表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/10

戦友の狼

「龍二、アンタしばらく青龍剣禁止ね。」


「………What's?」



思わずそう答えてしまった龍二に何故か紫はため息をつく。



「貴方だって、青龍剣が重いんでしょう?それにアレは両刃だから貴方達の弾幕ごっこでは使えないわよ。」


「あーまぁそうだけど……」



ついこの間決めた内容では確かに使えない。



「てことで駄目ね。」


「え、ちょ!」



青龍剣をそのままスキマに落とす紫。



「でもこれからどうすれば良いんだよ?」


「そうね……弾幕で剣を作るか新しい剣でも探しにいったらどうかしら?」


「うわっすげぇ他人事のように言いやがる……」


「事実、私にはあまり関係のないことですの。」



フフンと笑う紫。

龍二はため息をつく。



「そういえば、ちょっと妖怪の山に行きたいんだが……」


「何をしに?」


「椛に会いに。なんか渡す物があるとか言われたんだよ。」


「ふーん……あまり表には出ないようにね。いつ出てくるかわからないわよ。」


「今さらになって忠告かよ……わかってる。行ってきます。」



そう言い、開かれたスキマへと入っていく龍二を紫は見送った。



「……出てくるのは彼女とは限らないからよ。」



紫がそう言ったのには理由がある。それも龍二に関わることだからだ。



「もしかしたら、過去の闘いは全て繋がっているかもしれないわね……」



紫は独りそう呟いた。



「……ってここ、守矢神社。」



スキマから出てくるなり龍二はそう言う。



「あら、龍二じゃない。」



後ろから女性の声がしてビクッとなる龍二。

すぐに龍二は振り向いた。



「なんだいその大変な過ちをおかしたような顔……」


「良かった、神奈子か……」



そう言い、安心する龍二を見て神奈子は笑う。



「あんた、まさか私が早苗だと思った?」


「思いっきり思った。」



龍二も笑いながら答える。



「早苗は出掛けてるよ。迷いの竹林の診療所に。」


「そっか………」


「そんな顔しなくてもいいんじゃない?」


「は?」


「今スッゴい責任を背負ってる顔になってた。過ぎ去ったことを気にしたって意味ないわよ。あんたは今を生きてるんだから、気にするなら今を気にしなさい。」



笑いながら神奈子はそう言う。龍二もその笑顔につられて笑った。



「ああ……!有難う、神様みたいなこと言うんだな。」


「いや、神様だよっ!?」



ツッコミをいれるように神奈子は言った。

すると鳥居の方から声がする。



「神奈子殿ー!」


「アレって……」


「椛ね。ちょっと用があったのよ。」


「用?」


「あ、龍二殿も一緒ですか。」



近づいて椛は龍二に気付いた。龍二は頷いて答える。



「ああ、丁度お前のところへ行くところだった。」


「ああ、渡し物ですか。それならこれです。」



すると、椛は肩にかけていたものを龍二に渡す。

椛が渡したもの、それは龍二が昔使っていた陰陽刀だった。



「なんでこれを……」


「私がわざわざ龍二殿の家へ行ったんですよ。お姉さんに事情を話したら普通に渡してくれましたよ。」


「姉貴に話したのか。」



椛は頷く。



「そういえばお姉さんに『次帰って来るときは恋人連れてこい』と伝えてと言われました。」


(くっそ……自分が彼氏いるからって………!)



思わず顔がひきつる龍二を神奈子はじっと見ていた。



「……?どうかしたか?」



神奈子の目線に気づいた龍二はそう聞く。



「いや、あんた最初に会った時より明るくなったというか……なんか変わったわね。」


「まぁ……いろいろあったからな。」



適当に龍二は流した。



「昔のことはそれでもあまり語らないわね。」


「ああ。あまり語りたくないから……それに、語らなくても良いからな。」


「そういえば昔のことで話があります。ここ最近妖怪の山で例の妖達が再び見るようになりました。」



椛の報告に龍二の顔が真剣になる。



「まさか……“まだ生きてる”のか?」



龍二の問いに椛は頷く。



「話を割り込むようで悪いけどさ……あの連中を知ってるの?」


「知り合いってわけじゃないが連中そのものは知ってる。」



龍二は二人から離れ、刀を抜き何度か素振りをする。

その後再び鞘に刀を戻した。



「で、何処にいるんだ?」


「妖の……ですか?それなら今他の天狗がこちらに来るようにしてます。」


「計画通りってことね。」


「そうか……なら、今回は俺もやらせてくれ。」


「あんた……えらくやる気ね。この前とは大違いよ。」


「…あいつらは違うからな。」



龍二はそう言い、鳥居の先の方を見る。

何かが近づいてるのが、妖力で伝わってくる。



(雪菜がいる時点で気づいてはいた……また、一からやり直しだな。)



ふぅっと息を吐き、鞘から刀を抜いた。


「ちっ……こっちにもか!!」



神社につくなり妖怪はそう言って舌打ちをする。

来た妖怪はおよそ八人。



「まぁそうかっかすんなよ。じゃあ追っかけてた天狗さんは下がっててくれ。」


「しかし……」


「別に一人で闘うわけじゃないし。」


「つまり私が闘うんですね。」


「元から闘う予定だったんだろ?」


「まぁそうですね。」



椛はそう答え、大剣と盾を持って構えた。龍二も構える。

彼を見て妖怪は気づいた。



「お前……あの方が言っていた藤崎龍二じゃないのか?」


「確かに似てるな……そういえば外の世界では隣の天狗と一緒に闘ってたみたいだしな!」



妖怪達がそう言ってると龍二は答えた。



「御名答、俺は藤崎龍二だ。だとしたら?まさか俺を倒すと名誉が貰えるとかか?」


「ああ、また更に力を貰える!そうすれば俺達の“野望”が近づく!!」



妖怪の一人がそう答えたのを聞いて龍二は歯ぎしりをたてた。



「力か……まだそんなこと考えてたのがいたとはな……」


「力が欲しくないのか?いや既にそれ相応の力を持ってるから興味がわかないってか!?」



もう一人の妖怪がそう言ったと同時に龍二へ突っ込み、弾幕を放つ。

舌打ちをして、龍二はその弾幕を平然と避けた。



「端からそんなもの……」


「バカが、避けても追尾するものだぜ!!」


「興味ねえっ!!」



弾幕は一度通り過ぎて再び龍二を狙う。

しかしそれは龍二が叫んだと同時に放った弾によって全て相殺された。



「久しぶりに気に入らねぇやつと会ったな……」


「今回は殺さない程度なら大丈夫だと告げられてます。」



椛がそう言うと龍二はため息をつく。



「………わかった、こんな奴らとっとと片付けるか。」



「まずは二人同時に……」



そう呟き、刀を光らせる龍二はまず前方にいる二人の妖怪を睨んだ。



「まずは俺達かよ!」



妖怪二人は弾幕を放つ。

しかし龍二はそれら全てを刀で弾いてしまう。



「【彩符:百花繚乱】」



宣言後龍二はなぎ払うように刀を大きく振る。7色の弾幕が綺麗に流れてきた。



「おっと!!魅せてるだけで結局直球型じゃあ楽――」



その後その妖怪は倒れる。隣にいた妖怪はすぐに振り向くが先にやられてしまった。



「注意は一瞬そらせば良い。」



そう呟く椛を、背後から刀を持った妖怪が襲う。



「てめぇ!!」


「龍二殿。」


「言われなくても。」



間から龍二が入り込み、刀をおさえた。

すぐに椛が弾幕を放つが妖怪は後退し被弾はしなかった。



(流石に考えるか……)



龍二はそう思いながら妖怪達を見る。妖怪の人数はあと6人。さて、どう仕留めるかと考え彼は刀を鞘にしまった。



「闘いを放棄するんですか?」


「違う。ただこいつら相手に全部刀を使うのは勿体無いと考えただけだ。」



「それに、俺は攻撃は嫌いなんでね。支配する力とか、そんなものに興味がわくなんて馬鹿馬鹿しい。」



残り6人の妖怪達を見て龍二はそう言う。



「………そんなに支配という言葉が嫌いか?」


「ああ。ついでに言うと――」



自身の周りに2つの球体の形をした弾を浮かべる。



「――ついでに言うと、天国という言葉も嫌いだ。どこぞの糞理事長のせいでな。」


「勘づいたか……だが、俺達をなめるなよっ!!」



妖怪の一人がそう言い、弾幕を放つ。それを避けつつ龍二も球体から弾幕を放つ。



「余裕じゃねぇか。だが……」



そう言い懐から小刀を出し、それを龍二に刺そうとする。

しかし、横から来た弾に弾かれてしまい、挙げ句のはて反対側から来た弾に頬を殴られる。

勢いで地面に叩きつけられたその妖怪は気絶していた。



「この前新しい規制を考えてたんだから、出来ればそれに従って貰いたいな……」


「ああ、文々。新聞ってやつに書いてあったやつか。確かにそれも面白いな。」



奥にいた妖怪はヘラヘラ笑いながら弾幕と似たような剣を具現化する。



「意外とマナーを守る犯罪者もいるものだな……」


「必ずしも俺達が間違っていて必ずしもお前達が合ってるとは限らないぜ。」


「言われなくても、それくらいわかってる。」



そう言って互いに弾幕を張り始めた一方で、椛も一体倒していた。

というより、その妖怪が突っ込んで来たときに椛の盾に顔面から衝突して倒れただけだが。



「こんな変わった人もいるものなんですね……」



そう言いため息をつく椛に太刀が降り下ろされる。

寸前で気づき、間一髪避けた。



「女性相手にそんなことするなんて、貴方に心がないんですか?」


「レディファーストなんて考える妖怪なんていねぇよ。」



そう言いながら太刀でなぎ払うように、それすらも椛は軽く避けた。

大剣の峰を当てるように降り下ろす。が、太刀で押さえられてしまった。



「女なのにそこまで力があるとはな……」


「あまり見くびらない方が良いですよ……!」



ごり押しする椛。

その椛を降り払い、妖怪は椛の方へ弾を放つ。

しかし椛は上手く受け身をとりその弾を避けた。

そして、椛は前進して左手に持つ盾で妖怪を殴る。



「っ!!」



刹那、椛は弾幕を放った。



「王手です。無理矢理かもしれませんが……」



「さて、残り1人ですね……」



そう言い、先程の刀の妖怪を見る。妖怪もやっと出番かと刀を構えた。

その後すぐに二人は空中に浮かび、弾を放ち始める。



「お前もあの青髪の人間と似たような考えか?」


「そうですね……強いて言えば力を得ても悪用だけは絶対に避けます。」


「随分と善良な心が発達してるようで。」



弾幕を交えながら二人は会話も交える。



「私はただ、天狗としての使命を全うするだけです。」


「その使命を放り投げて外の世界で遊んでたのは誰だ?」


「遊んでたとは心外ですね……アレでも大変だったんですよ?まぁ私より彼の方が大変だったでしょうが……」



そう言い、龍二を見る椛。そこには二人の相手と弾幕を交えている龍二がいた。



「まぁ確かに、アイツは中学生で多くを知りすぎたかもな……“第二の天国”、“人が仕向けた妖怪の戦争”、それらを知っても尚、彼は歩みを止めなかった。」



2つの単語が出てきたとき、再び椛はその妖怪を見た。



「………何を知ってる?」


「藤崎龍二の真実。簡単に言えばそうなるだろうな……」


「今いる彼が虚構だと?」


「そうは言ってないさ。ただ少なくとも、真実の彼ではないだろう…………?今は失った記憶を思い出すまで待つしかないさ。」


「記憶?一体なんのことですか?」



男はニィっとにやけ、



「すぐにわかる……それまで待つんだな。」



そう言い妖怪は椛へ突っ込む、かと思いきや妖怪は手前で下に落ちて、何処かへ逃げてしまった。

椛はすぐに下を見るが、その妖怪はもういない。



(あの妖怪……何者?)



椛はそう考えつつ、地面へ足をつく。

向こうを見ると龍二が1人で立っていた。

先程の妖怪は倒したらしい。



(龍二殿の真実……私がいないところで、彼は何を知ったのだろうか?)



椛は心の中でそう問う。

しかしすぐに答えを見つけるつもりは、彼女にはなかった。

しかしなるべく早く知った方が良いのか、椛はそうも考えた。



「終わったか?」



視線に気づいたのか、龍二は振り向いてそう聞いた。

椛は何も語らず頷いただけ。



「ただ、1人逃してしまいましたが……」


「そうか。まぁ目当てがあるのは部下じゃなくて首謀者だけどな。」


「…………」



椛は黙っていたが、それでも考えていたのだろう。黙りながら訴えていたのだろう。

龍二は直感で答えた。



「この件に関してだけは俺は絶対に終わらせなきゃいけない。ここまで来たかには、あの理事長や雪菜のことは俺が倒す。」



その言葉に、椛は複数違和感を感じた。



「………そうですね、でも私も手伝いますよ。」



でもそれを問いはしなかった。

記憶が無いのでは、聞いても意味がないと考えたから。




「終わったみたいね。」



神社の建物の方から神奈子が来る。



「で、アンタはなんでそんなに不機嫌な顔なの?」


「俺はいつも通りだが?」


「あらそう……」



とは言っても確かにどこか不機嫌な感じがするのは確かだ。



「あ~そういえば今度暇かしら?」


「用事は特にないな……なんでだ?」


「早苗の退院祝いをやりたいんだけど」


「断る」


「即答ね……」



神奈子はそう言い溜め息をついた。



「そんなに嫌ですか?」


「あまり会いたいとは思わないな……」


「でも、諏訪子が話したいことがあるって言ってたし……」


「えー……」



口を三角にして言う。



「本人に直接会う必要はないしとりあえず来るだけ来なさいよ……」


「………わかったよ。どちらにせよ紫姉に強制連行とかされる可能性があるし。」


「じゃあ早苗が退院したらすぐに宴を開くからその時は連絡するわ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ