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人ではない者達

数日後、再び龍二は守矢神社に来る。



「…………」



スキマから覗いて、今回の主役がいないことを確認してから出てきた。

境内の道を真っ直ぐ歩く。



「諏訪子はいるか?」


「いるよ、貴方の後ろにね。」



振り向くと、確かに諏訪子がいた。



「話はなんだ?」


「んーちょっとね~まぁとりあえず中に入ろうよ。」



そう言いスタスタ歩いていく諏訪子に龍二もついていった。

本殿へ入ってまず二人は居間へ行く。諏訪子はいつも自分の座っている場所に座り、龍二に座れと言うようにトントンと床を叩いた。

そして龍二も近くへ座る。

思えば、居候していた時は龍二は諏訪子の近くに座っていた。机を四人で囲むように。



「龍二は……早苗のことどう思う?」


「は?」



思わずそう返してしまう。



「毎日……とまではいかないけど、会って話したりしたい?友達みたいに……」


(そういうことか……)



龍二はそう思い、考える。

ほんの数日しか一緒にいなかった。

けど、会って話をするのより友達みたいにというのが何故かひっかかった。



「まぁ……友人ではいたかったな。」



そして、彼はそう答える。

過去形になった理由はきっと早苗の記憶が消えてしまったからだろう。



「今は違うけど、京都で会ったときは暗くて虐められっ子っぽくてさ。その理由がもし見た目だけなら、いや、そうじゃなくても助けてやりたい。そう思ってはいたな……」


「ふーん……」


(ふーんって……)


「じゃあ早苗と友人になってほしいけど、龍二にはもう一つ頼みたいことがあるの。」



龍二は首を傾げる。



「頼みたいこととは……?」


「早苗と東條雪菜を助けてくれる……?」


「…………What's?」



早苗までならまだわかる。しかし何故東條雪菜まで助けなければならないのだろうか?



「敵対するやつを助けるってどういうことだ?倒せということか?」



そう問うと、諏訪子は首を横にふる。

だとすると、やはり本当に助けるという選択肢しかない。



「なんで雪菜まで……」


「それは……東條雪菜が」


「諏訪子ーー!!帰ったぞー!!」



外から神奈子の声がする。



「とりあえずこのことはまた今度にして。多分早苗も一緒に帰ってきたから。」



納得出来ない状態だったがおそらく早苗に言えない事情があるのだろう。

やむを得ず龍二は頷いた。



「あ、ちょっと待って。今、龍二と会ったら頭痛するんじゃ……」



諏訪子が呟く、すぐに龍二は答えた。



「しないだろ。よく考えてみたら昔はこんな髪じゃないし、顔もな。」


「ふーん……」


「お客さんですか?」



戸が開き、早苗と神奈子が現れる。



「早苗!!」


(なんでお前が驚くんだよ…)「えぇ、八雲屋敷に居候している者でして、名を八雲彩と言います。」


「へ?」


「やくもさい?」



諏訪子と神奈子はそう言った。

何その名前と聞くような顔で。



「彩、ちょっといいかしら?」


「うわぁあ!!」



突然現れた紫に、早苗と神奈子と諏訪子は驚く。



「紫姉どうかした?」


「ちょっと私用事あるから、これ。」



そう言ってビール瓶が入ったビニール袋を渡す。



「あ、わかった。用事って?」


「貴方のことを知ってる人たちに偽名を言いにいくのよ。」


「あぁ……成る程。」



そこは小声で話す紫。

龍二は納得した。

紫がそう提案したのは前日だった。

聞いたとき何故だと言いたいような顔を龍二はした。

その顔で察した紫は答える。



『いくら見た目が違っても貴方の名前で頭痛を起こす可能性があるわ。考えられないなら私が考えるけど。』


『まぁ仮名なんてなんでもいいけどさ………』



結果、仮名が決まったのは昨晩遅くだった。

彩という名は龍二の能力から来たらしい。

あらゆる弾幕を放つ能力というのはつまり弾幕を鮮やかに彩らせることも出来る。

見た目は青だが、青という名前にするには勿体無いと紫は思ったのだろう。



「――という意味で俺は八雲彩という名前なんです。」


「へぇ………」



神奈子と諏訪子は二人同時、そう言って頷く。

早苗は右手を上げた。



「あの、てことは昔は違う名前だったってことですよね?」


「えぇ。そうですね。」


「では、何故昔の名前を使わないんですか?」



その時、一瞬だけしまったと思ってしまった。

この時もし彼女にホントのことを伝えたら一体どうなるだろうか。


しかし、何が何でもホントのことを伝えるわけにはいかない。



「あまり……昔のことを覚えてなくて………そんな状況で昔の名をあまり名乗りたくないんです。」


「そうだったんですか……すいません。」



申し訳ない顔をする早苗を見て三人は心の中でのみ安心する。



「さ、そんなことより今ですよ今。とりあえずなにか手伝えることはありますか?」


「今は特にないね………なんならちょっと暇つぶしに神遊びでもする?」



諏訪子はそう言い立ち上がり部屋を出ようとする。

龍二も頷いて諏訪子について行った。



「なんか……彩さんって変わってる。」


「そうかい?あんな見た目はこの幻想郷ではそう珍しくはないと思うけどねぇ。」



神奈子がそう言うが、早苗は首を横に振った。



「そういうのじゃ……ないんです。」


「どういうこと?」


「うまくは言えないけど……なんか、何かを抱え込んでいるというか………」



そして早苗は外に出た龍二を見る。



「…………心に迷いがあるようで、昔の私と似ているような気がするんです。」


(昔の早苗………)


外を見る早苗を神奈子はじっと見つめていた。

昔の早苗と言えば、神奈子にとって一番残っているのは中学時代だった。

特に中学二年の夏辺りから、早苗は虐められ始めていた。

虐めは、最初は大抵“弄り”から始まる。それがエスカレートし、虐めに発達するのだ。

特に中学生というのはその弄りと虐めの境界線が把握出来ておらず知らぬ間に虐めに発達するのが多い。


早苗の場合もそうだった。

最初は髪の毛の色で弄られそれが虐めに繋がった。蛙の髪飾りをいつもつけていたから『キモガエル』という嫌なアダ名もつけられた。


虐められていた本人は始めは抵抗していたが集団で仕返しをされて最終的に何も抵抗しなかった、否、抵抗出来なかった。


「ここまで連れてきたということは、つまりさっきの話をするんだな?」



一方、諏訪子と龍二は神社の近くの湖に来ていた。



「うん、私もそのつもり。」


「なら、先ず東條雪菜が早苗の何なのか教えてくれ。ていうかまぁ、妹なんだろうけどさ。」



龍二はそう言うが、諏訪子は首を縦には振らない。



「?……じゃあ、姉か?」


「違う。」


「双子?」


「それも違う。」


「兄弟?」


「女の子だよ。」


「???」



当たらない予想ばかりで龍二は首を傾げた。



「じゃあ一体………いや、まさか。」



龍二はまず、二人の容姿を思い出す。


東條雪菜は東風谷早苗に似ている。瞳の色も髪の色も。強いていうなら見た目が雪菜の方が幼いということだ。


前に会ったのは数年前だが、なんとなく中学の頃の早苗に似ている。


既に双子ではないと諏訪子に言われている。


それでも、もし、雪菜が早苗と血が繋がっているなら。



「東條雪菜は………………。」



諏訪子は口にする。

それを聞いた龍二の目が大きく開いた。



「……それで、早苗と東條雪菜を助けろと?」



諏訪子に確認をとるように龍二は聞いた。

何故二人を引き離したのか。彼は一番それが知りたかった。

しかし、聞くことは出来ない。きっと、掘り出してはいけない過去なのだと、龍二は感じたのだ。



深くため息をつく龍二。同時にいたたまれない表情をする彼に諏訪子は告げた。



「東條雪菜は死なない。いや死ねないと言った方がいいかな……」


「そうだな……どちらかというと死亡より“消滅”といった方が正しいな。」



そして暫くの間、二人の間に沈黙が流れる。

その沈黙を破ったのは龍二でも諏訪子でもなかった。



「二人して何の話をしてるのかな?」


「!」



すぐに後ろを振り向く。

声の主は見上げた場所にいた。



「久しぶり龍二……会いたかったよ。」


「ああ、俺もたった今そう思っていたぜ、東條雪菜。」



ニコッと龍二を見てから諏訪子を睨む。



「で、なんでお前がいるの?まぁアイツがいたから薄々感ずいてはいたけどさ……」


「移住したのさ。信仰を集めるためにね。」


「へぇ……やっぱ神様は所詮構ってちゃんの存在か。」



鼻で笑い、そう言う雪菜。



「それはお前も同じだろ?」


「…随分と痛いことをつくね。そんなに僕の事が嫌い?」


「………俺にもわからない。」



龍二のその返答に雪菜は笑みを浮かべた。



「でも、なんでだろうな。アンタと闘う気がしない。」


「は?」



雪菜は思わずそう言う。

諏訪子も驚いているようだ。

助けろと言ったのは自分だがしかし今は敵なのだ。

彼は雪菜に対しての闘争心が全くない。


諏訪子はその言葉が解せなかった。



「あの……彩君?何を言っているのかな?」



目が点になり、汗をたらしながら諏訪子は言う。



「何って………そのままの意味だろ。」


「敵に対して戦う気がないという宣言は白旗上げたも同然でしょ!?」


「…うるさいな。第1、助けろなんて闘争心をなくす言葉を言ったのはアンタだろ?」


「まあそうだけどさ……」



言い合う二人を呆れた目で雪菜は見てため息をついた。



「で、結局君は何がしたいの?」


「あのクソ理事長がいるんじゃないのか?」


「クソ理事長?あぁ、あのお爺さんならいないよ。」


「いない?幻想郷にか?」


「ああ、そうだよ。僕ともう一人の仲間がここに来たのさ。」


「つまり、そいつに利用されてるのか。」



雪菜は眉間にシワを寄せて、諏訪子は呆れてもう何も言う気もしない。



「君は僕を何だと思ってるの?まさか僕が自分の意思で動いてないって?」


「ああ。誰かに救ってもらいたいって顔を今しているけど。」


「ふざけないでくれる!?僕はそんなつもり一切ない!第1なんでそう言い切れるんだよ!!」



吐き捨てるように、怒鳴り付けるように、雪菜は言う。

それに対する龍二はただ冷静に返答した。



「ただ、アンタからそういうのが伝わるんだよ。」



その答えに歯ぎしりをする雪菜を見ながら龍二は話し続ける。



「まぁ違うならそれまでだな。でもそう伝わって来たのは確かだ。でもホントは自分じゃどうしようもないからヒーローが自分を助けてくれるのを待ってるんじゃないか?」


「!」



龍二の言葉に瞳が大きく開く。

図星だったようだ。



「自分にはどうしようも出来ない、道をつくることが出来ないから誰かが導いてくれるのを待っているんじゃないのか?」


「……君に何がわかるんだ。」


「なにもわからない。そういうのは本人にしかわからないんだからな………教えてもらわない限りは。」



龍二は雪菜に少しずつ近寄る。



「あいつの言った通り僕は君の敵だ!それなのになんでそこまで僕に拘るんだ!倒すんじゃなかったの!?一体君は……君は僕のなんなんだよ!?」



近寄る龍二に怒鳴るように雪菜は言うが、龍二は何も答えずただ近寄るだけ。

雪菜の顔は真っ赤になり、今にも泣きそうだった。

雪菜をじっと見て、龍二は答えた。



「俺は、東條雪菜の仲間だ。」


「!」


「確かに倒すと言ったな……でも事情が事情だ。敵とか味方とかそんなのは関係ない。俺じゃ不満か?」


(そっか……結局彼はこういう人物なんだ……)



雪菜はこの時悟った。

結局、自分が彼にしたことは無駄だったのだと。

どんなに悪役に成りきろうが何をしようが、彼は自分に手をさしのべてしまうのだと。


例え“一部の記憶を抜いていても”だ。



「不満じゃない……でも、やっぱり今の君では無理だ。」



そう言い、立ち去ろうとする雪菜を止めたのは諏訪子だった。



「待ちなよ、このまま帰すと思う?」


「……今更なにさ。」


「龍二は神奈子に来るよう伝えてに行って。」



そう告げられた龍二は頷き、その場を去る。



一方守矢神社では、宴会の面子もだんだん増えていた。



「彩さんは、諏訪子様に勝てると思いますか?」



早苗は神奈子にそう聞く。

腕をくみ、考えたあと神奈子は答えた。



「無理ね、絶対。」


「えっ……」


「仮にも相手は神様。神遊びでも諏訪子は強いからねぇ……」


「神奈子はいるか!?」



襖を勢いよくあけ、龍二はそう叫ぶ。



「はいはいいるよ。あら、無傷ね……」



神奈子のみが近づきそう言う。

小声で龍二は伝えた。



「湖に来てくれ、今諏訪子と東條雪菜が話をしている。」


「!」


「呼んだのは諏訪子だが……来た方が良い。」


「わかったわ……でもあんたはお留守番よ。」



神奈子はそう言い、外へ出る。



「はぁ!?俺も行く。」


「いや、あんたは早苗がこっちに来ないよう見張ってて。」


「…………」


「お願い。」



その真意を龍二は既にわかっていた。

だから龍二は首を縦にふった。



「じゃあ行ってくるわ……」


「ああ。」



空に浮かび、湖の方へ向かう神奈子を龍二は見送った。



「神奈子様はどちらに……?」



後ろから早苗が聞く。



「ああ、諏訪子が俺じゃ物足りないから久しぶりに神奈子とやりたいって。で、俺は宴会の手伝いをしろと言われたんです。」


「へぇ。じゃあそろそろ宴会の机とシート出そうと思っていたので手伝ってください。」


「了解。」



そう答えながら、龍二は早苗の顔をじっと見る。



(成る程な……)


「どうかしました?」


「……いいえ、何でもないですよ。」


龍二を見送ったあと、諏訪子は雪菜に聞く。



「で、何で貴方は存在しているの?」


「存在しちゃいけないの?」



不機嫌な表情で雪菜は聞く。

諏訪子は首を横にふった。



「元から別の存在として私達は貴方を封印した。」


「とか言いつつ、ずっと封印するつもりだったんじゃないの?二度とアイツが暴れないように。」


「…………」


「ほら、答えられない。図星だからでしょ!?なんでお前達はそう身勝手なんだよ……!?」


「違う!頼むから聞いて!」


「お前達の言葉なんか聞きたくない!!!」



そう叫び、耳を両手でふさぐ雪菜。

彼女の周りを風がおおう。

そして、それとともに一人二人の会話に加わった。



「落ち着きな、別にあんたを封じるつもりはもうないわよ。」



丁度諏訪子の隣まで神奈子は寄る。



「あんたが外の世界で何をしたかは、天狗から聞いたわ。でも1つ気になるの……」


「……なに?」


「藤崎龍二が、何故あそこまで貴方に敵対していたかよ。」


「そんなの、敵だからに決まって――」


「ホントに彼は貴方を敵対していた?」


「!」



神奈子の発した言葉に雪菜は気付いた。

神奈子は気づいたのだ。

矛盾しているあることに……



「藤崎龍二は昔は貴方に対して敵対はしていなかった。けどある日を境にして彼は変わった……そう聞いたけど?」


「…………その通りだよ。それで?」


「あんた、彼に早苗と同じことをしたんじゃない?」



記憶喪失……

早苗は雪菜から受けた技で“藤崎龍二に関する記憶”を全て失った。


なら、龍二は何を失ったのか?


諏訪子もようやく気づく。

もし龍二が同じことをされたなら、なんの記憶をなくしたか。



「……東條雪菜に関する記憶を消した?」



諏訪子は答えを口にする。



「なんの目的でそんなことをしたんだい?」



神奈子はそう聞くが、なにも答えない。



「結局龍二は貴方を救おうとしてるんだよ?今更私達に言っても良いんじゃない?」



諏訪子はそう言う。



「………正確には記憶の略奪。相手の記憶を奪う“奇跡”。」


「じゃあやっぱり……」


「ホントは彼を二度と巻き込みたくなかった。記憶を奪ったのは僕の意志の行動。でも、彼はまた龍二を巻き込んだ…………」


「彼?」



諏訪子は首をかしげる。



「………鬼神。」


「………成る程ね。」



神奈子は理解した。

奴のことなら知らないものはそういない。

特に神奈子はその“鬼神”の知り合いだからだ。



「てことは奴は龍二を狙っているのね?」



神奈子の問いに雪菜は頷く。



「………言えるのはここまで。そろそろ来るよ、鬼神が。」


「!?」



風が舞う。

刹那、三人の間に一人の男性が現れた。



「………久しぶりじゃない。」



苦笑いをするかのような表情で神奈子はそう呟いた。

夕暮れ時の守矢神社。

宴会の準備も終わり、始まろうとしていたのだが……



「あの二人はまだですね……どこに行ってるのでしょうか?」


「そうだぜ、そうだぜ!」



文は呟き、魔理沙は遠くからそう言う。

龍二は早苗が湖に行かないよう見張っていたが、彼自信も気になって仕方がない。

外を見ると、二人の影が見えてきた。



「来たんじゃないか?」


「悪いわねぇ、待たせて!」



着地して神奈子がそう言う。



「遅かったですね……心配しましたよ?」


「そうだぜ、そうだぜ!」



早苗がまず駆け寄り、魔理沙は遠くからそう言う。



「重要な人物が席を外していたってどういうことよ。」


「そうだぜ、そうだぜ!」



腕を組みながら霊夢は言って魔理沙は遠くからそう言う。



「魔理沙さっきからそれしか言ってないか?」


「そうだぜ、そうだぜ!」



指摘した龍二に対して魔理沙は遠くからそう言う。



「早く宴会始めたいみたいだが……?」


「そうみたいね。」



神奈子は笑いながらそう言う。そして、今日の宴会は始まった 



「隣、良いかい?」



ただ、宴会の風景を見ていた龍二の隣に神奈子が座る?



「聞いておいて勝手に座るんだな……」


「彼女の仲間に会ったわ。」


「……そうか。」



特に驚きもせず、そう答えた。



「意外な反応ね。もう少し動揺したり驚愕したりすると思ったけど………」


「そう何度も動揺したり驚愕したりしない。いずれ会う存在だしな。」


(…………言うと思った。)



神奈子はそう思い、盃を差し出す。



「……何の真似だ?」


「無理矢理飲ませたりはしないよ。たまには良いでしょ?それに昔から同盟組んだり仲直りしたりするときは盃を交わすものよ。」


「杯事ってやつか。神様が半人半妖相手にやることかよ。」


「盃には絆という意味もあるのよ。絆に種族なんて関係ないわ。」



差し出された盃を龍二は手にとる。

既に何かが入っていた。



「これって水じゃないよな?」


「そんな縁起悪いことしないわよ。」



笑ってそう告げる神奈子。



「ただ、あの子を助ける為にはあの子の仲間、私の知り合いを倒さなきゃいけないからね………」


「知り合い?ていっても良い関係じゃないか………」



龍二の言葉に神奈子は頷く。



「そして、あの子をああしたのは私のせいでもあるからね……今回の事はあんただけじゃなくて私の闘いでもあるって感じよ。」


「成る程ね……」



諏訪子から事情を聞いた龍二はその言葉の意味に納得する。



「さ、呑みましょう。神と半人半妖としてじゃなく、友として……!」


「……ああ。」



笑みをうかべ、そう答えた。


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