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マルシスな二人  作者:
3/6

うめき声

「おかしいね」「もう5日だよう」と部屋の前に立って少年たちはますます不安がり(当たり前だ。少年たちは先生のお世話以外何も出来ないんだもの)、「先生は、衆クン(死んだ少年のことだ)が死んだ悲しみに耐えられなくて自殺

したのかもしれないよ」なんて言い出す子がいて、いつものぼくだったら「そんなことあるものか。先生は自殺なんていう通俗臭いことなんてしないんだい」と

顔を真っ赤にして怒ったところだろうけど、ぼくはそんなことをしなかった。

ただじっと黙って、ドアの前に三角座りをして、にやにやしていた。

ぼくは知っていたのだ。

中で何が起こっているのか。

そして、それはぼくを大変喜ばせた。

ぼくは、先生が中に入ってから、この5日間ずっと扉の前に座り続けた。

すると、かすかに、非常にかすかな声だったけれども、先生のうー、うーという湿ったうめき声が聞こえてきた。

ぼくの前で、一度だけ、先生のこのうめき声を聞いたことがある。

それは、ぼくがこの屋敷に来て間もない頃であった。

ぼくと先生は、世話する側と世話される側だったけれども、食事の時だけは別で、洋風の真っ白な長机で先生と同じように食事をすることが許されていた。

その日の食事は、確かマグロのソテーだった。

不慣れなナイフを使いこなそうと、必死になってソテーと格闘していたら、ふと先生がぼくの方を黒い眼鏡越しに見て「由夫やい、由夫やい」(このとき先生は、ぼくの名前を初めて呼んだんだ)と手招きしたものだから

ナイフとフォークが発する不協和音を叱責されるのではないかという羞恥で俯きながら先生の元へ向かったんだ。

すると、意外にも先生が、きみはナイフとフォークの使い方が上手いね、なんて言うものだからぼくはますます下を向いて、耳まで真っ赤になってお礼の言葉を言えなくなった。

そして、先生はぼくの肩に優しく手を置いて(思い出しただけでも驚喜乱舞しそうだ。昔のぼくが憎いよ)「では、このフォークを先生のココに刺してごらん」と言って、

先生の右の太ももを指刺したんだ。

ぼくは、顔を上げて先生の顔を見ると、斜視の先生の目が(先生のチャーミングな所の一つだ)見開いてぼくを凝視している。

それだけで、ぼくは今期待されているんだ、ぼくは今先生の愛の一部を受け取っているんだと、もう、狂おしくなる程、自分自身も、先生もますます大好きになって

勢い任せてフォークを振りかざした。

何回も何回も振りかざした。

ぼくは先生の愛を全部受け取ろうと必死だったんだ。

気付いたら、先生の真っ白なズボンに赤茶色の染みが出来ていた。

ぼくは、先生の愛の形が実体化したことに満足し、しばらく眺めていた。

すると両足の付け根の真ん中がそそり立っていることに気付いたんだ。

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