第六話 複製された心
今日の彼女は泣いていた。
勇谷 圭亮、しばらく調べていて気付いたことがあった。
何故、勇谷なのか?と。
確かに彼の名を話の中で聞いた、しかし、仲間でもあれだけ泣くことだったのか、という疑問だ。
そんな疑問が頭をよぎっていた時、データベースがその勇谷圭亮の名を出した。
勇谷 圭亮 (いさや けいすけ)
第四戦闘小隊四番機
バグと交戦した後、行方不明。
それだけだった、だが彼の名だけがあるわけではなかった。
歴代の所属パイロットの中に幹原純悟の名。
そう、幹原が勇谷の関係者だった。
夜遅くに調べていたこともあり、二時間とたたずに眠気が襲ってきた、与えられた部屋はただ、だだっ広いだけで、殺風景な部屋だ。
まだ、何も置いてはいない。
ここには同じような部屋がいくつもある、自分もそんなものなんだろう、クローン、それが俺の知らない俺の正体だった、クローンなんてものは複製すればいくらでも現れる、その一人なんだ俺は。
そんな部屋の中、徐々に意識を失っていき、目が覚めた時には、もう外は明るくなっていた。
そして、時計を見て、彼女の部屋へと向かおうとした。
そして、道の途中で幹原に会った。
「幹原隊長、もし良ければ勇谷圭亮のことについて教えてください。」
「…!」
正直、予想外だという顔で話し始めた。
「ということは、湯館から聞いたのか、圭亮の事を。」
「湯館って…?」
「昨日お前が会った責任者だ。」
「湯館と圭亮は恋人同士だったからな…正直お前の話を聞いた時は、大変だったろうな。」
「俺も圭亮とは中学時代の頃からあいつと馬鹿なことばっかやってたよ、俺が軍に入ると言った時もあいつは相変わらず、軍に入ろうとしたよ、まあ、入ったわけだが。」
「湯館との付き合いはかなり前からしてたらしい、俺もあいつとはあの日の時は両方生きてるもんだって思ってたよ、でもあいつはいつまでたっても帰ってこない。」
「…俺、勇谷のクローンらしいんです。」
「そうか、通りであいつと似てるなって思ったよ、湯館によろしく言っていてくれ。」
彼はそそくさと話を切って去っていった。