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To the desire


外の世界は12月10日。

そろそろ街の雰囲気がクリスマスムードになり始めていた。



「変わらないな……この世界も。」



井の頭公園を歩きながら龍二は呟いた。服装は外の世界の安い服だった。



「こうして見ると人里と変わらないな……いや、こっちの方が不景気だし、治安が悪いか……」


「そうか?あまり変わらないと思うぜ。」



龍二の隣を歩く魔理沙がそう言った。



「俺からしたら、まだ向こうの方が安全だな……というか、お前ホントに来たんだな。」


「来なきゃお前が連れ戻されていたぜ!」



そうだな、と龍二は答えた。


現時刻が午前10時04分。

ついさっきまで幻想郷にいたので、時間の進みがもしも同じなら約1時間前の事。



「もしも心配なら、誰かを監視役としてつければ良い。」



龍二が藍に説得をしていた時。



「まぁそれなら、多分……しかし一体誰を連れていくんだ?橙は連れていかせたくないんだが……」


「それなら、私に任せな!」



盗み聞きをしていたのかそんな声が部屋に響く。

襖が思いきり開き、そこには味噌を口の周りにつけた魔理沙がいた。



「……何してるんだ?」



呆れた顔で聞く藍。



「やっぱりここの味噌漬けは美味いな!」


「勝手に食べたな……」



藍はため息をついて、龍二は失笑していた。



「いやぁつい食べたくなってな!」


「まったく……それで【任せろ】とは、どういう意味だ?」


「そのままの意味さ。コイツの付き添いは私に任せてくれ。」



別に構わない、と思った藍だが口に出す前にやめた。



「ふむ……急にどうしたんだ?いや、お前の事だから興味本意なんだろうが……」


「まぁそうなんところだな……それに、たまには私が同伴でも良いだろ?いつも霊夢と一緒だが私だってやれば役に立つぜ。」



そう言って魔理沙はニッと笑った。龍二はそうだなと、魔理沙を肯定した。



「……わかった。それで良いだろう。」



藍も、魔理沙が同伴ということで良いと思った。

そして現在、二人は龍二の通っていた学校の門にいた。

今日は用事があってここにいたらしい。

来客用窓口に二人は入る。




「第一学年の藤崎龍二です。瓜野シロはどこにいますか?」



生徒手帳を渡し、受付の事務員に聞く龍二。



「し、少々お待ちください……」


「つか、お前なんだよその見た目……右目だけ隠してるって変装かなんかか?」



魔理沙の言葉を五月蝿いと一蹴してすぐ、受付の事務員が龍二を呼んだ。



「今は会議室にいるようです。ここのところ問題が増えてきたので、その会議かと……」


「……わかりました。有難うございます。」



そう言って龍二は会議室に向かった。魔理沙も後を追う。



「なぁ、なぁ。問題ってなんだろうな?」


「なんでそんなワクワクしてるんだ……幻想郷で言う異変みたいなものだと思うが。あるいは妖怪の治安に関してか。」



龍二のいた外の世界は妖怪が住んでいる事が普通になりつつある。

但し、中には犯罪を犯す妖怪もいて、それらを取締る為に編成された組織がある。



「うちの学校はそういった組織に入る為の養成所みたいな場所だ。」


「へぇー……で、龍二はなんで入ったんだ?」



魔理沙が聞いた時、ピタッと龍二が歩みをとめた。



「ん?どうかしたのか?」


「あ、いや……なんでもない。会議室は奥の部屋だな。」



会議室の扉を開けようとした龍二だが、その手を止める。



「あー……魔理沙。」


「やっぱり何かあるのか?」


「いや、大したことじゃないはずだが……まぁとりあえず、先に言っておく。この先にいる銀髪の女の子にはなるべく気をつけろ。」


「お、おう……」



魔理沙はよくわからなかったがとりあえず、頷いた。

そして、扉が開かれる。



「瓜野シロはいるか?」



扉を開けて直後、そう聞いた。

シロは近い場所にいた。



「龍二ーーーー!!」



刹那、龍二の腹部に何かが激突した。

魔理沙は確認しようとしたが目が追いつかず、先に龍二が廊下へ吹き飛ばされた。



「ガフッ………!」



その反応はまるで、弾幕に被弾したのと似ていた。

龍二に激突したのは銀髪の魔理沙と同じくらいの見た目の少女だった。



「うおぉぉぉ久しぶりじゃないか!会いたかったよ畜生!」


「そ、そぅか……とりあえず離れてくれ。」


「誰かと思えば、君か……今会議中なんだが?」



中にいた教員の一人がそう告げる。対して、龍二は挑発するように答えた。



「……どうせあんた達じゃあまともな議論にならないだろ。」


「なっ……!」


「てことで、ちっとこの人借りますよ~」


「さっそうと逃げてきたが……良かったのか?」



その場を去り、食堂についた三人。

龍二は魔理沙に答えた。



「まぁなんとかなるだろ。それに、こっちだってのんびりする暇はない……はず。」


「その様子だと、雪菜ちゃんに関してかな?」



話に割り込むシロ。



「途中からずっとそうやって彼女の事を警戒してたけど……」


「そうだな。でも、今はその話をしに来たわけじゃない。」


「あぁ、それも藍さんから聞いたよ。源川繰希に関してか……急にどうしたの?」


「……親父なら、今の状況をどうしていただろうと思ってさ……」


「…………それなら、好きにやってたと思うよ。彼はずっとそうしてきたのだから。」


「なぁなぁ、ちょっといいか?」



魔理沙はシロに聞く。



「私はその源川繰希ってやつを知らないんだが……どんな人間だったんだ?」


「おぉ……よく見たらスッゴい可愛い!なに、龍二もしかしてこの子彼女!?」


「いや、人の話をだな……それと悪いが、私はコイツを異性として意識した事はないぜ。」



魔理沙の言葉に龍二は特に同様を見せなかった。少なくとも表向きは。



「まぁ見た目が見た目だからねぇ……それで、繰希に関してだっけ?」



そうだなぁと考えた後、まず最初に一言で例えてみた。



「“努力家”かなぁ……自分で妖術とか魔術とかそういった異能を調べていった人だし……」



シロが初めて会った時の源川繰希という少年は、ごく普通の少年だった。

それから、偶然シロと出会い妖怪の存在を知った。



「まぁ、それからは妖怪と関わりたがってたね。妖怪と話をするのが好きで……繰希は妖怪を、私達の事を優しくしてくれた。」


「へぇ……この世界にもいるんだな。妖怪と仲良くしてる人間が。そいつは今、なにしてるんだ?」



魔理沙はその質問がまずかったと、質問をした直後に気づく。

シロの表情が変わるのがよくわかった。きっとあまり良い状態ではないと予想出来た。



「死んだよ。」



答えたのは龍二だった。

座ってる位置から、今の龍二の表情は髪に隠れて見えない。しかし、声から彼の気持ちはなんとなくだが察した。



「俺の育て父親のあの人は、全く理解してなかった俺を守る為に死んだ。」


「………………」


「その時は何も知らなかった。今よりもずっと、この世界の事を知らなかった。」


「……無粋かもしれないが、龍二を狙った奴らが誰かはわからないのか?」



先程からずっと黙ったままのシロ。この質問も龍二が答えた。



「おそらく、だが……雪菜が今一緒にいる連中という可能性もある。」



答えた後、龍二はシロに聞く。



「さて、ついでに聞くが、東條雪菜は俺のなんだった?」


「……それを教えるわけにはいかない。私は教えたくない。」


「教えたくない……か。」



拳をつくった龍二の顔は、ひきつった笑顔だった。

魔理沙はシロに説得する。



「悪いが、そこをなんとか話してくれないか?多分、引き下がるつもりはないぜ。」


「……貴女達が彼女を知る上でメリットはあるの?」


「……………」


「多分これを知ったら、まず龍二は落ち着いていられなくなるよ。そしてまた、自ら危険な道を選ぶ……」



魔理沙の目を見つめながら、シロは話を続ける。



「少なくとも、貴女が知る義務はない。知ってしまったらどうなるかわからないわ。私はこれ以上、見知らぬ他人も、家族も失いたくない。」



今度は龍二に問いかける。



「どうして危険な道を選ぶの?貴方達はいつも危険な道を選ぶ……どうして?」


「……決まってるだろ。俺がそうしたいんだ。」


「!」


「そうだな。こんな時どうするかは、自分自身が決めなきゃいけない。親父が教えてくれた最も大切な事を、俺は忘れていた。」



自身の脳裏に繰希との別れの時の会話が横切る。



「俺は操り人形じゃないんだ……だから、俺が決めなきゃいけないのか。」


「何か迷っていると思ってたら、そんな事かよ。」



そう言って笑う魔理沙につられて龍二も笑った。



「シロ……だったか?悪いが私も引くつもりはない。」



魔理沙もシロに伝える。



「なんかさ……放っておけないんだよ。私の友人にコイツに似たやつがいてさ。天才で、いつもは普通なのに、何を考えているかわからなくて、勝手に独りで無茶をするやつが。」



魔理沙が話してる間、シロは黙って聞いていた。



「ホントに似ていてさ、それに私は友人が困ってるなら助けてやりたい。危険だろうがなんだろうが、な。こう見えて私は生きるのが上手いからな。」



ニッと笑う。


シロはふぅっと息をはいた。



「そうね……ホントに下がる気はないのね。」


「安心しろ。俺も死なないし、もう誰かを失わない。そんなことは絶対に。」


「わかった。話そう……雪菜について。」



「雪菜は貴方と似たような境遇だった……」



龍二を見つめてシロは話し始める。



「貴方は雪菜に自然と惹かれていて、雪菜も同じだった。貴方は彼女を大事に思っていた。」


「…………」


「それは雪菜も同じ。そんな彼女が貴方から離れていったのには勿論理由があるわ。」



シロが説明をしている途中、雪菜の言葉が何度も過る。



「貴方をこれ以上、危険な運命にあわせたくないの。それは私も同じ。例え、貴方がそのような運命であるべきであっても…………」



シロがそう告げてから沈黙が流れる。

突然、一人の男が歩いてきて、龍二に話しかけてきた。



「静かになってる所悪いが、ちょっと良いか?」



龍二は振り向こうとしたが、出来なかった。

それよりもまず体が吹っ飛んだからだ。



「ぐっ……」



壁にぶつかったが、すぐに起き上がり男の方を向く。

魔理沙もシロも既に男から離れ、身構えていた。



「よう、久しぶりだな……百華繚乱。」


「いつぞやの……か。」



そこにいたのは前に守矢神社で椛が相手していた男だった。



「どんな許可をもってここに来れたのかしら?」


「いやいや、許可も何も、今の状態でなら普通に世界を跨ぐ事は出来るぞ?」



「………………」



龍二は男を睨み、警戒する。

男は右手に両刃の刀を持っていた。



「……生憎、理由なしに戦う気分じゃないんだが。」


「随分と丸くなったなぁ百華繚乱。」


「…………アンタ、そこまで挑発して何が目的だ?」


「目的も何も、俺は見定めに来たんだよ、百華繚乱。」


「………………」



龍二の表情を気にせずに男は話を続ける。



「はたしてお前が東條雪菜を救う事が出来るかどうか……その覚悟があるかどうか、な。百華繚乱と呼ばれたただの神の欠片が出来るかどうかな。」



聞いた龍二は小さく息を吐き、そしてすぐに男の前まで走り寄った。

次に彼が見せた行動は、相手に掴みかかり、足をかけて倒す事だったが、それはいとも容易くかわされた。



「おーおー……随分とご乱心だな。」


「わかってるくせに、よくそんなのんびりとしてられるな!鬼神!!」



龍二は叫び、再び相手へ寄る。しかし次は両手に光を凝縮させた刀を作ってから。



「そういやお前は知ってるのか?その能力の意味を。」



龍二の猛攻を避けながら男は聞く。



「天命みたいなものだと思ってるのか?もしくは、呪いとでも思うか?まぁどちらも正解に近いだろうが……」


「今更何が言いたい!?」



攻撃をやめ、一度距離を離してから龍二は聞いた。



「寧ろ、それは俺の台詞……いや、俺の場合はこうか。」



男は龍二の目を見ながら、龍二自身に聞いた。



「今更何を聞きたいんだ?」


「源川繰希や東條雪菜の事ばかり聞いているが、お前自身の事は聞かないのか?気にならないのか?そんなわけないよなぁ」



今までとは違う。先程の挑発とは違う話し方、雰囲気。その男が真面目に話し出したのは確かだった。



「なんで聞かない?ほら、聞いてみろよ。質問してみろよ。藤崎龍二とは一体なんなのかをよ。」



再び龍二は攻撃を始める。

しかし、今度は龍二の攻撃をかわしてから、龍二を捕まえ、押し倒した。



「なんなら俺が教えてやってもいいんだがな……藤崎龍二の出生について。お前がどんな理由で生まれたのか。源川繰希は何を思ってお前を拾ったのか……いや、正確には盗んだんだけどな。」



1人喋り続ける男。

龍二は男から逃れようとするも力では勝てない。元々龍二はあまり力はない方だが……



「……お前って、見た目は普通に可愛い女の子だよなぁ。」



男の言葉で龍二の表情が無表情になり、力がどんどん強くなる。しかし、体に乗っている男から逃れる事は出来ない。



「髪型とかもう少し変えてみたらどうだ?デコ見せたりとか……そこの魔法使いはどう思う?」


「あー……確かに、龍二って可愛い顔してるよなぁ。」


「助けろよ!なんで呑気に話してるんだよそんな空気じゃなかっただろ!」


「コロコロ態度を変えるね……一体何が目的?」



男の背後からシロは聞く。



「目的はいつだって同じだ。ゲームを楽しくしたい。」


「ゲーム?」



男は頷く。



「力を得て、目的を無くした俺が生きる意味があるとするなら、それは戦い続ける事だけだ。流石にアイツを敵に回したくはなかったし、だから今までは龍の側にいた。その方がより強い相手と戦えると思ったからな。」


「じゃあ今はなんなんだ?その龍っていうのに逆らうのか………?」



男は頷いた。



「その方が面白い。それにこのままだと流石に罪悪感がわく結果になりそうだからな。」



何をするつもりなのか、三人全員がそんな疑問を持つ事を男は予想していたのか、聞かれる前に答えた。



「あいつは幻想郷を……自分の作った世界を壊そうと思っている。」


「……自分の作ったもの?てことはさっきからお前が言っている龍って……あの龍か?」



魔理沙は恐る恐る聞いた。

男は頷いたのを見た魔理沙は驚いた。



「一体なんの理由があってだ……?」


「さあな……一応理由は考えられるが、それでも今は壊すつもりはないだろう。いや、出来ないだろうな。」


「???」



黙って話を聞いている龍二に男は告げる。



「お前が鍵なんだよ。可愛い藤崎龍二君よ。」


「……寒気がする、やめろ。あといい加減離せ。」



嫌そうな顔を見た男は笑顔で断った。

龍二は舌打ちをするが、男は気にせず話を続ける。



「まぁ実際お前が女っぽいのは事実だろう。いや、お前は女なんだよ。」


「……いや、俺は男だ。」


「いいや、お前は女だ。例え、ついてるとしても、お前は女なんだよ。」



言い聞かせられる感覚が、とても嫌な感じだった。



「藤崎龍二……か。随分とそれらしい名前を貰ったな。だが俺はお前の正体を知っている。多分後ろの白狐は話さない真実を教えてやっても良い。」


「……ホントに何が目的なんだよ。」


「目的は一つだけ。まぁお前が知りたくなければ構わないんだが。」



そこで男は龍二から離れた。

龍二は起き上がり、男を見る。



「わかりやすい奴だよなお前……自分の真実を知りたくないのがわかる。」


「……そんなことない。俺は」


「まだ嘘をつくのか。」



言葉を遮られ、それ以上しゃべれなくなる。



「だったらなんで先に聞かなかった?遠回しに他人の事ばかり聞いて、なんとなく聞くつもりだったか?無駄な努力だな……お前の話はそんな軽いものじゃない。」


「……やっぱりコイツも、何か訳ありなんだな?」



魔理沙が聞いた。

男は答える。



「ああ……訳アリだよ。君には関係ないだろうが。」


「いや、関係なくはない。私の大事な友達だ。例えこいつがそう思ってなくても……」


「……そうか。まぁ俺は構わないけど。」



そう呟いてから男はシロの方を向く。



「いいよな?」


「今更な確認ね……」



呟き、ため息をつくシロ。



「そうね……もう避けられないのかしら………ね。」


「寧ろよくここまで黙っていたな……さて、本人はどうなんだ?」



聞かれた龍二は俯き、考える。

確認されるくらい、危険な情報なのだろうか……いや、どのような事でも、もう何も驚かない自信がある。



「…聞かせてくれ……。俺は何者なんだ?」


「よく答えた。じゃあまずは結論を話そう。藤崎龍二は、幻想郷の最高神である龍が作った分身だ。それも、彼女が愛した男に似せるように育てるはずだった……云わば、お前は操り人形になる予定だったんだよ。」


「!」



流石に少し驚く龍二。



「お前の元である藤崎芳春は、青龍と呼ばれる青年だった。彼は突然行方不明になるんだが……まぁとにかく、いろいろあったんだよ。」


「随分と大事な所をはしょったな……」


「いや、藤崎芳春に関してはあまり語る必要がないからな。」



魔理沙にそう否定する男は再び話を続ける。



「では何故お前は操り人形にならなかったのか……そこで、源川繰希が出てくるんだよ。」



源川繰希は妖怪や他の種族との交流を好み、共存を望む人間だった。

彼が龍の我儘に振り回された被害者の1人、というのが理由の1つなのだろう。



先の出来事を知った源川繰希はこれから起きる事も大体予想出来た。

だからこそ源川繰希は藤崎龍二を盗んだ。結果、更に悪い結末に至ったが……



「それからは源川繰希はお前を人間のように育てたな……いや、お前は半分人間か。」


「…………」


「確かに龍二は半人半妖だよな。操り人形なんかじゃない。」



魔理沙もそう言った。しかし龍二は浮かない顔をする。



「……俺を生まれた意味は……いや、創られた意味はそんなものだったのか。」


「龍二……?」



心配そうに呼びかけるシロ。

しかし、龍二は独り言をどんどん呟いていく。



「俺の存在する理由は……俺の正体は……そんなだったのか。あーあ……」


「……そういう話じゃないだろ?お前馬鹿だな。」



男は龍二に告げる。



「さっきそこの魔法使いも言っただろう。お前は操り人形じゃない。創られた理由がどうであれ、お前はお前なんだよ。」



もし本当に操り人形なら、藤崎龍二は迷う事なく従っていただろう。今、男に目的を聞かされた後、迷わず三人を襲いに来ただろう。


しかし龍二には感情があった。



「どうするかはお前次第だ。自分で考えて良い。いや、考えなくてはいけない。これから起こる悲劇も……絶対にな。」


「悲劇?」


「多分だが、次に狙われるのは東條雪菜だ。」


「ちょ、ちょっと待て。展開が早すぎる!一体どういう事なんだぜ?」


「今から俺が話すのは、あくまでも予想だ。だからあまり真に受けなくて良いが……」



そして男は話しはじめた。



「多分アイツは藤崎龍二のメンタルを先に攻める。そして正気じゃない、鬱な方向に感情を持っていってから藤崎龍二を狙いに来るだろう。」



そして奪回した後、藤崎龍二の力とあわせて幻想郷を滅ぼす。



「精神的に……確かに、落ち込んでいる時の方が洗脳とか出来そうだな。」


「なんで雪菜なんだ?」



聞いた龍二だが、すぐに自分で解決する。



「身近にいて、尚且つ藤崎龍二の精神を揺るがす事が出来る存在……一番やりやすいのは東條雪菜だろう。多分しょっちゅう呼び掛けに向かわせたのもそれが理由だろうな。さて、一体どうやって彼女を助けるかだが……俺には器となる為のものを創る力はない。そして式神のように繋げる術も知らない。知っているとしたら……」



その方法は少し無茶で、先程の台詞を撤回する方法。



「身体の中の精神を換える術。」


「それって……」


「元の精神は消滅する。そして能力もそれ然り、だ。」



しかし、それには犠牲となる何かが必要。

新たに個体を創る力は、先程も言っていた通り無い。



「……なぁ、力とかも消滅するんだったら俺の身体を使えば」



言った直後、龍二の身体が再び吹き飛ぶ。

シロの足が良い当たりをした。


吹き飛ばされた後、床で仰向けになる。



「それ以上……それ以上言葉を喋るな!!」



瓜野シロは基本的に怒ることはない。その瓜野シロが今は声を荒げる。そのあとは小さく、堪えて告げる。



「お願いだから……他の選択を……お願い……」


「なっ……急になんだよ……」


「説明した俺が言うのも何だがお前が悪い。」



男は龍二の耳元で小さく告げる。



「アイツは既に、同じ相手の手によって1人失っている……」


「1人……?」



疑問に思ったが、すぐに龍二は気がつく。



「お前は短時間で忘れたのか。アイツは源川繰希っていう大切な人間を失っているんだよ。源川繰希だけじゃない。龍の我儘は酷いときは酷かったからな……アイツの周りにいるのでいなくなった者は多い。」


「でも……っ!?」



突然龍二の表情が変わる。



「龍二!?」



大声で呼ぶ魔理沙。

しかし龍二には届かない。



(なんだ…目眩が………頭が痛い!なにか、違和感が)



考えるよりも先に、龍二は気を失う。



『中学生の頃、初めて出会「ここで何をしてるんだ?」菜は人間への憎悪が元の思「僕は東條雪菜。」し、その時は自「大丈夫……大丈夫だから。」野に対し友好的に「……有難う。」女はいつも助けられ「またな、東條。」「……雪菜って呼んで。僕はそっちの方が良いな。」って彼はヒーローであった。そしてそ「雪菜は人間が嫌い……なんだっけ……」きで仕「でも、龍二に会ってから……人間も良い奴がいるってわかった。」。とこ「うまくアイツと仲良くなってるようだな。」印から解放させた龍は、「どうしてもですか?どうしても……彼を」的だった。そ「ゴメン……」「どうして……なんでだよ!?」るように「僕は、貴方の敵なの!貴方を利用するの!」やってく「そんなの、しったことか!」でも東條を助け「絶対だ!俺は絶対助ける!」が好きだっ「有難う……でも、駄目なんだ……」動が嬉しく、そして悲し「ほら、アイツも倒した。……帰ろう。」終的にとった行「…ロストメモリー」関する記憶を消す】「龍二が好きだった。だから……もう良いんだ」打ちで「どうしてもなのか?」記憶を奪わ「…俺だって雪菜が………なんで忘れなきゃ………」けた言葉が東條の胸「ゴメン……ホントにゴメンね……」った。次にが彼女を見かけ「やぁ。君を連れ戻しに来たよ。」は初対面だった。東條は彼にわざと「またあいつらか!」敵対する様子を見せる「そう……それで良いんだよ。」しくもなり、いつしか本音を混「僕は君の事が好きなんだ。だから君の事なら助けてあげる。」かなってしまいそうだったか「悪いが、悪党には興味ないね。」倒し「……それで良いさ。それこそ僕の知っているヒーロー……」び駒として戦う事を命じら「あらら、相変わらず僕の事は嫌い?」り気ではなかった。最初は敵対する藤崎だったが、自分に似てい「誰かが導いてくれるのを待っているんじゃないのか?」おうと決心する。東條にとってそれは嬉し「あいつの言った通り僕は君の敵だ!それなのになんでそこまで僕に拘るんだ!倒すんじゃなかったの!?一体君は……君は僕のなんなんだよ!?」東條の答えに藤崎は答えた。「俺は、東條雪菜の仲間だ。俺じゃ不満か?」(そっか……結局彼はこういう人物なんだ……)東條はこの時、これが藤崎龍二なのだと、悟った。



「!」



龍二が次に目が覚めた場所は自室だった。



(今のは……過去の記憶?)



彼は自分の奪われた記憶をいつの間にか手に入れていた。



「起きた。」



横でシロが座ってそう言った。



「ゴメン……取り乱して。痛くない?」


「ん?あぁ、大丈夫。」



笑いながら龍二はそう答えた。

少しの間、沈黙が流れる。そんな中で龍二は考えた。



「……そういえば、尻尾はないのか?」


「尻尾?あぁ、今もちょっと格納してるだけ。」



そう言ってシロは尻尾を出した。どこにしまっていたのかは謎だが。

龍二はその尻尾から抱きつく。



「どうしたのよ急に……」


「久しぶりだなぁって。思っただけ。」



それからまた二人は黙ってしまう。



「………………俺は今まで、自分が後悔するだろうって選択は今までとらないようにしてたんだ。」


「うん。」


「だから今まで戦い続けたんだと思う。」


「うん。」


「でも、ここで選択を変えたら全てが台無しになるんだ。」


「……うん。」


「そんなことはしたくない。例え自分がどうにかなってしまっても、大切な人がいなくなるのが嫌なんだ。」


「………ん……」


「多分、これも親父譲りでさ。おふくろにはホント申し訳ないけど」


「……………………」


「雪菜を助けに行きたい。例えその先が自分が消えてしまう運命だとしても、俺は助けに行きたいんだ。」


「……………………そっか。」



振り絞った声を放つシロ。

身体が少しふるえていた。



「……行ってきなさい。後の事は私達に任せて。アンタは今やることをやってきなさい。」


「……有難う。」



龍二は準備をして、玄関に立った。ドアノブに手をかざして振り向く。



「いってきます。」



返事は聞かなかった。

廊下には魔理沙がいた。



「さっきの奴は先に八雲屋敷にいる。幻想郷で今、異変が起きてるらしいんだ。」



廊下を歩きながら話をする二人。



「……雪菜か?」


「さぁな。でも、可能性的になくはないんじゃないか?」


「そうか……そうだ、魔理沙にも頼みたい事が」



話している最中で魔理沙は片手をあげる。



「雪菜ってやつの事だろ?周りが静かだったから、なんとなくは聞こえていたぜ。」


「ん……そうか。」


「あれ、龍二!?」



偶然、廊下で身長の低い少女と出会う。龍二の旧友の塩原紗由理だった。



「久しぶりだな……」


「ねー!今からどっか出掛けるの?」


「あぁ、個人的な任務だ。」


「手伝おっか?」



紗由理は聞く。

当然龍二は首を横にふった。



「大丈夫。」


「そっか……じゃあ頑張ってね。」


「ああ……」



龍二は答えてから何故か紗由理の頭を撫でる。



「な、なんだよー!」


「いや、紗由理にはいつも迷惑かけてたなぁって。有難な。」


「えー……なんか……龍二らしくない。」



紗由理にそう言われ、少し顔が赤くなる龍二。

魔理沙は隣で失笑した。



「たまにはいいだろ……」


「まぁね。また暇そうになったら来てよね!久しぶりに皆でどっか食べに行こうよ!」



紗由理の提案に、一瞬戸惑ったが頷いた。



「そうだな。」


「じゃあ、行ってらっしゃい龍二!」


「ああ。いってくる。」



紗由理と別れてから魔理沙がまだ笑顔なままに気づく。



「……なんでにやけてるんだ?」


「いや、なんだかんだ言って、いろんな奴らに愛されてたんだなって思っただけだ。」


「あぁ……そうみたいだな。」



目を閉じながら答えた龍二の顔も笑顔だった。



「さぁ、まずは八雲屋敷だな!」


「ああ!」


「!」



八雲屋敷に戻ってきた龍二を見て、藍は驚く。



「その服……」


「そういや、なんで着替えてきたんだ?」



魔理沙は聞いた。

龍二は今、自分の通っていた制服を着ている。ネクタイもしっかり。



「多少だが、防護結界が張られるからな。」


「……担任に『まともに着る時があるとすれば、それは死線の中を駆け巡る時だ』って言っていたお前がな。」



藍のその言葉で、龍二は確信する。



「……やっぱり、藍さんがあの学園の。」



藍は静かに頷いた。

龍二が通っていた高校は学校長の顔を誰も知らなかった。

ただ、噂として、狐の女だとか、妖怪の長といったものがあった。

その校長の正体が、目の前にいる八雲藍だったのである。



「……いってしまうのか?」


「……紫姉に何も言わないでいくのは、少し寂しいな……」



笑いながら龍二は呟く。



「あの人は、俺よりも遥かに凄い人だった……まぁ特に何もしてなかったけど。日常でそう感じた。」


「そうか……」



藍は相づちを打った。

そして気を取り直すように告げる。



「緊急任務だ!異変の真相を探り、解決が今回の目標だ!任務の報酬は……そうだな、卒業で良いだろう。」


「随分とデカイ報酬だな……」


「わかるからさ。お前がこれから何をしにいくかを……同行者は二人。…………健闘を祈る、藤崎龍二。」


「はい!!」


「随分と素直になったな……」



男が龍二にそう呼びかける。



「あんただろ?」


「あぁ、そうだな……で、決めたのか?」



龍二は頷き、答えた。



「あんたの知るその術を使ってくれ。身体は、俺の身体を使う。」


「……わかった。それで良いんだな?」


「あぁ。」



男は息を大きく吐き、そして龍二に告げる。



「よし、今回は手伝ってやる。その方が面白いだろうからな。」


「あぁ、頼んだ。」


「そろそろ行こうぜ。」



魔理沙が二人に言う。



「そろそろ行かないと、霊夢が解決するかもしれないからな。あぁ、私は勿論ついて行くぜ。まぁお前ほど奥の世界にはいかないけどな。」


「いやいや、流石にそこまでついていかなくていいから。」


「そうだな。私はそこまでいかない。私がやるべき事は友達を見送る手伝いだ。多分霊夢達が邪魔するかもしれないから、その時は私に任せてくれ。」



龍二は頷き、そして三人は幻想郷へ向かった。

場所は、先程見つかった、無名の丘にある穴蔵。



「行くぞ!」









「……全ての出来事に偶然は存在しない、か。」



三人を見送った藍はそう呟く。

後ろから橙が聞いた。



「何か言いましたか?」


「ん?あぁ、なんでもないよ。」



そう答える傍ら、藍は考えていた。



(神の奇跡も……悲劇的偶然も……それは運命であり、宿命。避ける事の出来ない運命とは……)



そして藍は再び呟く。



「惜しい……実に惜しいな……彼がこうも早く逝ってしまうなんて。」



しかし、それこそが彼の本当の気持ちなのかもしれない。

藍はそう思った。



「さて、皆に事情を話さなくては……」


「事情って……何かあったんですか?」



藍は頷く。



「多分、次に会うときの藤崎龍二は……藤崎龍二ではないからな。改めて、歓迎会を開こうじゃないか。」



橙は首を傾げた。



「彼が帰ってきたらわかるさ。だからまずは、歓迎会の準備をしよう。」



藍は藤崎龍二を哀れだと思うと同時に、誇らしくも思っていた。

開校してまだ3年度目のあの高校は、勿論卒業生はいない。



(任務が成功したら、お前が第一号の卒業生だ……私は、お前のような生徒が私の高校で戦ってくれた事を誇りに思う。)

にいなです。

第三部はこれにて終了です。


物語もいよいよ佳境、

(と、いうよりこの話でだいぶ重要な要素を詰め込みすぎている感が……)


八雲藍との関係とか、主人公の過去とかいろいろ設定ありすぎて、あいたたたた……


そんなこんなで、次でラストになります。次も呼んでいただけると幸いです。


にいなでした。


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