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第一話(2)

「ここは生十会がその思考を無くそうと日々頑張っていますので、私たちはそういう偏見ないんですよー」

「まあ、まだまだ他よりもマシってくらいなんだけどねー」


 そう言いながらなんだか拗ねるように頬杖をつく桜。


「生十会がねえ。それまたレアだな」

「そう言うけどユキだって俺たちと、というか桜たちと普通に接してるじゃねえか。誘われてこうして来るなんて十分レアだと思うぜ?」

「俺も偏見はないからな。桜から声を掛けられた時悪意を感じなかったからシオンのためにも良いかなって」

「……おー、つまりシスコンか」

「否定はしない」

「わーお。公認のシスコンだー」


 呆れ顔の恭介を肯定すると、楽しそうに笑う桜。


「……私たち兄妹じゃないよー?」

「「「え?」」」


 そこに爆弾を放り投げるシオンがそこにおりました。


「はぁー。まあ別に隠してるわけじゃないから良いけど、向こうからしたらとびっきりの問題発言だからな?」

「ふえ? そうなの?」


 ユキとシオンは同じ苗字でこれだけ仲良くしているんだ。彼の発言も普通に兄妹愛だって思ってたはずだ。シスコンという発言からしても疑う余地はない。そんな中の兄妹ではない発言である。

 三人からのそういう眼差しが突き刺さるユキ。


「一応言っておくけど、付き合ってるとかじゃないからな?」


 こんな事を言った所で無意味だろうと思いつつも一応言っておくユキ。やはり意味はなかったみたいだ。


「えーと、ま、まあそういう事にしておくね!」


 本当に違うのだが、気を使ったような発言をする桜にユキは苦笑しつつ「ありがとう」と礼を言った。


「ねえねえ。ちなみにユキリンはどっち派?」


 ユキとシオンの恋人疑惑は桜の言葉で一先ず保留となったため、他の雑談をしていると一つの区切りの後に突然そう切り出した桜。


「どっち派ってなんの話? それと、ユキリンって何だ?」

「こいつ気に入った相手にはすぐあだ名付けるんだよ。だから気にしないて良いぜ」

「……へえ。随分と詳しいんだな。もしかして二人って——」

「ストップ! それ以上は言わせないよ!」


 クワッと目を見開いた桜が身を乗り出し、向かえの席に座っていたユキの唇に人差し指を立てていた。

 突然大声を出したものだから、店内の視線が集まっているのだがそれに気が付かないご本人。

 ユキの視界の端で代表するかのように、立ち上がってぺこぺこと頭をいろんな方向に下げている琴音の姿が映った。


(苦労してそうだな琴音……)


 なんとなくこのグループの関係性を把握したユキは、興奮が収まったらしく着席した桜に目をやった。


「ふうー。あたしと恭介は幼馴染なんだよ。だから冗談でもそういう発言はやめてね?」

「そーそー。こいつとはただの腐れ縁って奴だ。そもそもとしてこんな凶暴な奴を女としては見れないな」

「まっ恭介になんて思われても別に良いんだけど、その発言は普通に失礼だから後で覚えてろよ?」


 ニッコリと満面の笑みを浮かべながら硬く握り締めた拳を見せる桜を見て、恭介はひっそりと手を使って「な?」と言ってくるものの、距離が距離だ。完全に桜に聞こえているだろうな。まあ、十中八九それを理解した上での行動、つまりは挑発だろうけど。


「ねーねー。それでさっきのどっち派ってどういう事なの?」

「良くぞ聞いてくれました! それはズバリ天使様たちの行方についてだよ!」


 まるで大好きなアイドルの話をする女子高生のように興奮した様子で宣言する桜に驚いたらしく、シオンは目を丸くしていた。


「えーと、天使様って?」

「知らないっ!?」

「う、うん……」


 困惑しながら漏れたその言葉に勢い良く立ち上がる桜。

 驚愕の感情をありありとその顔に映しながら、ユキに視線を向けてくる彼女から視線を逸らすと、桜ほどではないがそっちもそっちで驚いている様子の二人の顔が見えた。


「えーと、別にわざわざ教える事ないかなーって」


 三人による若干の責めたような視線に思わずそう答えると、呆れたような顔に変わっていた。


「……納得いかない」

「こういうブームの話題は教えとかないとダメだよ?」

「そうですよユキさん。女の子ってこういう話好きなので、知らないと話題に入れなくて可哀想ですー」

「まあこうして今日知れるわけだし間に合ったって事で良いんじゃねえか?」

「……納得いかない。はむっ」


 どうして自分が責められているのだろうと、ユキは拗ねるように軽食を口に運んだ。


「ねえねえ桜! その天使様について教えて教えて!」

「モチのロンだよ! 天使様は三年ぐらい前から活動していた幻操術師のパーティー、グループだよ」

「ほほーう。有名なグループだったって事?」

「有名ってレベルではなかったですね。当時はどこのガーデンでもその話題で騒がしかったので」


 そう言いながら困った表情を浮かべる琴音。きっとハイテンションになる桜に苦労したんだろうな。そんな光景が実際に見たかのように想像出来るユキだった。


「具体的な人数はわからないけど、いつも二人一組で行動してて普段は普通らしいんだけど、戦闘になると全員綺麗な純白の和装になるんだ」

「ほえー。和装集団かー。確かにそれは目立つねえ」


 納得顔で頷いた後紅茶に口を付けたシオンに桜はニヤリと笑い「それだけじゃないよ?」と付け加えた。


「どうして天使様って呼ばれてると思う?」

「んー。そう名乗ったからかな?」

「天使様っていうのはある意味二つ名みたいなもので、自分から名乗ったものじゃないんだよー」

「そかー。それならその由来って何なの?」

「主な理由は二つあるんだ。一つはメンバーの全員(・・)が天使のように可愛いから」

「容姿なんだ……」


 桜の言葉に思わず苦笑するシオン。確かに可愛いから天使と呼ばれているというのは笑ってしまう。


「それでもう一つ。前者だけなら美少女様とかでも良かったんだけど、こっちの理由が影響して天使様になったんだよ」

「何々っ!」


 わざと間を作ったり、遠回しな言い回しをする桜の焦らしに、シオンはたまらないといった様子でテンションを上げた。


「なんと、天使様には翼が生えてたんだよ!」

「えええええええええっ!!」

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