登場人物紹介・設定・用語等まとめ《挿絵あり》
なんかもう、ごりごりに設定です。約1万5000字。嘘でしょ……?
もちろん、これを読んでること前提で本編を書いた/書くわけではないので、読み飛ばしてもまったく大丈夫です。ごあんしんください。
(普段から後書き部分に設定を置いている意図としては、触れる時は本編でも触れるので別に読み飛ばしてもいいということなのです)
第113話時点のキャラクター紹介です。既存のキャラクターの説明の文言は第22話から変えています。
設定・用語等は第1話から第113話までのあとがき項にて掲載したものなどを加筆・修正してまとめたものとなります。
■キフィナス
本作の主人公。メリスの財布に生活の全権を委ねているおしゃべりヒモ野郎。
年齢17歳、灰の髪と目をした中肉中背の青年。いつも動きやすい革鎧を着ている。(灰髪には《ステータス》が存在しないので、ドラゴンの革などを使っている鎧を着ても《ステータス》補正の恩恵を受けられず、大きな意味がない)
辺境の廃村からタイレル王国まで、長い旅をしてきた。そして、王都タイレリアから迷宮都市デロルへと拠点を変え、今は落ち着いている。
彼のパーソナリティは、握り拳ほどの誠実さと、それを覆いつくすような偏見と皮肉と怯懦で構成されている。
何事においても完璧な──他人とのコミュニケーションを除く──メリスの隣にいるために、理想が高すぎるところがある。
『灰の髪』と疎まれてきたことと相まって、自己評価は低い。また戦力等の分析においても、その主観が混ざっていることが多い。
一言で表すならば、信頼できない語り部。
あるいは、イソップ童話の狐。
メリスがその力を理由に排斥されない王国での暮らしを、隣で笑いあえる日常を、心から大切に思っている。
【ステータス】及び【保有スキル】なし。
◆キフィナスが使った道具一覧と一口紹介
・録音石
音を魔力に変え蓄積する性質がある石を加工し、再生を可能としたもの。
・十尺棒
意地の悪いダンジョン探索には10フィートの棒が欠かせない。メートル換算すると3m。
・赤紗熊のマント
頭部が赤い熊型魔獣の毛皮から作られた。熱を放っており暖かい。
・首絞めカズラの蔓縄
ツタだけになっても習性を忘れない。投げれば首に向かって飛んでいく。
・月のない闇夜を詰めた瓶
メリスによって夜毎に作られる概念を詰めた瓶。中身が漏れると、周囲は光のない暗黒に包まれる。
・極楽蜘蛛の生きた腹部
首と脚を離されても、今なおこの蜘蛛の頭部は生きている。叩くと粘性の高い糸を出す。
・貴腐人の口噛み酒
死人の口に詰めて100年の時を経た葡萄から作られた血のように赤いワイン。呪われた酒。
・闇蝙蝠の羽暗幕
暗闇と同じ色になる5mほどの暗幕。風呂敷として使うこともある。
・魔法の巾着袋
《文明資源》。20cmほどの巾着袋にはおよそ何もかもを収納でき、重量が変化することもない。
・テント
《文化資源》。ナイロン製の布はラーグ・オールにおいては実用化されていない。
・結晶獣の髄液(言及のみ)
空気に触れると凝固する透明な液体。即席の壁や、相手を閉じこめることに使える。
・水精の外套
《文明資源》半透明な水の膜が外套になっている。断熱効果が高い。着るだけなので研究者たちも使い方がわかったため、文明資源となっている。
・風の石笛
《文化資源》風を発生させる。キフィナスは発生させた風によって酸素を確保するという裏技めいた使い方をした。
・乾燥した水晶クラゲ
《生物資源》大気中の水分で息を吹き返し空中を漂い、空気の通り道で固着する。
・噛みつき草の生きたツタ
首絞めカズラと違い、生者の首を執拗に狙うのではなく、花弁に触れたモノに対して噛みつく。鉤縄として用いる冒険者も多い。
・鉄食い蟻の蟻酸
鉄を容易く溶かす強酸性の液体。一匹当たりの生成量は雨粒1滴ほどしかない。明確に危険な劇物なので、メリスがいる前では出さない。
・石ころ(概念付与:貫通)
メリスによって貫通という概念が付与されたただの石。
・比良坂蜘蛛の織り糸
鋼鉄よりも強度の高い、粘性のない糸。大規模なダンジョンの谷底には、巣を張る《比良坂蜘蛛》が生息している。彼らは獲物に目もくれず、糸をいくつか拝借しても巣を張ることに夢中だ。彼らはただ、世界が破滅するその時まで、巣を張り続ける。
・ランタン(動力:炎熱の魔石)
迷宮都市デロルの特産品。王都までのショートトリップを終えた後に購入した。
・魔法瓶
魔力なしで水を涌かす魔道具。
・眩石
多くのダンジョンの壁や天井に見られる鉱物。闇の中でも薄ぼんやりと光を放つ。クズ石として認識されており、値はつかない。
■メリス《挿絵あり》
キフィナスと同郷の最強無敵チート冒険者。
金色の髪と眼をした、外見年齢は11歳かそこらに見える美少女。
キフィナスのことが好き。大好き。超好き。
《鑑定》等のスキルによって開示されるステータスの数字があまりにも高いため、ただぼうっとしている時にも何か深遠な思索があるのだ、と取られがちであるが、実のところ、メリスは物事をあまり深く考えない。
《適応》が進むにつれて、彼女の全身の感覚は、それを彼女のものと感じられなくなって久しい(=《適応》の上昇は、クオリアの喪失を引き起こす)。
大好きな男の子、キフィナスに触れている/触れられている時にだけ、感覚を、質感を、感情を、自分のものとして感じられる。
だから、彼女はいつも、いかなる時も。
キフィナスのことしか頭にないのだ。
【ステータス】
適応度:65535
STR:65535
DEX:65535
VIT:65535
AGI:65535
INT:65535
MND:65535
【保有スキル】
《鑑定【完全】》《解析【完全】》《過去視》《未来視》《心理学》《かしこさアップ》《分割思考》《瞬間記憶》《隠者の知》《碩学の知》《賢者の知》《禁断の知識》《IQ3000倍》《思考加速》《超推理》《世界の真実》《言語完全理解》《サイコメトリー》《記録媒体読込》...
他多数。メリスに持っていないスキルは存在しない。
■ステラ・ディ・ラ・ロールレア《挿絵あり》
デロル迷宮伯の当主。14歳。澄んだ赤髪赤眼の美少女。
ただし、正式にデロル領を継いだことを認められていない(年に一度、王城にて式典が行われ、貴族位の継承は認められる)ため、ソ(~を継ぐ)・デロル(領地)の肩書きはない。
快活でありながら気品を湛えているが、錬金術──魔術を行使でき、個人の持てる能力に大きな差がある世界において。実証性・再現性・客観性が担保される必要はなく、科学技術は発展が遅れる傾向にあり、錬金術もまた軽んじられている──を好む。
機能美を好む実利主義者だが、スケルトンカラーのゴーレム馬を愛用するなど、センスが少しズレてるところがある。
キフィナスに向ける感情は、親愛のそれに近い。彼女にとってキフィナスは、色々な意味で気にかけている年上のお兄さん、というもの。
キフィナスとの出逢いによって、彼女は現実を見た。
領民の実態、尊敬する父の所業、領地経営の過酷さ……現実は、理想としていたものから遠い。
それでもなお、彼女は理想を現実へと変えるべく、努力を続けるのだ。
【ステータス】
適応度:49
STR:52
DEX:59
VIT:42
AGI:56
INT:152
MND:163
旧ロールレア邸で数百年管理していたダンジョン《腫地肉林満願全席》のダンジョンコアを破壊したため、適応度が大きく上がっている。
【保有スキル】
《魔術Lv4》《焦熱の魔眼》《統治》《カリスマ》
■シア・ラ・ロールレア《挿絵あり》
ステラの双子の妹。深い青髪青瞳の美少女。
彼女は当主補佐の役割に就いた。
氷の彫像など造形美を好み、姉ステラの奇抜なセンスを理解できないところがある。姉は姉で、妹シアの対キフィナス時の態度を理解できてないのでイーブンである。
キフィナスに向ける感情は、恋慕のそれに近い。が、当人はその感情に名前を付けられずにいる。
彼女にとってのキフィナスは、命の恩人であり、失礼な物言いを繰り返す不敬者であり、気になるお兄さんでもあり──喋るたびに印象を変える彼に対し、未だに自分のスタンスを決めかねている。
『おまえ』という呼称には、父オームの信愛の情の表し方に影響を受けている。
キフィナスとの出逢いよって、彼女は理想を見た。
かつての彼女は、自分を領主代行──すなわち、姉のスペアだと見なす悲観的な現実主義者であった。しかしキフィナスへの感情は、姉のスペアではなく、彼女だけが持ちうる感情である。
彼女は、狭い現実から、より広い理想へと、視野を広げようとしている。
【ステータス】
適応度:49
STR:42
DEX:52
VIT:59
AGI:56
INT:163
MND:152
【保有スキル】
《魔術Lv4》《青蓮の魔眼》《統治》《カリスマ》
■セツナ《挿絵あり》
艶のある黒髪に深いヘーゼルの目をした、鮮やかな紅白の巫女服を着ている、見た目だけなら清廉な女剣士。
実態は、暴力という問題解決手段をTPOを一切考慮せずに行使することを躊躇わない狂戦士。
本名は神威神奈備神楽刹那だが、王国とは命名形態が異なり、説明が面倒なのでセツナで通している。
辺境にかつて存在した集落にて、刀巫女として信仰を集めていたこともある。
レスターに刀を折られてから、戦闘能力は大幅に下がっているが、それでもなお、彼女に両断できないものは少ない。
セツナが持てば、10尺のただの棒きれは長柄の大業物となる。
彼女はキフィナスと王都からの長いつき合いがあり、冒険者=暴力という偏見を植え付けることに大きく貢献した。
王都を震わせた《タイレリアの暗殺者》は、キフィナスによって人間性を剥ぎ取られ、セツナによって命を奪われることから付いた名前となる。
もちろんその件以外にも刃傷沙汰を起こしている。彼女は、自分と敵対する相手を一切躊躇なく殺める冷徹さを持っている。
辺境出身者の価値観は、街に暮らす者とは大きく違う。
キフィナスへの好意を公言しているが、それは彼を害さないことを意味しない。
いくら手心を加えようが──獰猛な肉食獣のじゃれつきは、容易く小動物の命を奪うのだから。
【ステータス】
適応度:42
STR:36
DEX:230
VIT:20
AGI:248
INT:4
MND:32
【保有スキル】
《神速》《心眼》《剣術Lv5》《抜刀術》《概念付与【切断】》
■カナン
セツナの弟子。元路上生活者の11歳。
クロイシャの店《貧者の灯火》の顧客でもあり、武器や防具はその金で揃えた。
生来の要領の良さで、セツナの弟子をなんとかこなしている。
キフィナスを尊敬しているが、最底辺とはいえ王国で過ごし、王国の一般人としての常識を持ち合わせているため、彼の行動にヒくところはヒく。
当然、セツナの言動には常々ヒいている。
基本的にまっとうな感性の持ち主である。
だからこそ、彼はこうして生き延びることができたのかもしれない。
カナンをこき使っていた冒険者グループは、身よりのない少年少女を誘拐し、奴隷として売り払っていた。
ただ、彼らはあくまで末端に過ぎない。デロルは壁外から遠く、孤児院が一応機能しているため、身よりのない子どもの数は少ない。
(児童という概念が生まれるのは労働法が整った産業革命期以降であると言われる。加えて、《ステータス》の存在するこの世界では個人の能力の優劣は年齢に依存しないため、子ども・大人という区分は現代日本のそれよりも曖昧。10歳前後の冒険者が許容される程度には)
その顧客の中には、オーム・ディ・ラ・ロールレア・ソ・デロル──邸宅地下で実験を繰り返す、迷宮都市の前領主も含まれていた。
【ステータス】
適応度:8
STR:14
DEX:18
VIT:12
AGI:22
INT:11
MND:13
【保有スキル】
《環境適応(弱)》《フットワーク》
■アネット・マオーリア《挿絵あり》
《雷神の系譜》マオーリア特別騎士家の次女。薄茶色の髪に碧眼の19歳。
この世界において、体毛と瞳は保有している魔力を映しており、原色に近ければ近いほど『純度が高い』と認識される。
彼女の髪と瞳は、父や姉のそれとは異なっている。すなわち、彼女は特別騎士家の才能を受け継がなかったと見なされ、事実戦いに関する才能はない。
支給品である三つ叉槍の石突を引きずらなければならないほどに身長が低い。
迷宮都市の石畳に白線が引かれているのは、彼女が原因である。
かつては、どうにか槍を構えず地面にも触れさせない、独自のフォームを開発していたのであるが、キフィナスが定期的に『下着泥棒』『吊された人』を作るために街中を駆け回るようになったことと、『その細い線、憲兵さまが通った跡として防犯効果を備えていますよね』と指摘されたことで、今では開き直って地面に傷をつけている。
アネットは、ロールレア家姉妹とかつて親交があった。それは、父エーリッヒ・ベネディクト・マオーリアが王都に居を構えるオーム伯を疑ったことが理由である。
アネットは自分の役割にある程度自覚的であったが、離れた父親を恋しがる、幼いロールレア姉妹を見て、『この子たちを支えてあげたい』と考えた。
領地を持たないとはいえ、貴族に準ずる扱いを受ける名家出身のアネットが、伯爵領の憲兵隊に所属した理由は、そのためであった。
彼女は心から、身の回りの誰かの力になりたいと考えている。
年下のお世話をしていたこともあり、キフィナスへの目線は姉のそれに近い。
彼女はキフィナスの善性をよく知っている。だから、放ってはおけないとキフィナスによく構う。
キフィナスが愛称で呼ぶ数少ない人物のうちの一人。
ただし、基本的にはまっとうな感性の持ち主だが、……ほんの少し、むっつりすけべなところがある。
彼女は19歳なのだ。
【ステータス】
適応度:18
STR:28
DEX:14
VIT:35
AGI:24
INT:28
MND:37
【保有スキル】
《槍術Lv3》《魔術Lv2》《エンチャント【雷】》《料理》《整理術》
■アイリーン
愛の信奉者で、大きなスリットの入った修道女の服を着て孤児院に勤めている、桃色の髪と瞳の美少女。18歳。
姓はないが、セイラー救貧院に勤めているため、救貧院出身の人物と同じく、セイラーという姓を名乗ることもできる。
なお、服は私服。スリットは動きやすいから入れている。
キフィナスを一目見て以来、彼を『愛の人』認定するやべーやつ。
思いこみで革命未遂を引き起こす、セツナとツートップのやべーやつ。
ただし、愛にできることをただ無尽蔵に盲信している、というわけでもない。
彼女の趣味は、彫刻である。しかし、その腕前はもはや冒涜的とすら表現できるもの。彼女自身、それが下手な自覚がないことはない。
好きこそ物の上手なれ──とはいかず。
彼女は、《ステータス》に振り回されている。
この世界の人々は、一般的に《ステータス》の数字から自身の能力・適性を判断するが、アイリーンはそうしなかった。
ボディタッチが多い。たとえば耳舐め──正確には、耳を口に含んでの体温確認──は孤児院の子どもたち全員(男女問わず)にやっている。
彼ら彼女らが変なセーヘキに目覚める日も近い。
【ステータス】
適応度:21
STR:131
DEX:1
VIT:48
AGI:20
INT:26
MND:49
【保有スキル】
《棍術Lv3》《剛腕》
■レスター
キフィナスが王都にいた頃、懇意にしていたSランク冒険者にして近衛騎士。24歳。
孤児であったため姓はない。
実力ひとつでSランク冒険者に成り上がり、近衛騎士の末席に着いた。
それは、ひとえに姫君──ヤドヴィガ・リコ・ファラソ・タイレルのため。
キフィナスのことはメリスの通訳係だという認識だが、それ以上に友人だと思っている。
3年ほど前のある日、彼が酒場にて、酩酊状態で『近衛騎士になりたい』とヤドヴィガ姫に対する思いのたけを垂れ流しながらキフィナスに絡んでいたら、その数日後に近衛騎士のうち数名が除名され、冒険者ギルドに人材紹介の依頼が来るという出来事があった。
後日キフィナスに尋ねると、『ごはん付き合うくらいならいいですけど、二度と絡み酒しないでくださいね。お店のひととメリーの教育に悪いので』とだけ言った。
ミハエルとはその時からの同期。
近衛騎士は伝統的に家柄と武名で選ばれていたため、冒険者から転換する(その上、冒険者としての籍を残している)という慣例破りの彼とは一際ソリが合わない。
光で出来た剣・盾・翼の《神器》を用いる。その効果は《迷宮兵装》クラスだが、レスター以外に用いることができないため、所持を許されている。
体術に加え、我流ではあるが魔術も用いることができ、攻撃も防御もこなせるなど、欠点がないことが一番の強み。
コミュニケーション能力も高く、冒険者時代は臨時でパーティを結成することが多かった。
結果、常人より遙かに多く(基本的に、固定パーティの探索の頻度は3日に1回程度)ダンジョン探索をした結果がSランク獲得の背景にある。
適応度:87
STR:198
DEX:189
VIT:196
AGI:182
INT:199
MND:196
《剣術Lv4》《盾術Lv4》《魔術Lv4》《神器の担い手》《隠者の知》《カリスマ》《料理》《軍略》
街の人々
一般的に、《適応》していない人間のステータスは、5-20の範囲に収まる程度。適応することによって数字が増加していく。
逆に言えば適応していなくても──この世界では、まったく訓練を受けていない人間同士であっても──身体能力に4倍の差が生まれ、その格差が広がる世界ということである。
■レベッカ・ギルツマン
冒険者ギルドの受付嬢のひとり。くすんだ栗色の髪に焦げ茶色の瞳。
ギルツマン家は、代々冒険者を支える職に就いている一等市民。
仕事のデキる大人の女性だが、趣味は小物作り。
自室でまで大人の女性はしておらず、飼い猫《もふにゃんごろ》(彼女にネーミングセンスはない…)を愛でながら日々を過ごしている。
メリスへの好感度が高い。その理由の一端に、メリスの顔立ちが人形のように整っていることにあった。
自分が作ったミニチュアと一緒に並んでくれたら優雅なお茶会になりそうとか、頼んだら自作のドレスとか着てくれないかなぁとか思っている。許可を貰ったら縫うところから始める。
キフィナスのことは割と普通に嫌い。
逆にキフィナスからは、メリスの人から外れた力を知っても壁なく接してくれるので好感度は高め。ただし隙あらば自分の方が仲良しアピールをする。
それを受けて、レベッカはキフィナスのことを更に嫌いになる。
■クロイシャ・ヴェネス
夜のような黒髪に青ざめた白い肌、鮮血色の瞳をした男装の麗人。
《貧者の灯火》のオーナーで、前途ある者への融資を行っている。
『マイクロファイナンス』という当人の言葉通り、利率は良心的であり、たとえ滞っても返済の意志があるのなら、その事情を考慮し、減免してくれさえもする。
彼女は商売人であるが、金貨の輝きよりも、人間の胸の裡に燃える感情を尊び好む。
その価値観は、1000年以上の時を生きる魔人であることも関わっているのだろう。
失敗を予測していたにもかかわらず、《カルスオプト》のパトロンとなったことは、それが理由である。
現在、王国歴999年。王国歴3年には既に金融業を営んでいた。世界の歴史上に存在する国の多くに彼女の姿は見て取れる。
オックシャイル・ロデリゴ、イロックス・ロペスなど、さまざまな名前を使ってきた記録が残っている。
クロイシャという名前も、本名ではない。
彼女は高度な教育を受けた■■■であり、■■■■■■■■■■■■■■■
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《ステー■ス》
適応度:255
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■ロマーニカ
黒いゴシックドレスに身を包んだ濃紫の髪の少女。
四肢がなく片目に眼帯を付けた姿をしているが、痛ましさよりも不吉さを感じる風貌をしている。
古いなじみであるクロイシャの元に身を寄せているが、クロイシャにとってロマーニカは招かれざる食客といった扱い。
彼女もまた魔人であり、適応の高さから食事を必要としないが、ヒトの形を取っているからと出された食事はきちんと食べる。
高貴なる紫鱗を持ついにしえの竜姫は、四肢と鱗を失い、滅びを前に狂った世界に亜竜と蟲と蔑まれた。
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■インディーカ・ギーベ
宿屋《翠竜の憩い亭》の看板娘。キフィナスにとてもよく懐いている。
まだ幼いが家事や家計管理を行えるしっかり者。
キフィナスから愛称で呼ばれる数少ない人物でもある。
おいしい食事と彼女の存在で、キフィナスは日向のような居心地の良さを感じている。
■スメラダ・ギーベ
鮮やかな緑の髪をした宿屋の主。豊満な体型でおおらかな性格。
パトロンを囲うことができて、毎日好きなだけ採算を度外視した料理を作れるようになって幸せにしている。
その反動で、街の金貸しに債務を抱えることになったのだが、反省の色はあまりない。
──以下、過去話にて掲載した設定──
■《冒険者》
迷宮に潜ることで生計を立てる肉体労働者を指す。
冒険者の斡旋やダンジョンを管理する《冒険者ギルド》にて、個人の力量に応じたSからFランクまでのランク分けがなされている。
Sランクともなれば冒険者以外からも尊敬の眼差しを受けるが、低いランクの冒険者の社会的地位はとても低い。『Fラン』が冒険者以外の分野でも蔑称に用いられる程度には低い。
主人公であるキフィナスはギルドに規定された昇格までに必要な依頼達成数を薬草採取のみで満たし、Dランクまで強引に引き上げられた。
これらのランク分けの理由は人材マッチングの効率化、報酬の分配トラブルの軽減などさまざまな説があるが、正確なところは定かでない。
少なくとも、500年以上前からこのシステムが採用されていることだけは確かだ。
文■の発展■は■■■の意■に■■て誘導されている。
■《薬草》
新米冒険者御用達の草。治癒の効能があるが即効性には欠ける。味には独特のえぐみがある。
民間療法や薬膳料理など用途が多いため数が多くて困ることはない。ただ、薬草はダンジョンの外にも生えており、一般人でも収穫は容易である。
熟練冒険者はこの草よりもっといい草を食べたりもっといい草から精製されたポーションを使う。
《上薬草》《特上薬草》など、これらの草もまた身も蓋もない。
世界によって《名付け》を受■た瞬間から、名もなき草に《薬草》の■■が与■■れた。
■《辺境》
《タイレル王国》《ドノウバズ共和国》《ヘザーフロウ帝国》など、この世界の大国にはその周囲に魔法によって生み出された巨大な壁が築かれている。
空を飛ぶ大型魔獣などに対抗し、自国の資源を囲い込む必要があったためだ。
この地域には基本的に迷宮以外で魔獣が出現することはなく、魔獣の脅威は低いもの、ダンジョン挑戦者への障害に過ぎないと見なす人間も多い。
一方で、壁によって囲われていない地域はひとまとめに《辺境》と呼ばれている。
辺境に住まう人々は日々魔獣の襲撃に怯え、飢えに怯え、病に怯える。
壁に囲われて眠れることは、とても幸福なことだ。
《大平原》こと灰の世界は、毎年少しずつ辺境の面積を削り、今も拡大し続けている。
■《迷宮都市デロル》
良質な資源が採取できるダンジョンを保有している都市の構造は、地球で言うところの鉱山都市に近く、ダンジョンを中心に開発が進む。迷宮都市と名の付く都市は数多く見られるが、デロルもまた例外ではない。
首都である《王都タイレリア》から馬車で三日ほどの距離にある伯爵領。ロールレア家が治めている。
《タイレル王国》では領主の裁量権がとても大きく、一部の大都市には独自の徴税法を施行することすらも許されている。迷宮都市デロルは、その大都市に当たる。
迷宮都市の名の通り、大型ダンジョンが数多く生成される地であり、資源産出量も多い。
ダンジョン資源を元にした研究開発も盛んに行われており、王国内でもかなり活気のある都市である。
■《適応》
《経験値》を得ることをきっかけとして起こる新陳代謝。レベルアップ。
数値の多寡に肉体的な変化はなく、《ステータス》それ自体を向上させる。
身体能力が高くなるが──人間の感覚受容体の許容値を超えるほどに鋭敏になった感覚に人体はセーフティを掛け、クオリアが失われる。
《適応》の度合いには個人差が大きく、同じ経験をしたからすなわち同じ《適応》となるかといえば、そうではない。一般に幼ければ幼いほど適応するまでの経験値効率がよい。冒険者という職業が児童労働に繋がっている一因である。
この世界に労働基準法はなく、児童労働もまた許容されているのだ。
■《魔力》
この世界に存在するほぼ全ての存在が持つエネルギー。器官の大小に依存せず、個体差が非常に大きい。
《ステータス》として個人の力に補正を与える働きも、この魔力によるもの。
この世界の生物にとって、魔力が切れたまま活動する経験は基本的になく、全身に鉛を載せられたような虚脱感を覚える。
■《魔術》
術者の体内にある魔力を行使し、物理的現象を引き起こす行為一般を指す。
発動に際しては確固たるイメージを必要とする。魔術師の多くは、事前に定めていたキーワードを唱えることで一種の自己暗示状態になり、魔術を行使する。
必ずしも詠唱は必要ではないが、誤ったイメージは危険を引き起こすため、多くの術師が無詠唱で使える魔術は初歩的なものになる。
逆に場数を踏んだ──地獄を見たことがある者ほど、強大な魔術を行使する資質がある。
いつか見た地獄の光景を、現出させることができるためだ。
ゆえに、高位の魔術師は常人と価値観を異にすることが多い。
■《灰髪》
この世界において、人間の毛髪は個人の魔力を反映した色合いになる。
火に適正があれば赤、水に適性があれば青など……人間にはさまざまな適性があるため、それだけ多様な髪色がある。
髪色の鮮やかさと保有魔力量は比例する。ツヤツヤの髪で人の目を惹きたければ、手入れするより魔力を鍛えた方がいい……というのは、誰もがよく使う冗談だ。
……しかし、灰の髪は魔力を映さない。彼らには魔力が存在しない。《ステータス》をチェックする恩恵も受けられない。
そんな彼らは、社会生活から排斥されることも多い。就業条件に特定のステータスの基準値を設けている職業も少なくないためである。
低DEXな針子は縫い物を上手く作れないし、低INTの教師に子どもを預ける親はいない。ステータスによる選別は合理的で、何より判断するまでに時間がかからない。それが誤謬を■■■■■■■■■■■■■。
社会から排斥されたことが先か、不吉だと見なされたことが先か。灰髪は疎まれ、差別的な視線を向けられることも多い。
冒険者という職業は、そんな彼らの受け皿になっているという側面もある。ステータスが見えない──同業者に手の内を明かさないことが、数少ないメリットにもなる。
しかし、五体満足でその仕事を全うできる灰髪は遙かに少ない。
彼らには、物言わぬ石や雑草すら持つ、魔力がないのだから。
■《装備》
適応が進んだ冒険者は、装備が自分と一体になった感覚を得る。
重装鎧を軽々と着こなす華奢な女冒険者は、適応が進んでいることを示す。適応とその資質次第で、装備の重さをまるで感じず機敏に動くことも可能となる。
しかし、キフィナスには適応の経験がないため、装備の重量をしっかりと感じる。
当人としては見るからに硬そうなダイヤモンドやロンズデーライト製の全身鎧を着たいのだが、力も体格も体力もないためそんなものを着たら動けなくなってしまう。
そのため、年期の入った革鎧と新品のヘルムという装備を好んで用いている。
革鎧は軽くしなやかで、身体の動きを阻害することがない。頭は急所なので、少しでも傷ついたら新品に取り替える。
ただし、ヘルムに関しては視界が塞がることや、スタミナを消費する問題から付けていないことも多い。
なお、メリスの服はキフィナスがその日の気分で着せ替える。今日は薄手のチュニックとロングスカート。
■《魔獣》
主にダンジョン内に出現する生命体。明確な定義は定まってないが、この世界の人間であれば「あっこいつだ」と本能的に理解できる。
魔物、モンスター、悪魔など、複数の呼称が混在しているがだいたい全て同一の存在を指している。呼び方の違いは、文化や環境、生活の問題や、親しんだ冒険譚での表記の違いに由来するものかもしれない。
中には、二日酔いの幻覚を魔獣と呼ぶ人間もいる。冒険者はほぼ例外なく酒が好きな人種だが、二日酔いまで好きな酒狂いというのは案外少ないのだ。
壁を作り、独自の文化圏を築いている三国には領内に魔獣が発生することはない。
ダンジョンにて生成された魔獣は、ダンジョン内に充満する魔素によって形を保っているため、外に出るとすぐに崩壊するためである。
《生物資源》と《魔獣》が区別される点である。
とある研究者が実験と称して抵抗するゴブリンを拘束し強引にダンジョン外に持ち出そうとしたところ、外に出て3秒後、のたうち回りながら砂のように消えたという記録もある。
そいつはサイコパス扱いされて名前が──氏の名誉から、匿名という形で研究結果が残されている。
世界の真実を解き明かそうとする者は皆■■■■■■■■■■■■■
■《炎獄の洞窟》
ダンジョンの名前を決めるのは人ではない。それが生成された直後から固有の名前を持っている。
命名法則はよくわかっておらず、それを信じるとバカを見ることも多い。
炎獄の洞窟とは、300年ほど前の冒険者ティムトッタのダンジョン名が原因で失敗したとある冒険が元になった小咄である。
冒険者の多い場末の酒場などでは、これを歌って日銭を稼ぐ吟遊詩人もいるという。これを笑い話にするから冒険者は単細胞なんだよなぁ、とキフィナスは思っている。
キフィナスは性格が悪い。
〽臆病冒険者ティムトッタ
迷宮の名前聞いたなら
急いで暑さの準備して
凍えて凍ってサヨウナラ
■《貨幣》
この世界では、地域によって通貨の種類が大きく異なる。
ダンジョンから発掘される通貨を利用・模倣する地域や、古くから冶金技術が発達しており独自の加工技術のある地域など、通貨の起源が地域それぞれで異なるためである。
銅貨・銀貨・金貨・アルミ貨・ミスリル貨・ヒヒイロ貨・魔布貨など、使われる金属もさまざまだ。
そのため、利用する地方において、どれだけ貴重な金属であるかがその通貨の価値に繋がる。
タイレル王国では、その産出量から金>銀>銅>その他の貨幣となる。ミスリルやヒヒイロカネなどの特殊金属は貨幣として用いられることは少ない。
中でも、名君と称えられるタイレル4世が発行した《タイレル4世金貨》は金の純度が高く、非常に価値が高いものとなる。
3000枚ともなると、王国の国家予算に匹敵する額となる。キフィナスはそれを出会い頭にぶしつけに要求した。
ヒモ野郎の金銭感覚は狂っている。
■《回復魔法》
回復魔法という語について、この世界の一部では偏見がある。
というのも、《癒す》という単語が風俗営業の隠語に用いられるためである。
私娼は、迷宮都市では主に治安の問題と疫病防止のために取り締まりの対象となっている。
そのため、呼び込む側にも工夫があり「《回復魔法》のテスト」などという触れ込みで活動している。
個人の能力が《スキル》《ステータス》に規定された世界において、持たざるものが金銭を得る手段は、そう多くはない。
そのため、風俗営業の取り締まりもまた局外者と同じく、善意ある怠惰さによって見て見ぬふりをされることも多い……のだが、街中で騒ぎになれば、当然こうして捕まえざるを得ないのである。
■《サキュバス》
シェイプシフターの一種であり、本来の姿を持たない魔獣である。意識を読みとってきて、もっとも印象深く、危害を与えづらい相手の姿で襲いかかってくる。
あくまで『危害を与えづらい相手』であり、それは必ずしも愛欲の対象とイコールではない。
これだけではアネットの性癖がインモラルであることを示すことにはならない。
複数で行動する冒険者パーティでもっとも忌避される魔獣である。
冒険者界隈では下品な冗談が流行っていることもあって(人間関係が弱いキフィナスは知らない)、戦闘をするとだいたいパーティの人間関係はぐちゃぐちゃになる。
自分の姿をしてる相手や、自分が大事に想っている相手を目の前で殺されるのは、誰だって気分のいいものではないのだ。
■《ニップルファックビースト》
シュメール時代、都市ニップルでは最高神エンリルを都市神とし、宗教的中心地として繁栄を極めていた。
王権の正当性を主張するに当たって、最高神を祀っているニップルは重要な都市であると位置づけられ、ニップルを巡って争奪戦が繰り広げられる。
しかし──文明が衰退するに応じてニップルもまた小さくなっていき、今となってはその形も残さない。
ニップルファックビーストとは、ニップルを凋落させた存在──シュメール文明を衰退させた大反乱および風化させた時間──という概念を一匹の獣として受肉させたものとなる。
長々と説明しているが、つまり、出オチである。
魔人バーントシェンナは、配置されたダンジョンの由来を理解し、現象に《名を付ける》ことによってひとつの文明を崩壊させるほどの力を持つ獣を生み出した。
これは彼だけの権能ではなく、ダンジョンを管理できる力を持ち、かつ知性を持つ存在であれば《名付け》は可能である。
《薬草》のように、世界によって《名付け》を受け、効力を持つようになった事物は多い。
■《文化資源》
ダンジョンから産出される資源のうち、その地の文化的な特徴を大きく残したものを指す。
例としては、図書、絵画、芸術作品などがそれに当たる。『よくわからないもの』はここに振られることが多い。
《文明資源》《生物資源》と並ぶ高度ダンジョン資源として認知されているが、上記2点に比べてその立場は弱い。
解読の必要があることに加え、記載されていることが正しいとは限らないためである。
研究会大会では、医術書として先日出土した資料に、瀉血なる残酷な拷問手段が記載されていたことが報告され、研究者たちは《文化資源》の取り扱いの難しさを改めて認識することとなった。
芸術作品だと認識されていたが、利用法が確立され《文明資源》や《迷宮兵装》へと分類され直された資源もある。
例えば名称《マスケット銃》は、殴打に用いると破壊力が高い。
■《職人》
迷宮資源を加工し、有用ななにかを生み出すことのできる存在。
彼らは冒険者や他の産業と同じく、同業者組合を立てて権益を上手く分配する──文明の発展に貢献している。
冒険者は持ち帰った迷宮資源を卸す先が必要であり、職人は何かを作るために素材が必要となるため、お互いの関係は──時に出し抜き、出し抜かれることはあれど──良好である。
ただし《呪医》は、その組合に属していない。鑑定時に表示される名前と、作品の優秀さで、冒険者界隈では有名な職人であった。
職人ギルドに貸しを作るため、確保しようという打算がレベッカには働いていた模様。
■《迷宮兵装》
ダンジョンにて出土した資源の内、破壊力が高いものを指す。危険物であるため、単純所持にも罰則がある。
ダンジョンから回収された資源は、用途が武器と認定された場合、土魔法で作られた人形を相手に、どれだけの破壊をもたらすか検査される。
研究者たちによって用途が明らかになったものが、結果として《迷宮兵装》へと指定され、国に回収されるという流れが多い。
説明書きもなしに武器だと判断できた以上 、それらは扱いやすいものであることが多く、王都タイレリアの王宮、地下宝物庫は許可なく立ち入るだけで極刑を免れない。
ただし、場数を踏んだ冒険者とは、得てして切り札を抱え込んでいるものだ。
迷宮都市において、冒険者が畏怖される理由のひとつでもある。
爆弾を抱えて歩く隣人に、果たして人は、どれだけ親切でいられるだろうか。




