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異世界生物図鑑  作者: プラント
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1話

カサ、カサ。歩を進めるたびに枯葉を踏みしめ、リズムとなって耳に伝わる。


今、川を登っている。周りには誰もいない。何せ山奥に流れる細流を訪れる奇特な人なんて俺ぐらいしかいないだろう。


なぜここにいるのか?

大学四年生の俺は卒業論文を書く為に、研究の為に来た。

川を遡上しながら植生、動物の多さを調べ...あとはテキトウにやればなんとかなるか。


まぁそれだけじゃない。人のいない地を冒険してみる。サバイバルしてみる。これは世の男子達の夢だろう?

子供時代はキャンプなど行かず、大学の友人と旅行に行くわけでもなく。

一生に一度はやりたかったんだ。社会人になったらやる気なんて失せてしまうだろう。それに、これもまた誰にでもある時期だと思うが、危険な事を知りたがるあの時期に無駄に蓄えた知識を使ってみたい、というのもある。


罠の作り方とか火の起こし方、石器の作り方などなど。



...もうこれ、ただの遊びだろ。





そんなことでひたすら歩いていた。誰も使わないような端っこの駅から、ほぼいない住民に頼んで車に乗せてもらい、限界のところまで送ってもらい、そこから歩くこと二時間くらいか。


もう昼を過ぎていた。昼食は心優しい住民にもらったおにぎりだった。

残りの食料は...カロリーメイト3箱、飴一袋、水1Lと500ml。

キャンプ用のリュックには食料、テント、寝袋、懐中電灯、網、釣り針釣り糸、ナイフ、空の水筒、空き缶いくつか、丸く小さい飯ごう...などなど。

そしてマッチ1箱、ライター1個、虫眼鏡から火打ち石。火はとっても大切だからな。


山火事でも起こす気か。


スマホのバッテリーは電車、車で行き先を教えるのに使って残り60%だ。




その後も俺は研究目的である植生などをあまり観察せずにひたすら進み、辺りは暗くなりはじめていた。


その頃にはテントを張り終え、途中で石をひっくり返して見つけたサワガニ数匹、たまたま隙間に取り残されていた小魚を飯ごうに入れ、川の水も入れる。


そこらにある小枝を抱えるほど集めた後、石を並べてて焚き火を作る。もう陽がでていないのでマッチを使う。


よし、上手くついた。火のすぐ横に飯ごうを置き、沸騰するのを待つ。



できた。はいいが、どうやって取ろうか。とりあえず水をかけて火を消し、冷めるのを待つ。


触れるようになる頃には、真っ暗になっていた。


邪魔する光がない僻地の夜空は美しく冷淡で、それを見上げながら飲むこのスープの味は。

灰が入っていて美味くは無かった。そしてサワガニは食べれる部分が少ない。






シャワーがあるキャンプ場ならともかく、ここには何もないのでこのまま寝るしかない。

汗による少しの不快感とこれからの生活への絶望を覚えながらテントの方を見ると。



空間が揺れていた。その『揺れ』、あるいは『揺らぎ』は、いつの間にか地面に突き刺さった暗く青っぽく光るトーテムポールのような、二本の不気味な塔の間にあった。









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