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Amber World Striker アンバーワールドストライカー  作者: TTA
第壱章 その黒き龍は先導者となるか
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第五話 帰らぬ者

病院から出ると、外には幹原が車に寄り掛かってで煙草を吸っていた。

俺を目にすると、全開の車の窓に腕を突っ込み、手を出した時には煙草は手にしていなかった。

「乗れ、お前に会わせなきゃならん奴がいる。」

「…了解です。」

車の助手席に乗り込むと、後部座席から声が聞こえた。

「お久しぶりです、伊勢川さん、僕です、三上です。」

後ろを見ると、そこには戦闘部隊の二番機だった三上が座っていた。

「…お久しぶりです…。」

最も、何が久しぶりなのか身に覚えが無かった。

その後、幹原が声を出した。

「三上、伊勢川にこれからのことについて説明してやれ。」

「了解です。」

「…説明って何ですか…?」

「君は特務部隊に配属されました、その部隊の責任者の人に会ってもらいます。」

「責任者…?」

「俺の知り合いだ、心理学やら、機械学やら、いろいろやってるらしい。」

「らしい?」

「本人談だ。」

「本人談って…」

「ともかくその人に部隊の活動内容の説明と精神面のケアを受けてもらいます。」

「ケア…ですか…。」

話が終わった後、窓から流れる景色を眺めていた。

十分ほどたった後、少し大きめの建物の前で車が止まった。

「ここだ、着いてこい。」

無言で幹原の後ろを歩き、二階の部屋の前の椅子に座って待機するように指示された。

しばらくして、廊下の角から見覚えのある顔が見えた。

雪弘だった。

「…なんでお前がここに居る。」

「え…いや…。」

「まぁいい。」

「足手まといになるなよ」

「…」

そう言うと雪弘は去っていった。

幾分かたった後、部屋へ案内された。

その中には中学生ぐらいの少女が椅子に座って待っていた。

「あんたが伊勢川速人?」

「は、はぁ…。」

「男なのに気迫がないのねぇ…無いわ。」

「なんかすみません…。」

「はぁ…圭亮に顔が似てるけど性格がねぇ…。」

ぼそっと彼女は呟いた。

「ともかく、あんた、彼女が死んだんだって?」

「…はい、友達…ですけど。」

「じゃあ、どうよ、気持ちは。」

「…聞きます?それ…。」

「当たりまえでしょ?これ一応精神のケアだもん。」

「…最悪です、後少しで助けられたのに。」

「弱々しいわね…。」

「他にその日あったことは覚えてる?」

「はい、くだらないことですけど。」

「…はぁ、いいけど?」

「その日、夢を見たんです、自分が戦って死ぬ夢。」

「何と?」「バグです。」

「…!まさかね…。」

「その夢でのあんたの名前は?」

「勇谷 圭亮です。」

「…嘘…。」

「どうか…しました?」

「いえ、何でもないわ、もしかするとあんた、同じような夢を見たことはある?」

「二十回ぐらい、です。」

「あんた、それこれまでのあんたの前代のクローンの死に際よ。」

「…!?何ですか…それ…!?」

「いい?クローンっていうのは僅かに意識と記憶を共有してるの、脳波の強い個体は他の意識と記憶を鮮明に記憶する、つまり一人で多くの経験を持つことができるの、その個体があんたよ…。」

「そう…何ですか。」

「うん…ごめん…明日…でいい…?」

少しだけ彼女は泣いていた。

「…はい。」

出てドアを閉めた後、あの彼女のすすり泣く声が聞こえ、その言葉の中にはあの圭亮というパイロットの名前もあった。


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