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第二話(5)

「……委員長。あれ、どう言う事よ」

「あれとは何の事じゃ?」


 とぼけた事を言うジトメに会長は一瞬彼女を睨んだ後、諦めるかのようにため息をついた。


「佐倉ユキさんに佐倉シオンさん。これはまた随分と自由な人たちを連れてきたんですね。委員長」

「自由……まあそうじゃろうな。あやつらは何かに縛られるのが嫌い……いや、既にこれ以上ないものに縛られておるからこそ自由に見えるのかもしれんの」

「どういう事ですか?」


 不思議な事を言っているジトメに、六花は回答を貰える事に期待をせず問うと、彼女立ち上がり己の影の中にずっと座って椅子を落とすと口を開いた。


「何簡単な話じゃよ。人という生き物は完全な自由の中では自由にはなれぬのじゃ。決まり事、ルール、束縛、誓い、呪い。そんな牢獄を与えられる事によって自由に生きる事が出来るのじゃよ」

「何よそれ。矛盾してるじゃない」

「クフフッ。そうかもしれんの。しかし人間は常に矛盾と共に生きておる。そう思えば何も不思議な事はあるまい」


 生徒部たちの視線が背中に突き刺さる中、ジトメはそれ以上答える事はなく部屋を後にした。


「会長。どうしますか?」

「何がよ六花」


 既にジトメが消えた扉へと視線を向けつつ会長に声を掛けた六花は、彼女の返事によって視線を向けた。


「佐倉ユキさんは会長の立場を知っていました。その上であの態度です。委員部ではなく、生徒部に引き入れた方が良いのではありませんか?」


 六花の言葉に目を丸くした会長は、楽しそうに笑みをこぼしていた。


「へえ。そうだったの」

「はい、レアですよ。大抵の人は会長の立場に、始神家(ししんけ)が一角、神崎家次期当主筆頭候補という立場に恐れ首を垂れるのですから。佐倉シオンさんは既に委員部として入会してしまいましたので今更無理ですが、ユキさんならばまだ間に合いますよ」

「ふふっ。今日は随分と良く喋るのね。もしかして気に入ったのかしら?」

「そうかもしれませんね。あの独特なスタイルそれにあの言い方や余裕さからしてもまだまだ隠していそうです」

「そうね。正直期待以上の力を持っているみたいね。でもあんたは知らないと思うから教えておくわ」


 会長の言葉に六花は僅かに首を傾けると、会長からアイコンタクトを受けた桜が口を開いた。


「佐倉兄妹は委員長の友人らしいよ」

「——っ!?」


 桜の言葉にわかりやすく驚愕の感情を顔に出す六花。確かめるかのように会長へと視線を向けると、彼女は頷いていた。

 信じられないといった風の顔をしている六花に、桜と琴音の二人は苦笑いを浮かべていた。


   ☆ ★ ☆ ★


「さあ! 今日こそは白状してもらいますからね!」


 始業式から一週間が経った、今日で登校するのは六回目になるわけなのだが、ユキの前で興奮気味の彼女、日向琴音は食堂でユキに詰め寄っていた。


「自白って……はぁー、先週も言っただろ? 過去に貰った。んであの銃の特異性は銃口と繋がった回転弾倉を回転させる事によって六種類の弾を撃ち分ける事が出来る、以上」

「それじゃあ全然足りないじゃないですか!」


 どうやら琴音の操具に対する執着は凄まじく高いらしい。

 しかも、桜の影響があるのかはわからないが、ユキが所持するエンジェルモデルのキメラウエポンについて凄まじい量の問いを投げかけてくるのだ。

 弾丸を撃つための基本的な陣はマガジン部分に内蔵せれており、回転弾倉に内蔵されたアップデート陣を変える事によって、移動弾、衝撃弾、貫通弾、拡散弾、炸裂弾、追尾弾の六種類を使い分ける事が出来るという事だ。

 銃の特異性もいつ入手したのかも答えたというのに、琴音の質問が終わる事はない。

 個人的に食事は静かに食べたい派なのだが、模擬戦からというもの毎回来ては大声を上げるため、色々と視線が集まっているのもあってどうも食べ辛い。


「ねえ琴音? それは放課後で良いんじゃない? ユキリンも食べ辛そうだしさー」

「ダメですよ! いつもユキさんは来てくれないじゃないですか!」

「それは……まあ、ユキリンは役員じゃないからね」


 立ち上がって熱弁する琴音を桜が「まあまあ、とりあえずお昼先に食べようよ」と諫めると「……わかりました」と座って食事を開始していた。

 ちなみにこの光景は先週からずっと行われているため、四回目だったりする。


「という事でユキリン? そういうわけだからさ——」

「生十会には入らないからな」

「拒否早ーい」


 がっくりと項垂れる桜にユキはため息をこぼすと、何も言わずに食事を再開していた。


「なにか反応してよ! 寂しいじゃん!」

「うっさい。この展開何回目だっての。飽きた」

「飽きたって早くない!?」

「いやいや、確かこの展開先週から見てるぞ桜」


 呆れた顔をして口を開いたのは、ついさっきまで食事を優先していたもう一人の男子、桜の幼馴染こと恭介だった。


「だってユキリンみたいな人レアだもん。シオリンも入ってるんだし、ユキリンも一緒に生十会やろうよー」

「正直人員不足酷いですからねー」


 話題が変わった事によっていつもの琴音に戻り、苦笑しつつため息をこぼしていた。


「この際雑用係として恭介でも良いくらいだよ」


 桜の言葉に頬を引攣らせる恭介を見て慌てる琴音。フォローしようとしているみたいだが、する前に恭介が「大丈夫だって」と苦笑していた。


「んー、本当に人足りないのー?」


 そんな疑問符を浮かべたのは静かに黙々と食事を進めていて、今し方食べ終えて手を合わせたシオンだった。


「足りていないですよ。本来なら生徒部に五人、委員部に五人必要な所なのですが、現在は各四人ずつしかいませんので」


 そんな声が後ろから降って来て、振り向くとそこにはいつも通りのクールな表情を浮かべた六花と、呆れ顔をしている会長の姿があった。


「よう六花。ついでに会長。相変わらず不機嫌そうな顔してるな」

「っ……あんたは相変わらず口が悪いわね」

「安心しろ。会長限定だ」


 ユキの言葉に頬を引攣らせる会長の隣で、六花は何事もなかったかのように「こんにちはユキさん」と挨拶をしていた。


「あっそっか。だから生十会なんだもんね」

「委員部に関しては委員長の独断によって二人が町に駐在していますので、書類の処理など大変でしょう? いつでも生徒部に移動してきてくれても良いですからね」

「私書類処理なんてした事ないよ?」

「「「えっ?」」」


 シオンの言葉に思わず声を漏らしたのは、桜、琴音、会長の三人だった。

 六花は特に動じる事なく、恭介は目を丸くするだけで声に出すまではいっていなかった。


「ど、どういう事!? シオリンなんでやった事ないの!?」

「なんでって言われても、私は元々そういうの免除って契約だったんだもん」

「シオン。それ言うなって言わなかったっけ?」

「あっ……」


 ユキの言葉にしまったという顔をして自分の口を塞ぐシオン。

 今更塞いだ所で意味はないのだが、ユキは内心、こうなるだろうと思ってた、とため息を吐くと口を開いた。


「なあ六花。別に委員部の仕事を生徒部が代わりにやってるとか、そういうのは無いよな?」

「ええ、そういった事はありませんね」

「それなら委員部持ちの書類処理って誰がやってるの!? ……っまさかユキリン!」

「俺はやってないぞ。というか一人しかいないだろ」


 呆れ顔と共に出たユキの言葉に、衝撃を受けたかのように固まる生徒部の面々。

 シオンは首を傾け、恭介は自分には関係ないとばかりに食事を再開していてこちらの話題には無反応になっていた。


「まっままま、まさか委員長?」

「なんじゃ。ワシを呼んだかや?」


 動揺率一ニ○パーセントで会長が呟いた瞬間、彼女の背後からにょきりと生えるジトメの姿があった。

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