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異暖郷異変 前編

「龍二、異変を解決しに行きなさい!」



相も変わらず唐突に物事を頼む八雲紫。

勿論、龍二は今、はぁ?アンタなにいってるの?っていう顔をしている。



「異変よ!異変!温暖化と見せかけて幻想郷を暖かくさせてるの!」


「そんな唐突に言われても困るんだけど………」


「霊夢が今日行くって言ってたから、龍二はそれを手伝いに行きなさい。」


「……拒否権は?」


「ないわよ♪」



紫はそう言い、パチンッと指をならした。

刹那、龍二の足元に隙間が割れる。



「随分としゃれた隙間の開きかただな……」



そう言いながら隙間の中に落ちて、博麗神社に来た。



「うわっ!?人が食事中にいきなり来ないでよ!!」


「俺に言うな、紫姉に言ってくれ。」



そう言いながら、霊夢の朝食に目をやる。

ご飯に味噌汁と、沢庵だった。



(普通………だと……!?)



その時、龍二は戦慄した。



「勝手にするなっ!」



すぐに霊夢はつっこむ。



「よし、じゃあ行くわよ。」



霊夢はそう言い、立ち上がる。



「そのセリフを言うまで何十分かかった?」


「そんなかかってないでしょ?」


「そうか。50分は無駄にした気がするんだが。そういえば行く先は決まっているのか?」


「無いわよ。でも、あっちにあると思う。」



霊夢はそう言い、指をさす。



「向こう側に太陽の畑っていうのがあるんだけど、」


「そこに元凶がいるのか?」



霊夢は頷き、宙に浮いた。



「まぁ実際に行ってみないとわからないわ。」


「女の勘、か……ハズレてたらどうするんだ?」



その問いに霊夢は笑みを浮かべながら答えた。



「大丈夫よ。私の勘はよく当たるから。」


「はぁ……ホントにいるもんなのか?」


「いるいる。絶対いるわよ。話は変わるけど、龍二は異変の解決の仕方は知ってる?」


「いや、知らないけど……でも弾幕ごっこで解決するんじゃないのか?」


「えぇ、その通りよ。主な異変はそうやって解決してきたけれど、中には例外もあるわ。」


「例外?過去に弾幕ごっこを使わない異変があったのか?」



龍二の問いに霊夢は頷き、説明を続けた。



「過去に何度もあるわ。幻想郷のルールに従わない、身勝手な者達のせいでね。それで重傷者は沢山増えるし、私も何回殺されかけたかわからないわ………」



霊夢はそう言って、ため息をついた。

苦笑して龍二は応える。



「ハハ……まぁ死んでないだけまだマシなんじゃないか?」


「そうかもしれないけど……まぁそれはおいといて、今までは弾幕ごっこで解決するのが主で、この前アンタともう一人の半人半妖が男性向けのルールを考えた。これがどういうことかわかる?」



霊夢がそう言った途端だ。

下から、突然男が急上昇して目の前に現れた。



「………男性も異変に参加してるってわけか。」



龍二はそう答え、弾幕を展開した。

無言で弾を放つ男性は勿論龍二を狙っていた。


龍二はというと、陰陽刀を抜き刃の裏側を相手に向け弾を放つ。



「確かお前だったな……半人半妖の八雲彩というのは。」


「まぁそうだけど、あの新聞には二人の半人半妖にって書いてなかったか?」


「名前を知ったのは風の噂だ。何にせよ、お前達のおかげで俺達も表舞台に出れたというわけだ。まぁあくまでもモブキャラとしてかもしれないがな………」



男性は最後にそう呟く。それを聞いた龍二は小さく笑った。



「モブキャラだって、いつかは主役になるぜ。」



そう言い、弾幕を張った。



「男が二人いるだけで、随分と景色は変わるものね。」



そう呟きながら霊夢は弾幕を撃ちに来る妖怪達を、ついでに通る妖精にどんどんお札を投げる。



「ちょっとちょっと!!待ちなさいよ!」


「あ?なによ?」



振り向くと、白いモフモフのボンチョに包まれた少女が一人いた。



「なによモフ子。」


「アタシの名前モフ子じゃないから!ちゃんと絹江(キヌイ) 瑠衣(ルイ)っていう名前が……」


「モッフモッフモッフモッフ!」


「ひぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」



叫びながら瑠衣は弾幕を張る。が、それらは全て避けられてしまった。



「来ないで!来ないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」



そう叫んで逃げる瑠衣だが、それでも追う霊夢。



「待ちなさいモフ子!」


「だからモフ子じゃなぁぁぁい!」



2人のやり取りを、龍二は見ていた。



(霊夢ってあんな奴だったか?)



余裕そうにそう考えているが、ホントはそうでもない。

多対一で囲まれている状況だった。



「まずは自分のことを考えたらどうだ?」


「そうだな……なら、少し人数を減らすか。」



そう言いスペルカードを出す。

【弾符:夢想羽織】

スペルカードにはそう書いてあった。

刹那、龍二の周りを弾幕が囲み、彼を中心に四方八方、飛んでいった。



多数いた妖怪は三人に減った。

一番最初に現れた妖怪もその一人だった。



「アンタ、強いな……」



笑いながら龍二は言う。

相変わらず無表情で彼は答えた。



「俺は強くない。お前がまだまだなだけだ。」


「痛いところをつくな……だが、」



2つの球体を元の位置から自分の傍に浮かせる。



「これから強くなる!」


「……そうか。」



再び弾幕が交じわる音がし始めた。

その一方で霊夢は瑠衣を捕まえたところで、彼女を抱きしめていた。



「柔らか~い!!」


「く、くるしい……!」


「ていうか、暖かい日になんでこんな服着てるのよ?暑くないの?」


「別に暑くはないわよ。ていうかそろそろ放してよ。」


「やだ!」



そう言われて、ため息をついて、瑠衣は力ずくで逃れようとする。



「放せぇぇぇ………!」



それでも放さない霊夢はあることを提案した。



「それなら、貴方がその服を脱げば良いじゃない。」


「それだけは無理!これしか着てないもん!」


「じゃあ裸で帰りなさい!」


「やだぁ!」



そんなやり取りをしていると、一人の少女がやって来た。



「あ、紫んところの式のそのまた式じゃない。」



その少女、橙は唖然としながら二人を見ていた。



「え……百合プレイ?」


「何処で覚えたのよそんな言葉………」


「しかもアタシ無理矢理襲われてるんだけどね……」


「それもまた1つの百合!って外来人の1人が言っていた。」


(外来人んんんんん!!!)



霊夢と瑠衣はそう心の中でツッコむ。が、二人同時だったことは気づかないだろう。



「とりあえず、放してあげたら……?」



橙はそう提案するが、霊夢は首を横にふる。



「この子気に入った。家の暖房器具にする。」


「物扱いなんだ!?私って物扱いになるんだ!?」



そんなことを言いながらジタバタしていり二人を橙は見ているだけ。

しかし、ふと思った橙は霊夢に問いかける。



「ところで、異変は解決したの……?」


「あっ………」



忘れていたみたいです。



「い、今から行くわよ!行こうモフ子!」


(もうモフ子で良い気がしてきた……)



逃走中にも言われていたらしくとうとう瑠衣はそう考えてきたようだ。

二人を見送ってから橙はもう一点気づく。



(そういえば、龍二はどうしたんだろう……)



その、藤崎龍二は先に太陽の畑についていた。



「………向日葵畑?」



太陽の畑だと知らずに。

後ろから足音がする。振り返ると緑髪に赤い服の少女がいた。



「珍しいわね……ここに人間が来るなんて。そもそも貴方は人間かしら?」


「半人半妖という種族です。名前は八雲彩といいます。」


「八雲……?あぁ、貴方あのスキマ妖怪の式かしら?」


「式というか、義弟ですね。」



龍二がそう答えると、少女はニヤリとする。

次の瞬間、彼女から弾幕が展開された。



「え、ちょ、何をしているんでせうか……?」


「何って……弾幕ごっこよ?」



刹那、展開された弾幕が龍二を襲った。

間一髪で避ける龍二は勿論少女に聞く。



「危ないだろ!なんで弾幕ごっこを始めるんですか!?ていうか、名前ぐらい名乗りやがれ!」


「目線があったら弾幕ごっこでしょう?」


「それは手持ちのモンスターで戦うゲームでしょうが!!」


「それと、私の名前は風見幽香よ。まさか知らない人がいたなんてねぇ……」それで、と幽香は一息いれて「もう始めていいわよね?」


「え?」



再び弾幕が展開される。

強制イベントだと悟った龍二は刀を構えた。



「最近退屈だったのよ。良かったら相手してくれる?」


「……強制イベントなら、答えはハイしかないよなぁ……。」



そう嘆いた。

同時に彼は2つの球体を右と左に展開した。



「その弾幕ごっこ、受けてたちましょう。」



その答えに幽香は微笑む。



「貴方って勇者と書いてばかと読む人かしら?それともホントの実力者かしら……?」



幽香は傘を閉じて言う。


「1分間、生き残ったら誉めてあげるわ。」



龍二は幽香のその笑顔の奥から恐怖を感じた。

それほど強い相手だと知らずに挑んだ彼は、正真正銘愚か者なのかもしれない…


幽香は7つの弾を弧のように放つ。斜め右、斜め左、斜め右とそれを少しの間繰り返した。



(大丈夫だ、落ち着いて見極めればなんとか……)


「受けて立つだけあるわね。でも、まだお手並み拝見よ。」



今はなんとか余裕をもって避けている龍二。

その様子を見て幽香はニヤリと笑った。

そして龍二も弾を撃ち始める。

直球型の青い光の弾幕が幽香を狙う。が、それを楽に避けたのは言うまでもない。



(……ヤバイな。)



弾幕を交えていくうちに龍二は直感的に思う。

それは今の状況が不利だということじゃない。そもそもの根本的な部分で、まず“この闘いに乗ったこと”がやはり一番マズイことだったと今気づいたのだ。

龍二は東方projectを知らない。故に幻想郷の事も、ここに来る前までは全くの無知だった。

だから彼は風見幽香がどんな妖怪かを知らず、この弾幕ごっこに乗ってしまったのだ。

その事が一番の過ちだったと龍二は思う。



「せめて、私を楽しませるぐらいはしなさい?」



幽香は時計回りに弾を放つ。

上から見れば、それは2つの戦でできた渦に見えただろう。

龍二はその弾幕と同じ方向に動く。被弾しないように、幽香を狙いながら。



「もうすぐ一分ね……これが避けれたら、貴方凄いわよ?」



傘を龍二に向ける幽香。

何をするつもりかわからなかった龍二だが、傘の先端に集まる光を見て龍二は気づく。



(あの攻撃……魔理沙のアレに似ている!)



何度か修行という理由で魔理沙と手合わせをしたことがある龍二は、魔理沙の持っているあるスペルカードに似ていることに気づく。



「チェックメイトよ。」



瞬間、傘から1つの光線が流れ出てくる。


【恋符:マスタースパーク】


それによく似た弾幕が龍二を襲った。



「………それでも、逃げるのは得意みたいね。」



左を見た。

正確には左下。

その場ですぐに戦闘が始まったので地上での闘いだったのだが閃光が通った道のすぐ脇で龍二は倒れていた。



「……楽しませなさいって言ったじゃないですか。」



笑いながら龍二はそう言って起き上がる。

その答えには幽香も驚いた。

普通は逃げられたりあの閃光にのまれるはずだが、どうやらこの少年もよくいる外来者のような馬鹿みたいだ。



「そうね……じゃあ少しだけ本気出すわ。」



笑みを浮かべた幽香はそう言った。

それからも二人は弾幕を交えていく。



(にしても、花を使った弾幕か……)



避けながら龍二は思う。

昔、魔理沙が弾幕には華も必要と言っていたのを思い出す。

洒落というわけじゃないだろうがこれが風見幽香の「魅せ方」なのだろうか。



「ぼーっとしながら何を考えているのかしら?」



その言葉で龍二は前から高い密度で弾幕が来ていることに気がつく。



「うおっ!?」



と、彼はすぐに避けられる場所を探しそこへ潜り込んだ。



(危なかった……)



しかし攻撃は止まず、すぐに自分を中心に何かの空間ができているのに気づいた龍二はすぐに離れようとした。

しかし、それは間違い。



「馬鹿ね……その空間は弾幕が発生しない空間よ?」



幽香が説明する。

そのときには既に遅かった。

彼の周りを弾幕が囲む。

結局、勝負は早くついてしまった。



被弾した龍二は向日葵の上に落ちようとしていた。

しかし、幽香が傘で彼を引っかけてとりあえず道に落とした。



「親切心なんてちっともないな……」



龍二はうつ伏せで倒れながらそう言う。



「私は花が潰れたら可哀想だから貴方を拾ったのよ。」


「花>(大なり)俺ですか!?」


「当たり前じゃない。」



花に負けたというのと、その答えをさも常識かのように言う幽香によっていたたまれない感じがした龍二だが、そこで今はそれどころじゃないことを思い出す。



「そうだ、今霊夢と一緒に異変の元凶を探しているんですけどなにか知りません?」


「異変……?」幽香は首を傾げて「あぁ、そういえば最近になってもまだ暑いなぁとか思っていたけど、アレって異変だったのね。」



どうやら何も知らないらしい。

しかし、霊夢がここに元凶がいるかもしれないと言った。龍二は気づいてないがここは太陽の畑なので目的地はここで合っているはずのだが……



「あ、霊夢が来たわよ。」



幽香は呑気そうに言う。



「幽香!今回の異変アンタの仕業でしょ!」



地面に降りるなり霊夢はいきなり他人を悪者扱いした。

ちなみにモフ子こと絹江瑠衣は抱いたままだ。



「私じゃないわよ、失礼ね。」



少し不機嫌そうに幽香は答えた。



「あら、違うの?」


「なんだ、勘がはずれたみたいだな。」


「うるさいわね……たまに外れたって良いじゃない。」




結局開き直りかと、龍二は思ったが口にはしなかった。

その時、幽香がなにかを思い出したようだ。



「あ、でもそういえば……」


「なにかあるの?」


「前に人里でなんか演説っぽいのをしてたのを見たわね。確かその子、なんかポイ捨て云々言ってたわよ。」


「そういえば……」



霊夢にも、それは心当たりがある。



『今は外来人に多く見られるポイ捨てをやめるべきです!物を大切に扱いましょう!!』


「聞いたことあるのか?」



龍二の問いに霊夢は頷く。



「なんか外来人のポイ捨てをやめようとか言ってたわね……」


「そっちが怪しいって思わなかったのか?」


「全く思わなかったわ。」


「そうか、なら仕方がない。」


「つまり、今から人里に行くんだな……」



龍二はそう確認する。

一瞬、無表情かと思った霊夢だがよく見れば少し嫌そうな顔をしている。



「別になにも起きないわよ。」


「いや、そういうわけじゃないけどさ……まぁ、行くしかないよな。」



龍二は立ち上がり、そして宙に浮いた。



「では幽香さん。そういうことですので俺はこれで失礼します。」


「えぇ、また来なさい。……虐められに。」


「絶対来ない!!」



そう叫んで飛び去った龍二を幽香は見送った。



「さて、私は花の世話でもしようかしらね……」



幽香もそう呟き、その場から立ち去る。



「八雲彩、ねぇ……かわった“仮名”ね。」



彼女のその表情は笑みを浮かべていた。

なにかを知っているように……いや、彼女はきっとなにかを知っているのだろう。



「ところで、なんで私はまだ捕まったままなの?」



人里の途中の道でぶすくれるように瑠衣が聞いてきた。

その問いに答えたのは勿論霊夢である。



「なんでって、ここで逃がしたらアンタ逃げるじゃない。」


「当たり前じゃない。物扱いとか嫌だもん。」


「じゃあ尚更ね。」



と言って霊夢は更にギュウッと瑠衣を抱きしめた。



「きつい!きついわよ!……そこのアンタもこの巫女になにか言ってよ!」


「いや、俺まで巻き添えにしないでくださいよ。」



話しながら進むと、三人は平原についた。向こうを見ると人里はそこにあった。



「あそこに敵がいるのね……」


「いや、て言っても敵の根城とかじゃなくて単なる人里だろ?」


「気を引き締めていくわよ!」


(まるで聞いちゃいないよ人の話を……)



そう思い、ため息をつく龍二。

しかし、あそこに異変の首謀者がいるのは確かだ。

いったい何を目的にしてこんな異変を起こしたのか……

自分の言う言葉に耳を傾けなかったから?それともなにか違う理由が……?



「……まぁ、言ってみないとわからないよな。」



思い、そう呟いた。

三人は人里へ進む。

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