∞回死ねるタイプのダンジョン(地獄の類義語)
あれから、体感時間で三日は過ぎた。
地獄はまだ続いている。
正確な時間はわからない。僕は忙しいんですよと時間の有限性を理由にメリーに帰還を促したらなんと『じかん。とめてる』とか言い放ちやがったのだ。
手元にある銀時計の針は3時の針から微動だにしていないし、お腹は一向に減らないし、お屋敷の執務室ではいつも飛び出す──そのたびにシア様にじろって目で睨まれる──あくびがひとつも出ないほど眠くならない。
「うん。おいしい。商工ギルド連中との会合のためにスメラダさんに沢山作ってもらってたお弁当が悪くならないのは不幸中の幸いだね。せっかく美味しく作ってもらったのに、食べずに悪くしたらやっぱり申し訳ない。
ごはんが美味しいことは文句のつけようなく人生における素晴らしいことであり、いつもいいことだけを享受していきたいね。いつも人生のいい面だけを見ていきたいよねメリー」
「ん」
「で。僕が思うにね。アドレナリンをどばどば出すような出来事はそうじゃないと思うんだよ」
「そか」
「しない方がマシなくらい雑な相槌をするねーメリー」
そういうわけだから、この空間内において、ご飯はただ味を楽しむためのものであって、生命活動の維持という根源的な意味はない。
とはいえ、生き死にに直結する習慣を省くのは頭がおかしくなりそうなので、しっかり食事の時間はメリーに要求した。休憩時間が存在することに難色を示すメリーだったが『僕がメリーを食事中だっこすること』で通った。
ぺたーと足を伸ばして座るメリー。その後ろに、僕の足を添えるような体勢で座りながら、二人羽織のようにメリーを抱っこする。この体勢だとメリーの方に箸を持っていくのが楽だし、何より痛くないのがいい。
まあ、食事も原色がめまぐるしく変わる名状しがたき見た目なんだけど……幸い嗅覚と味覚までは壊れてないので、目をつぶって元の食品をイメージしながら食べると美味くいく。
ごはんがおいしい。休憩時間は大事にしなければならない。
すっかり死んだ目がデフォルト表情になったカナンくんもごはん時は回復する。
「アニキの持ってるメシ、ダンジョンなのにうまいよな」
「ええまあ。装備とかいう物騒なものなんかにお金使わず、こっちにお金をかけてるんです。いやもう、ご飯はおいしくなきゃ受けつけないですねー。木の皮とか食べるのもう無理ぜったい無理。当時から無理だったけど。
あ、でもカナンくんは気をつけてくださいね。世間一般の冒険者どもみたいに、一週間以上ダンジョン潜るとかやる気だったら、あまり舌に贅沢をさせない方がいいですよ。そうなると食事のタイミングが休息にはならなくなりますからね」
「え。でもアニキ、食えって結構ゴーインに勧めてきたよな……?」
「はい。だって、僕らだけご飯食べてるのなんかイヤな人じゃないですか? それはすごく後ろめたいです。それから『食事は大勢で食べた方がおいしい』ってインちゃんが言ってましたし確かにその通りなんですよ。じゃあ僕とメリーのためにも食べてもらいますよね?
それに、僕の見てないところでカナンくんが塩の味しかしない干し肉とかとにかくカロリーぶち込んで固めたやつとかその辺の保存食のマズさに苦しむ分にはセーフかなって。だって僕には苦しんでるとこ見えてないですし」
「……いや、いーケドさ。うまいし」
僕は目をつぶっているのでカナンくんの非難が籠もった視線が見えていないのだった。
「きふぃは。やさしい。あまあま」
「気まぐれに嫌がらせをしてみただけだよ」
「きふぃ。かわいい」
「メリーうるさい」
エスカレートした虐待行為から心を癒す材料としては、僕にはこれくらいしか浮かばない。
砂漠の旅路は心まで渇かせる。歩みを止めないためにオアシスが必要だ。
……それに、命のやり取りを日常的に行う冒険者なんて特殊な職業以外の──ごく当たり前の、生きることそれ自体の素晴らしさの方がずっとずっと教えたいことだと思うのだ。
まあその結果? 今後カナンくんが冒険者やりづらくなるのは? 僕の知るところではない。
「ごはん。もうない」
「あれ。そっか。カナンくんも食べちゃっ……てるね」
「けいこ。つづき」
「うえー……もうあと10分……いや5分くらいこうしてない? 食休みしよう。ちょっとゆっくりしてようよ。いやむしろ、ゆっくりしかしなくていいんじゃなかろうか。目を閉じてぼーっとしてるとゆっくり意識が薄らいで……うす……ぜんぜん薄らがないけれども……」
「ん。きふぃは、よい。これつづける。ゆくる。ゆくってよい。とてもよい。すばらしい」
「やった」
「かなんは。つづき」
えーっと? カナンくん一人にやらせるのはどうかなって。
僕が休んでるんだからさ。そういうの後ろめたいよね。精神的にさ。それじゃあ休んだ気になれない。ほらカナンくんも座って座って。
僕は自分のためなら誰かを堕落させることをいとわない。
「アニキは座っててもいいぜ? オレ、また頑張ってくるから。しんでくる」
「小さい子にそんなこと言われると休めないんだよなぁー! ああもう僕もやるよ! 僕もしんでくる……ん?」
僕は重い腰を上げ……重いな?
「メリー」
「ゆくる」
「メリーあのメリーどいて。ぐいぐい寄りかからないで。僕は椅子じゃないので。ちびなのに邪魔で重いからよりかか重い重い痛い痛いいたたたたたたた」
* * *
* *
*
夢を見ている。
辺境にいた頃の夢だ。
人に歴史あり。
悪鬼羅刹も聖人君子も、人であれば幼年時代を過ごしたことには変わらない。
セツナは、神威野の神奈備の庄にある、剣神楽を生業とする家の長子として生まれた。
そこは辺境の外れにある、山間の小さな集落だった。
当時のセツナは、父母の言いつけをよく守り、幼いうちからよく働く、善良で可憐な娘であった。
剣神楽──齢十五の誕生日までに、集落内で代々伝わる剣舞を修め、その地の神を慰撫する刀巫女となる役目を、神奈備の庄に生まれた娘は背負う。
生まれながらに剣の才を身に宿すこと。それが刀巫女の条件である。
上下の乳歯が生え揃った時分に、父母から一本の刀を受け取った。
それは、生まれながらの剣才を持つか否かを試す──すなわち、刀巫女を選定する儀礼であった。
選定の儀において、齢二歳半ばにしてセツナはその身に宿す天性の才を示してみせた。
まだ発話も覚束ない幼児が、真剣を手にすると、集落の果樹を裂いてみせたのだ。
その切り口は、そのままぴたりと癒着するほどに滑らかであった。
その日以来、集落内でセツナに刀を握らせることはなかった。
剣舞にも木剣が用いられた。セツナにはそれで十分であった。
当時の彼女は、その身に才を宿す他には優しい娘子であった。
過去の刀巫女の誰よりも優れているという声が集落内で囁かれたのは、その歯が生え替わるよりも早かった。
幼いセツナは、師範たる父母の動きの一から十を学び百を示してみせた。
舞にも剣の術理がある。セツナの剣才は小集落の先人たちを嘲笑って余りあるほど高かった。
『野を駈ける獣を斬ってはならぬ』と教わった。
ゆえにセツナは、空舞う鳥を斬り墜とした。
『豊かな地を血で穢してはならぬ』と叱られた。
ゆえにセツナは、血も流さぬほど鋭利な太刀筋とした。
『生けるもの一切斬ってはならぬ』と禁ざれた。
ゆえにセツナは、囂々と音を立て滝壺に注がれる流水をその流れごと斬り捨てた。
セツナは言いつけを守った。
無心のままに何かを斬った。
剣を振ることが好きだった。
木剣を帯びることも許されなくなった頃には、棒きれひとつでセツナはあらゆるものを斬り断ってみせていた。
朝に夕に付け加えられる言いつけを律儀に守りながら。
さりとて、天真爛漫に過ごすセツナが集落内でいかな問題を起こしたとて周囲の目は変わることはなく、彼女は大切に養育された。
すなわち刀巫女とは、セツナとは、人から外れた力を持つ者とは、豊穣の神──その集落を縄張りとする魔獣どもの生贄として育てられていたためだ。
かくして。
辺境でのセツナの日々は、運命の日まで平穏に過ぎていった。
欺瞞に満ちた温かさの中で、セツナは見目麗しい少女へと育った。
* * *
* *
*
僕が苦しんでるこの瞬間に酒飲んで安らかに寝てる人がいるんだろうなって思うと思わず世界すべてを呪いたくなる。それはちょっとオーバーかもしれないが、とりあえず全人類みんな足の小指でもぶつければいい。
ふわふわな地面から、触れるだけで爆発する敵から、あらゆるものが脆く不安定だ。視界に映るものはどれもこれも色がぐちゃ混ぜで瞬きのうちにその色を変える。
自分の姿形すらも曖昧な世界。
──メリーだけが、唯一確かなものとしてそこにいる。
ひょっとすると……、普段メリーが見ている世界はこんな感じなんだろうか、なんてことを不意に思った。
そしてそれ以上に。
この地獄の難易度は完全に調整失敗じゃん、と思った……!
つかそんなコトぼんやり考えてるヒマはない! 迫る迫る敵が迫る爆発が迫る僕に迫る──!!
「うおお、おおおおっ!! カナンくん、右斜め前ッ! うわ危っ、ぐ、げぇふ──」
「アニキっ!」
爆風の衝撃が全身を襲う。
世界が スローに なる。
鈍 い 痛 み が 次 第 に 鋭く襲いかかり──目の前が真っ白になって──
強制的に意識が健常に戻される。
意識を取り戻した僕の目の前には早速名状しがたい爆発物があってうわあって叫びながらバックステップを──忘れてた! 重力があいまいな世界で不用意に地面を蹴って体を跳ばすと空に向かって飛んでいって僕の体は真後ろにかっとんで後ろ見えなうあああああ!!
──リセット。痛みは後を引かない。ただし恐怖心はそのままどころか増えるばかりだ首をぶんぶん振り回して辺りを見回す。敵影はないがメリーやカナンくんからは大きく離されて姿が見えない。幸いなことに僕は地面に伏せっていたが不幸いなことに手元に棒きれがない。どこに落ちたのかと思ったけどまあいいや。しかしこうやってくるとカナンくんが苦戦してた理由がわかる。彼の獲物は斧だから短いリーチで相手を叩いて撤退しようにも自分の体のコントロールが難しいのだった。むしろ100回近く爆発を受けても武器を手放さなかった根性がすごい。そんなことを考えていると空からゆっくりと僕に接近してくる影があって僕はやばいと思ったが体が反応しきれうあああああ!!!
リセット! 頭を回せ頭を回せ考えろ考えろ今度は僕の体は爆風で浮いてた。泳ぐように体を動かしてみるが全然ダメで僕は自分から機雷生物にぶつかるぶつかるぶつかああああああリセット! やっぱり浮いてて考えても無駄でリセット。次もやっぱり浮いてたので近づいてくる機雷には地面に向けて蹴るようにリセット。吹き飛んでるが方向が悪いリセット。あのリスキルやめてくださいリセット。一向に状況がよくならないリセット。僕はもがくリセット。リセット。リセット。リセット。リセットリセットリセットリセットリセットリセットリセットリセットリセットリセットリセットリセットリセットリセットリセットリセット──
「ごはん」
………あ゛ーーーー。う゛ーーーー。
う゛あーーーー。
「ごはん」
う゛あ゛。
僕はメリーに全身をガコガコ揺すられて意識を取り戻した。
……え、もう8時間経ってた? 途中から空中コンボ食らって死に続けてたんだけど。いや意味わからん。
ワンミスから死に続けるってどういうこと? 勝利条件が見えないんだけど。どうしろと。
「大丈夫か? 屍鬼みたいになってたぞアニキ……」
「うん。一向に状況がよくならないから意識を切り替えたんだ。メリーから直接攻撃を受けることをスイッチに脳の動きを止めていたんだよ」
「こうげきしてない」
「してますー。人はね頭を揺すられると脳震盪って症状が出るんだよね知ってました? おかげでいいスイッチになってますありがとうね」
「……慣れてんの?」
「まあね。自慢じゃないけど、僕はメリーの稽古と称した虐待を受け続けているから。あ、でも今日のは年に数回くらいの酷いやつだから安心してね。いつもはここまでじゃないよ」
「ホントに自慢できるコトじゃないぞ……」
疲労を感じる機能をなんか麻痺させて、常に自分の肉体史上最高のパフォーマンスが出せることを免罪符にメリーの虐待は苛烈さを増している。
なんだこれ。触手にょろにょろ生やしたグロくてキモくてエグい機雷が一斉に動いて四方八方囲んで自爆してくるのはもう何もかもが酷いだろ。環境が違いすぎてこっちはマトモに動くことも難しいんですよ。
ダンジョン次第ではこういう環境でも立ち回らなきゃいけないのはわかる。わかりますよ? でもね。ないです。
「ここは。たくさん死ねる。死ねるようにした」
「うん」
「死ぬべき」
「ちょっ──あー!あーー!! 何も聞こえなかったなー!!!!」
僕の幼なじみの怪しげな倫理観が露呈している……! 僕は大声を出してメリーのぼそぼそ声をかき消した。
やっぱ冒険者ってイかれてんのかな、というカナンくんの呟きが耳に入った。
心外である。僕は幼なじみを弁護する。
「えっとえーっと……死ぬって言ってもあれだよ。
いい意味だよ」
我ながら弁護が苦しい……!
何より僕が微塵もそんなこと思ってないってところね。
いい意味って何だよ。
「いい意味で! いい意味で──」
「よわいと。すぐ死ぬ。
だから。ここで死ぬ。たくさん死んどく」
くそっメリーさんがまた弁護に苦しむような犯行を重ねてくる……。
どういうシステムですかねそれ。なに?死貯めとかあるの? ないでしょ。
いやまあ、死ぬほどの経験していざ危機ってタイミングで身体を動かせるのは大事だけど……あ。
「人はですねカナンくん。死の気配に近づくと、恐怖で身体を動かせなくなることがあります。『動け』と理性で訴えかけても、本能が身体を止めることがある」
「ああ、うん。ちょっとわかる」
「どうやらこの空間は物理的に死ねないのは、身をもって体験した通りです。でも、死に近づいた瞬間の、背骨に氷柱を突き刺したような寒気は本物だ。
だから、このダンジョンの外で本当の命のやり取りになった時にも、この経験は無駄にならない」
僕はメリーさんをちらちら見ながら思いつきを口にした。
声のトーンは穏やかに。ゆっくりと、自信を持って一語一語を発話する。
誰かを諭す時のコツだ。人は発言内容よりも、それを堂々と言っているかどうかの方が正しさを判断する指標として重くしがちな生き物である。
これであってるのか……? 頼むからあっててほしい……という思いは顔には出さず、いつものように笑顔を貼りつける。
「なるほど……」
よしカナンくんが騙せ──おっと!
「いやぁー、メリーが口下手でごめんね。べつに邪悪な存在とかじゃないんですよ。ただちょっと口下手でね。びっくりするほど口下手で、なんかもうどうしようもなく口下手で。
それからええと……とにかく、口下手なんだよ」
僕は笑顔で口下手を強調した。
・・・
・・
・
「よい」
…………あ、終わった!?
もう死ななくていいの!?
「お、終わった……! アニキやったよ!終わったんだ!!」
「そうだねカナンくん! もうほんと一生分は死んだね!!」
「そうだなっ!!」
声だけは弾んでいるけど、僕らは疲れを感じない肉体でも疲労感でいっぱいだった。
カナンくんも僕も、二人して地面にへたり込む。
メリーは僕らを無表情で見下ろして、
「つぎに。うつる」と死刑宣告。
「は? いやいやちょっと待って。次ってなに」
「つぎは。つぎ」
メリーはそう言うと、また両手にバチバチと紫電を迸らせる。
トートロジーやめてください。次って何って聞いてるんですよまだ続けるの!? まだ虐待が足りないの!?
メリーの顔を下から照らす紫の光が不吉だなぁー!
「あれもやばくね」
「うん。とりあえず伏せよう」
紫電は次第に太くなり、何重にも枝分かれし、この空間すべてを隙間なく埋めるように超高速で全方位に回転しながら放出された。
雷光に絡み取られた異形たちは次々に爆発し、肉塊が雷にまとわりつく。
メリーが小さな手で虚空を捏ねだすと、肉塊が集まり、纏まり、形を変えていく。
まるで粘土を弄ぶように。いびつに、雑に、何かがカタチ作られていく。
そうして。
──棒状の触手を持った異形と、斧らしき形状の腕をした小さい異形の2体が形成された。
見た目はやっぱり名状しがたく冒涜的だ。全身触手でぐちゃぐちゃしている。
「一応聞いとくけど。これ、なにかな。メリー」
「きふぃと、かなん」
「僕らこんな見てるだけで正気失いそうな外見してたかなぁーー?」
「きふぃは。かわいい。かこいい」
「その表現からしてまずツッコミを入れたいところだけど、そこの肉塊はメリーの形容に当てはまるかなぁー。ちょっと色々と考え直してみない?」
このグロ肉と同一扱いは深い心の傷になるぞ。
カナンくんにまで癒えない傷を彫り込むのはやめよう。
「これは。きふぃができることが。ぜんぶできる」
「ええと。それはつまり、僕と同じ能力ってこと?」
「ん。あってる。ただしい。えらい。
きふぃはきふぃとやる。かなんはかなんとやる」
「ふーん。アニキとは戦えないのか?」
「だめ」
僕と同じ能力ならカナンくんに即座にぶっ殺されそうだもんな。
……まあ、相手が僕と同じ能力って言葉に嘘がないなら、僕一人でも簡単に打倒できるだろう。
「たたかえ。かて。かてば、かえってよし」
──シンプルでいいね。
人型相手なら慣れてる。
僕は拾い直した十尺の木棒のにぎりを確かめる。
「合図は?」
「あしぶみしたら。はじめ」
「待って数字にしよう。それ足場壊れるだろ。それじゃあ、ゼロ、って言ったら開始で──」
「ん。ぜろ」
──ちょっと待てぇ!!
棒状の触手を振ってくる人影を避けながら僕は叫んだ。
ほとんど不意打ちじゃないか!
「まったは。なし。かつまでやめない」
「メリーはそういうやつだよなぁー!!知ってたけどさあ!!」
バックステップから木棒で地面を削るようにして減速しつつ距離を取る。何度も死んだだけあって、この空間での動き方はなんとか覚えた。慣れれば地上よりも速く動ける。
相手が僕だって言うなら、距離を取ればやることないはずだ。
まずは相手の出方を伺い──ん?
異形の顔らしき部分が光り、僕は咄嗟に軸を外す。
──ちゅーん、という甲高く少し間の抜けた感じの音が響いた。
え、なに……? ちゅーん
なんか……ビーム撃ってきた!? ちゅーん
「僕こんなことできねーよッ!?」
抗議する僕を無視して相手は遠距離からビームを連射する卑怯で卑劣なカス戦法を取っている……。最低すぎるだろコイツ……!
しかしそれにしても前々からずっとずっとずーっと思ってたけどさあ!
メリーの中の僕ってなんなの!?




