異暖郷異変 後編
「魔界の神様が一体何の理由で異変を起こしたのかしら?」
霊夢はそう聞いた。
しかし、神綺は首を横に振る。
「正確には、私の娘よ。なんか最近外来人が気に入らないとかなんとか言ってたわね……」
「つまりは、ソイツが異変の首謀者で正しいんだな。」
「あら?貴方ははじめまして……よね?」
「八雲彩です。」
「どうも、神綺です。」
お互いに礼をする二人。
(この人が魔界の……)
そう思い再び彼女を見るが、少女にしか見えない。
否、人は見た目で判断するものではないということだろう。人じゃないけど。
「結局、異変の首謀者はどこにいるのよ?」
「私が教えるとでも?」
「それもそうね……なら、力ずくで教えてもらうわ。」
身構える三人。
その三人を見て神綺はやれやれと手を上げた。
「みんな元気ね……良いわ。私が相手になってあげる。」
そう言い、神綺は宙に浮いた。しかし。
「じゃ!あとは任せた!」
「は?おい霊夢!」
最初からそのつもりだったかのように、霊夢はすぐに戦線を離脱した。
「あの野郎……!」
ひきつった顔になる龍二に橙が叫ぶ。
「彩、危ないよ!!」
「!」
紙一重で弾幕を避けた龍二は神綺を見る。
「よそを見る暇はないわよ?」
「まずはこっちか……!」
刀を振って弾幕を流し、神綺の弾幕を弾きながら、龍二は橙に話す。
「俺は援護にまわるから、橙は神綺へ弾幕が当たるように、頼んだ!」
「わかった……って龍二は直接攻撃しないの!?」
「努力はする。」
降りかかる弾幕を払いながら龍二は答えた。橙は頼まれた通り、神綺を狙う。
「協力?ちょっとせこくないかしら?」
笑いながら、神綺は橙達に向かって直球の丸い弾を重ねて撃つ。
二人とも回避したが、次に尖った弾が不規則に飛んできた。
「降りかかる火の粉は払う!」
そう呟き、スペルカードを取り出す龍二。
「【彩符:百花繚乱】!!」
「へぇ……なかなかね。」
相殺される弾幕達を見ながら神綺は言う。
「弾幕を放つ程度の能力……俺の能力なら、相殺する弾幕くらい容易いですよ。まぁ俺以外でも相殺する弾をつくれるでしょうけどね。」
「能力の前に、あらゆるはつかないのかしら?」
「一応つきますけど、まだ、つけるほど多様の弾幕を放つことができるわけではありませんから。」
「あらあら、謙遜しなくてもいいのよ?」
話しながら遊びを続ける2人。
刹那、神綺の前に橙があらわれ、弾幕をばらまいた。
そして橙はそこから離れ、同時に弾幕が爆発した。
「やったか……!?」
「おい、やめろ橙。」
止めた龍二。
しかし、フラグ発言はしっかりと回収された。
「あぶないわね……やっぱり2人を相手するのは難しいわ……」
神綺の声は、橙達の後ろから聞こえてきた。
「あ~あともう少しで被弾するところだったわ。ぎりぎりよ。」
「……その割には、私の弾幕はグレイズすらしてなさそうですけど?」
神綺の姿を見ながら橙は言った。
確かに、少しだけ、ホントにほんの少しだけ焦げたように見えるだけだ。弾がかすった傷もない。
あの爆発は、神綺が被弾したわけではなさそうだ。
「でも、ホント危なかったわ。少し……本気を出させてもらおうかしらね。」
光が、神綺を包み込む。
刹那、光ははじけ、神綺の背中には6枚の翼が生えていた。
同時に、黒い円形の弾幕が橙と龍二を襲う。
この時、二人は同じことを考えていた。
(あぁ……これは遊びじゃないな。)
円の間を必死に避ける二人。
次に来たのは黄色い追尾性が少しある弾だった。
「うわっ沢庵!?」
「違うわよ。」
思わず叫んだ橙に神綺はそう答えた。
それでも、なんとか避ける二人を神綺は関心するように見る。
「なかなかやるわね……」
「ねぇ彩……これって、ごっこなのかな?」
「…………俺としては、違うって答えたいなぁ。」
「お喋りする余裕はあるみたいじゃない。」
微笑みながらそう言う神綺は、疲れている様子を全く見せてない。
しかし、相手を倒す必要はないのだ。
一発でも、弾幕を被弾させること。
それが弾幕ごっこ。
「橙、さっきの接近法ってどうやった……?」
小声で龍二は聞いた。
橙も小声で答える。
「どうやったって……アレはたまたま死角が出来たから気づかれなかっただけだよ。」
まぁ死角がなくても使うけど、と橙は最後に付け足す。
「死角か……それならつくりやすい方法があるな。」
死角というよりは、ただ単に見えづらくする弾幕。
魔理沙はこの手のタイプをバグタイプとよんでいた。
「注意をひかせるよう、俺も努力する。」
「了解!」
「準備は良いかしら?」
「ああ。そうだな。」
龍二はそう言い橙より少し前に来た。
「貴方1人で来るのかしら?」
「そんなわけないでしょう。配置みたいなものですよ。」
「それもそうね。」
再び撃ち合いが始まる。
「来てくださいな。八雲彩さん……」
「名指しっすか……まぁ、こっちもそのつもりでしたけど!」
言って、接近する龍二。
神綺は微笑んだ。
「仮名……かしら。ねぇ?青龍さん。」
「は?」
龍二が反応した時には、神綺は左手を掲げていた。
「いくよ!」
「!」
次の瞬間、周りが神綺の弾幕でいっぱいになった。
レーザーのような弾幕もあれば普通の弾のような弾幕もある。
「荒れ狂う天候と神の降臨……ってところか?」
龍二はそう言って、髪色を変えた。己の妖力を解放する為だろう。
彼は刀を逆手に持ち、振り上げてから叫ぶ。
「【弾符:夢想羽織】!!」
叫んで、突き刺すように降り下ろす。
そこには、何もない。何もないからこそ、そこから弾幕が大量に湧き出てきた。
すぐに龍二は刀を持ち直して、弾幕を張る。
「そんなに接近したら意味がないんじゃないかしら?」
弾幕を避けながら神綺は言う。
「いやいや、意味ならありますよ。俺はなにも、貴方を狙っているわけではありませんし。」
「?」
神綺は言われた数秒は意味がわからなかった。
しかし、背後に気配を感じて気づく。
「だから、二人がかりはズルいわ……」
神綺がそう呟いたあと、橙の声が響き渡る。
「【仙符:鳳凰卵】!!」」
負けた神綺は素直に元凶のところへ案内した。のだが……
「……なにこの状況。」
そこで目にした光景を見て龍二はそう言った。
そこにいたのは、何故かいる早苗と、おそらく異変を解決した霊夢と、地べたに座って泣きじゃくる赤髪の少女だった。
その少女を指して橙は聞く。
「えっと……この子が?」
「えぇ。異変の黒幕だけど、負けちゃったみたいね。」
「神綺様ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
神綺に抱きつく少女。
神綺はあらあらと言いながらその子を受け止めた。
「……お前、何したんだ?」
「別に、ただ私はこの子を倒してから理由を聞いただけよ。」
「そしたら、急に泣いちゃったんですよね……」
早苗も苦笑いで答えた。
「つか、そもそもなんで早苗さんがいるんですか?」
そう聞く龍二。
あくまでも、八雲彩という男なので、早苗に対しても敬語だ。
その八雲彩こと龍二に、早苗は答える。
「私はただ、偶然会っただけですよ。まぁ最終的には霊夢さんにおいしいところ持ってかれましたけど。」
(……妙に黒いオーラが見えるのは気のせいだろうか?)
そう思う龍二。
最初に泣きじゃくる少女に話しかけたのは橙だった。
「とりあえず、なんで泣いているのさ?」
「…だっで、わだじは、みんな゛の為を思っでや゛っでだのに゛……外来人は言うごど聞がないし。」
泣きながら説明する少女。
「あー……まぁ確かに外の世界の人間って結構自分勝手な奴が多いしなぁ……」
「つい利己主義になりがちなんですよねぇ……」
「大丈夫よ。十分頑張ったもの。だからマルクちゃんは悪くないわ。」
龍二と早苗が話して、神綺が最後にそう慰める。
マルクという少女は、再びわーと泣き出してしまった。
「んー……つまり、とりあえず外来人を殴ればその子的には良いのかしら?」
突然そんなことを呟いた霊夢。
そして、龍二を呼んだ。
「とりあえず……彩、歯を食い縛りなさい。」
「俺かよ!?」
「他に誰がいるのよ?」
「早苗さん。」
「人間だと思った?残念、現人神でした!」
(くそがっ!)
早苗の台詞にイライラした龍二だが気づく。
「現人神って、『人間でありながら、同時に神でもある』ってことだよな?」
「えぇ、まぁそんなところですよ。」
「てことは人間じゃないですか。外来神でありながら外来人でもあるのですから。」
「…………」
何故か誇らしげになっていた早苗の表情が青ざめたものになった。
「つまり、利己主義になりがちだったのは早苗だったのね……」
準備体操をしながら霊夢は言った。
「いや、ちょっと話を聞いてくださいって!ほら、習慣って直しづらいじゃないですか!ね?」
「問答無用!夢想封印!!」
(……スパ〇ラルカ〇トみたいだな。)
物理的な夢想封印なんてあるはずない。
ちなみに、現人神は他にも
1 《この世に人間の姿をして現れた神の意から》天皇の称。あきつかみ。あきつみかみ。
2 随時、姿を現して、霊験あらたかな神。特に住吉や北野の神などをいう。
といった意味もあったりする。ヤホー辞書に載ってた。
「じゃ、次は貴方ね。」
「は?なんで!?」
「早苗は女性代表、彩は男性代表よ。」
「マジか!いや納得出来ない!しかもなんでお札なんだよ!!」
「うるさい!【霊符:夢想封印】!」
そんなこんなで一応異変解決。
明日には、幻想郷に秋が戻っていることでしょう……
めでたし、めでたし。
「じゃああの時の断末魔は彩さんのでしたか……」
「死んでないから。断末魔って言わないでくれ……」
異変解決後の恒例の宴会で文に取材を受けてる龍二。
「ま、大体これくらいですかね。今回は2つネタが入ったし。」
「変な記事にすんなよ。」
「私は正直に書くだけですよ。では失礼しまーす。」
そう言って、席を離れていった。おそらく椛のところだろうと龍二は考える。
そんな彼のところに1人の少女が寄ってきた。
「……ルゥか。」
「隣良いかしら?」
言っておきながら勝手に隣に座る。
なにかあるかと思えば、全く話しかけてこない。
(……エレベーターみたいな気まずさだ。)
「ねぇ。」
「ん?」
「……あたし、今度から働くことになった。」
「……そうか。良かったじゃないか。」
「うん。あの男の人が教えてくれてさ。妖怪が働いている団子屋なんだけどね。そこで働かせてくれることになったの。」
「へぇ……まぁ、盗みをする必要はなくなったようだな。」
ルゥは頷いた。
それからまた、少しだけ間が空いたが、今度は龍二が話を始めた。
「お前の飼い主だった人間って……神崎勇樹って名前じゃなかった?」
ルゥは頷く。
「あいつなら、魔界にいる。」
「……ホントに?」
龍二を見ながらルゥは聞いた。
龍二は頷く。
「まぁ、必ずしも魔界にいるとは限らないけど。たまに幻想郷にも来ているみたいだから、今度会ってみたら?」
「……うん。」
「あ~もう!!」
突然、早苗が龍二の背中に体重をのせてきた。
「彩さんの所為でボロボロなんですからねえ……」
「結局俺も被弾しましたけどね~」
「物理じゃないだけまだマシじゃないですかぁ!!」
(いや、弾幕もかわらないだろ…………)
龍二はそう思ったが、これ以上反論するのは面倒だった。
「……頭痛い…………」
「酒の飲みすぎじゃないですか?」
頭痛を訴える早苗に龍二はそう言い、休むことを勧めた。
早苗は頷き、別室へ移動する。
「早苗にしては珍しいな……」
そう呟く龍二。
今度は神奈子が、龍二の方をトントンと叩く。
「どうかしたんですか?」
「あのね、私ね、これからね、50ページごとにね、お知らせしようと思うの。」
「…………」
この時龍二は理解した。
わずか0.01秒で理解した。
(この神……酔ってやがる!!)
「前作みたいにそうしようかなぁって。まぁ一回しかやってないけど。でもこれなら少しでも出番が」
「あーはいはい。そうっすねー。」
めんどくさくなった龍二は適当に話を終わらせた。
(メタ発言ほどめんどくさいのはなかなかないよな……早苗といい神奈子と言い、今日はみんなよってるな……)
「そういえば、早苗は何処行ったのよ?」
「ん?あ~別室にいるはず……」
「ちょっと呼んできて頂戴。」
「俺がか……わかった。」
どうせ奥の部屋にいるだろうと考えた龍二はそこへ向かう。
しかし、そこにいたのは何故か早苗ではなく、雪菜だった。
「!?」
思わず身構える龍二。
そんな彼を見た雪菜は、一瞬だけ悲しそうな顔をしていたように見えた。
しかしすぐに、気のせいかもしれないと思わせるような素振りをし始める雪菜。
「久しぶりだね。」
そう言って、笑みを浮かべる雪菜。
自然と龍二の警戒心が解かれていた。
「あいつは……早苗は知らないか?」
「あの子ならもの凄く体調が悪そうだったから家に帰らせたよ。」
「……………………。」
「なにさ。嘘は言ってないよ?にしても、あの子としょっちゅう会ってるみたいだけど、あまり会わないほうが良いよ。」
その言葉の意味を、確認するように龍二は聞く。
「それは、記憶をとられているから……だよな?」
雪菜は頷いた。
「そしてそれは君に対しても言える。龍二、君はもう僕と会わないほうが良い。」
「ッ!?」
突然の頭痛に思わずその場に座り込む。
早苗も先ほど頭が痛いと訴えていた。
「……俺のもか?」
頭に片手をあてながら龍二は聞く。
その質問に雪菜は頷かなかった。しかし、同時に首を横に振ることもなかった。
深いため息が龍二からもれる。
「記憶を奪われたものは奪われたものに深く関わる人物と関わると、記憶がないことに違和感を感じる。」
「だからあの子は君と関わると違和感を覚える。そして君も、僕と関わることによって違和感を感じた。無意識に、脳が勝手にね。」
「ひとつ教えろ。あんたは……東條雪菜は、俺の何だったんあだ?」
記憶がない龍二にとって、その質問はある意味重要だった。
話の流れからして雪菜は龍二から自身に関する記憶を奪った。
そうした理由はいったいなんなのか?自分にとって雪菜は……または、雪菜にとって自分とは……記憶を奪った理由が龍二は知りたかった。
しかし、雪菜は伝えなかった。代わりにわからないと答えた。
「……どういうことだよ?」
「とにかく、これ以上君を巻き込みたくなかった。それだけっだった。なのに……君は再び狙われた。」
「おい、説明するならもうちょっとわかりやすく」
「これ以上説明はしない。」
「What?まさか、言うだけ言って終わりかよ。」
「言ったらそれは君の記憶を返すのと変わらない。だから言わない。」
そう言って雪菜は外へ飛んで行った。
後を追う、という選択肢はなかった。
(目眩までしてきた……)
座り込んでいた状態から、そのまま横向きに倒れた。
激しい頭痛で意識は飛んでいく……
「ふむ、彩が帰ってこない……」
宴会はまだ続く。
しかし呼びに行かせた龍二が帰ってこない。
「……まさか、また雪菜と会っているのかしら?」
もしかしたら、記憶がとられたことを今聞かされているかもと予想する神奈子。
「……無駄だと知っても、記憶を返さないのは、それほど彼の事が好きなのかしらね……」
みんなが騒いでいる中、神奈子はひとりそう呟いた。
ホントに小さい、自分にしか聞こえない程度の声で。
(過去に何があったか、私は知らないけど……)
盃の中の酒を飲んでから、呟く。
「……ちょっくら情報収集でもしようかしらね。」
「ほう!なにやら面白そうな事を考えていそうですね!!」
「……いつからいたのかしら?」
「今です!!」
ご機嫌な文。
きっと酔っているせいだろう。軍神に左手で挙手の敬礼をした。
(まぁ宴会だからどうでもいいけど。)
そう思った神奈子はふと、思い出した。
「……天狗。確か貴方、八雲彩のいた世界に行ったことがあるわよね?」
「ふぇ?あぁ、ありますけど……」
「その時の理由って、同僚の天狗を……かしら?」
文は頷く。
「じゃあ……ちょっとその子が今何処にいるか教えてくれないかしら?」
「いいですけど……山の神様がわざわざ1人の天狗に行って何をするんですか?……まさか、また何か企みを?」
ニヤリとした文に神奈子も微笑むように答える。
「そうよ。ちょっと企んでる事があってね……」
素直に認めた神奈子に文は驚く。
「……ご一緒しても良いでしょうか?」
「あら、一体何故かしら?」
「そこまであっさり答えられると、どうも異変を企んでいるようではないですし……それに、あの子に直接聞くこととしたら大体決まっていると思うかと……」
「ふむ」
文の予想に神奈子は関心した。
「まさか、そこまで予想するとはね……向こうに行った者からすればわかりやすかったかしら?」
「まぁあくまでも私の予想ですけどね……って、まさか?」
「ええ、そのまさかよ。良いわ。貴方にも一緒に来てもらうわよ。」
「あやややや……まさかホントにそうだとは……」
神奈子と文、二人の様子を遠めの席から見ていた者がいた。
「……今度は何を企んでいるのでしょうか。」
犬走椛。
文と同じく、藤崎龍二のいた世界に行ったことがある少女。
(先輩も、八坂様も企むことがたまにあるから、注意すべきか。)
「ちょっとそこの君。」
考え事をしていると、後ろから声をかけられる。
振り向いた先には八雲藍がいた。
「なんでしょうか?」
「いや、何。ちょっと聞きたいことがあってだな……八雲彩について、だ。」
「彼については、貴女方の方が知っているのでは?」
椛はそう言う。
しかし、藍は首を横にふった。
「私は……紫様が拾ってきた外来人としか知らない。しかし、八雲彩と幻想郷では呼ばせている。確か本名は藤崎龍二。君は彼の世界に行ったことがあるんじゃないか?」
「……だとしたら、どうするんですか?」
「教えてくれ。君の知っている限りの藤崎龍二を……彼は私や紫様の家族でもあり、私の生徒でもあるから。」
「いや~にしても、やっぱり異変だったんだな。」
また別の席では魔理沙がそんなことを呟いていた。
隣で霊夢もお酒を飲んでいる。
「何にせよこれで異変は無事解決。紅葉は深まるんだよな?」
「あ~そのことなんだけど、実は今回の異変は紅葉とかと関係はあまりないと思うわ。」
「どういうことだ?」
「わたしもさっき早苗から聞いたんだけど……」
葉の赤色は色素「アントシアン」に由来する。
アントシアンは春から夏にかけての葉には存在せずに、秋に葉に蓄積したブドウ糖や蔗糖と、紫外線の影響で発生する。
つまり、暑さはあまり関係なかったりするかもしれない。ちゃんと調べてないからわからないけど。
ちなみに、黄葉も秋になれば葉緑素が分解され、若葉の頃から含まれていたカロテノイド色素系が目につくようになる。
「それじゃあ今回の異変はただ単に暑いままになっていただけか?」
「そういうことかもね。秋がなかなか来ないのは、あの神様がまだ寝ているんじゃないかしら?」
「そ、そうだったのか……」
※細かく調べてはいないので正しいとは限りません。上記の情報もwiki調べなので真偽はわかりません。
「にしても、異変っていう感じの異変は久しぶりだったわね。いや、今回も異変って言えないかもしれないけど。」
「確かに、最近は宝船を追ったり幽霊を追ったりだったからな。それも、結局宝船じゃなかったり、昔の人間が復活したりするしな。」
「幽霊じゃなくて、神霊よ。」
「似たようなものだぜ。」
「全然違うわよ……」
そう言ってため息をつく霊夢。
「まぁ、今回は単純な異変だったわね……神綺は後日また来るとか言ってたわ。」
「ほぉ、お詫びに何かくれるのかもな。」
「そうだと良いわね~」
ふと、霊夢は周りを見渡す。
「……宴会はまだ続きそうね。」
「そうだな。それがどうかしたのか?」
「どうかしたのか?じゃないわよ全く……あんた、まだわからないの?」
霊夢にそう言われた魔理沙だがまったくわからない。
「また新しい異変か?」
「そうね……異変と言えば異変かもしれないわ。といっても昔からずっと続いてる異変だけど。」
「?」
「あ~めんどくさいわ。最近は特に、外来人が増えるから片付ける量も増える。それでいて、片付けるのは私一人か、たまにアイツが手伝ってくれるだけの異変。少人数で宴会の後片付けするの辛いのよねぇ……」
「……霊夢、それは異変とは言わないぜ。」
宴会はまだまだ続いていく。
そんな中、神奈子は未だ帰って来ない龍二と早苗が気になって、部屋に向かった。
「…こ、これは………」
奥の部屋に行くと、そこにいたのは倒れている龍二ただ一人。
その龍二を見て神奈子は言った。
「どうなってんだよおい……こいつ死んでるじゃねぇか!」
「普通に生きてるでしょ。」
冷静に紫にツッコミをいれられる神奈子。
「青い髪だからってそんなこと言っちゃ駄目よ。」
「可愛い女の子だと思った?残念!カナコちゃんでした!」
「最近、魔法少女にハマってるの?」
「ほら龍二、おきなさーい。もうすぐ200ページよ。」
※早苗「当時連載していた時は、もうすぐ200ページになろうとしてました!!約5年後にこんな注釈を入れることになるなんて……いくら幻想郷が常識とらわれてはいけないとしても、これはいかがなものか!??」
龍二「早苗さん、俺ら寝ている設定だから……!」
早苗「……はっ!?」
(……酔ってるのかしら?)
神奈子を見て紫はそう思った。
「まったく起きないわね……」
「仕方ないわよ。多分疲れているのよね……」
「いや、そんなんじゃないと思う。」
神奈子はそう否定する。
視線は龍二の先にある手紙。神奈子はそれを拾って内容を見た。
「……やっぱりね、この部屋に雪菜がいたらしいわ。」
「あら、雪菜って確か龍二の……?」
紫の問いに神奈子は頷く。
「頭痛が酷そうだから守矢神社に早苗を置いてきたって書いてあるわ。頭痛の理由は龍二との接触が多かったから。やっぱり当分は会わせるわけにはいかないみたいね。」
「やっぱり行動は制限するべきかしら……」
「いや、まだ早苗は今の龍二のことを八雲彩として認識してるから制限する必要は無いわ。早苗となるべく会わなければ良いのよ。」
「詳しいわね。」
紫はそう言う。
しかし、神奈子は首を横にふって手紙を紫に投げる。
「ご丁寧に手紙にそう記されているだけよ。」
「……そう。」
それから、龍二が起きたのは早朝。
外を見ると山の間から日が少し出ていた。
「……神社で寝てたのか。」
「あら、早いじゃない。」
「ひぃ!?」
龍二が思わず高い声を出したのは振り向いた先にくまをつくった霊夢が近くにいたからだ。
「お、お前その顔……」
「さっきまで宴会の片づけをしてたの。あいつも手伝ってくれたけど、今向こうで満身創痍になってるわ。」
聞いててだんだん申し訳なくなってきた龍二。
終わったのか聞いたら、物凄く大きなため息をつかれた。
「じゃ、じゃあ残りの分は俺がやっておくよ。」
「……ホントに?」
「ああ。だから彼氏さんにももう休んで良いって言っておいて。」
「有難う!大体は片づいてるからあとは同じ場所に置くだけよ。お願いします!」
霊夢はそう言って、幸せそうな顔をして自室へ行った。
どれくらい幸せかと言うと、凄く暑い日に開かれた全校集会で、ようやく冷房も扇風機もない風通しの悪い体育館から抜け出した時のような幸せ。
「……霊夢も霊夢でそれなりに苦労してるんだな。」
博麗の巫女は常に宴会の片づけと戦っているようだ。
弾幕ごっこよりも異変よりも大変な片づけに。
「……ある意味大変な異変だよなぁ。」
数時間前の霊夢と同じような事を呟いた龍二は、片付けを始めた。