第9章
依頼もなく細々と日が過ぎていく中で、
突然セヴェルが皆を呼んだ。
「おい、面白い依頼がきているぞ」
「えっ、何?」
「この近くの茶畑に狂暴化した虫の
魔物達が茶の葉っぱを食い散らかし
ていて、依頼人が困っているらしい。
前回に引き続いて炎の魔法は禁止だ。
茶畑を火の海にさせるわけには行か
ないからな」
「でも、虫たちは茶畑のそこら中に
隠れているじゃない。結構な手間よ」
「あー、そこでだ。これを使う」
「何かゼリーのような、蜂蜜のよう
なものですね」
「これで虫たちを集めて、そこを叩
くんだ」
「普通の殺虫剤では効かないんです
か?」
「それがだな、狂暴化した際に殺虫
剤とかの耐性をつけてしまったんだ」
「風と土の魔法も茶葉を傷つけてし
まうからなしかな」
「……そうすると、氷の魔法が有効
ですね」
「ちょっと! それじゃまた私達の
活躍の場がないじゃない」
「そうだな、俺の武器じゃ茶葉ごと
吹き飛んでしまうし。リリアンの弓
なら飛んでる敵だけ有効だろうしな」
「前回と同じくやっぱり、魔法攻撃
が中心かな?」
「地面に落とせば剣を使っても問題
ないよな」
「その手があったわね。それなら私は
空を飛んでいる虫を中心に狩るわ」
「そっちに行ったぞ、リリアン!」
「弓を使うのは慣れてないけどでき
るかな?……やっ!」
リリアンが打った弓は飛んでいた虫
を掠めた。
「リリアン、はじめてにしては、う
まくやったんじゃないか?」
「えっ? そう? ……ありがと」
「……あっ、虫が向こうにいっちゃ
った」
「ふふ、逃がしません。コールド!」
「あー、皆でやっつけちゃった。私
の出番がない……」
「気にするなよ、前は俺とリリアン
の出番がなかっただろ? お互い様
だ」
「セヴェルっていつもクールだけど
時々優しいよね」
「……あー、やめろ。変な感じだ」
「飾らないのがセヴェルのいいとこ
ろだよ」
どのくらい戦ったのだろう。体力も
魔力も消耗した。
「虫たちは全滅した……?」
「そうだなー。依頼終了だな」
「あの、依頼をした人が呼んでる」
「何でしょうか」
「さあ……?」
「虫たちを退治してくれてありがと
うございます。お礼と言っては何で
すがお茶をどうぞ」
人数分のコップに冷たい紅茶が注が
れた。複数の果物がミックスされて
いるようで、複雑な香りがする。
まずは一口飲んでみる。甘い香りが
口中に広がる。
「甘い香りがする……」
「そうですね。砂糖を入れても入れ
なくても美味しいです」
「依頼を終わらせただけなのに、色
々ご馳走になったな」
「虫も退治したし、報酬ももらった
し良かった」