第1章
一歩踏み出すごとに周りの視線を感じる。
それもそのはず、ルシェットとエリュニスは恋人同士に
なったのだ。周りにそのことを知る者はいないが、証拠
にルシェットがエリュニスの服の袖を引っぱっていた。
なぜ手を繋がないでいないというと手を繋ぐということ
さえ恥ずかしいという理由だ。2人が恋人同士になった
のは当人だけの秘密だ。まぁ、リリアンとアイシャには
それもばれてしまっているが。
だが、2人は幸せだった。
それと、前は3人だったがセヴェルが居ない。彼はこの
まま戻ってこないのだろうか。起きてしまったことを悔
やんでいても仕方ない。装備を整え2人でも戦えるよう
に店に入ることにした。
入ったのは魔法道具を扱う店だった。ここでは多少だが
武器も扱っているようだ。
「……いらっしゃい、何の用だ?」
気難しそうな顔をした主人がルシェットとエリュニスを
見る。
「……あの、メイスか代わりになるようなものはありま
せんか?」
「……ここにはメイスはないが、あんた、……そうだ銀
髪のあんたが腰につけているロッドを利用することはで
きるよ。貸してみな」
「……え、はい」
「ここをこうして、この粉をかけてよく磨いて魔法をか
けて。…………よし、できたぞ」
「何をしたんですか?」
「このロッドを叩く事で魔力を物理攻撃に変える効果を
つけたんだ。
このロッドを見ればわかるがあんた、魔力はあるがロッ
ドを持っているのに魔法をあまり使っていないようだっ
たからな、もったいないことだ」
「ありがとうございます!」
「次はそこのお前さん、紫色の瞳のお前さんだよ。……
お前さんにはこの本がいいな。持っていきな」
「……この本は?」
「その本には中級魔法を覚えるための事が書いてある。
しっかり読んで勉強しな。いつまでも初級魔法ばかりじ
ゃ魔法の威力も頭打ちじゃ」
「ありがとうございます、ええとお金は」
「全部で5万ルクスもらおうか」
エリュニスは財布の中を見た。金は3万6千ルクスが入
っている。あとは金を貯めて買い込んでいた上級魔法の
刻印が書かれた紙が数枚。あまりに買い込む人が多かっ
たため、今じゃ一枚3万ルクスもする高級品だ。
「それじゃ、これを……」
「2枚もらおうか。釣りはやらんぞ。1万ルクスはあん
たら2人の能力を見立てたサービス料だ」
「ええっ、そんなにするの?」
「いいじゃないですか、ルシェットさん。僕らの力を引
き出してくれたことですし」
「……まぁ、いいか。仕方ないなぁ」
「毎度どうも。また来てくれよ」
貸し住宅へと戻り2人の体重を測った。
ルシェットは42キロ、エリュニスは62キロだった。
ルシェットは4キロも増えたがまだまだ細いほうだ。エ
リュニスはルシェットの体重を健康的に増やす決意をした。
その時ドアがノックされた。ドアを開けると誰かが立って
いた。
「よう。また会ったな」
そこにはセヴェルの姿があった。慌ててルシェットはエリ
ュニスの袖をつかんでいた手を放す。
セヴェルの首には少しヒビの入ったペンダントをしている。
ちなみにルシェットとエリュニスもペンダントをしている
が2人のはヒビも入っておらずきれいなままだ。
セヴェルとの再会に喜ぶべきか悲しむべきか複雑な思いを
しながら3人パーティが再結成されたのだった。