売ってくれと言ってた」
「でも、ポーションを買うより
作ったほうが安いですよね。時
間がかかるけど」
「そうだね。なるべく手作りに
したいな、もしかしたら新薬が
できるかも」
「それはいいですね。僕も賛成
です」
「とりあえず今はポーション作
りに専念しよっと」