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Amber World Striker アンバーワールドストライカー  作者: TTA
第壱章 その黒き龍は先導者となるか
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第四話 終わらぬ戦

「…」

目を覚ますと前には白い天井があつた。

起き上がろうとすると体の至る所から激痛が走る。

「目を覚ましたか。」

声の主を探すため、声の根源を見る。

幹原隊長だ。

「俺から言いたい事はない、だがこれには目を通しておくように。」

そう言うと幹原は一枚の紙を差し出して部屋から出ていった。

その紙には何か書いてある。

[伊勢川 速人

貴君を正規パイロットに任命する。]

それだけしかかいおらず、下の空白が真っ白で眩しかった。

正規パイロット、つまり前線で戦うことになる、ということだ。

普通は嬉しい筈だ、しかし、心が潰れるかのように締め付けられ、無性に死にたくなった。

そして、気付がつくと紙は涙で文字が滲み、もうすでに読むことはなできなくなっていた。

そこで、ようやく自分が泣いていることに気付いた。

裏に何かある、もう一枚紙がある。

それには第一居住区戦での民間の死者と行方不明者のリストがあった。

順に見ていると弓佳の名前が死者のリストにあった。

そこで、声が溢れ出た。

「畜生!畜生畜生畜生畜生畜生ォ!

ちぃぃっくっっしょぉぉぉぉぉぉ!!」

悔しさ、バグへの憎しみ、そして自分への失望、

それら全てが一気に押し寄せてきた。

戦闘中の記憶も、居住区に突入した時の記憶も、弓佳の変わり果てた姿も、

全てを、思い出した。

「俺…無力だよ…やっぱり無力だ…なあ…弓佳

…嘘だろ…?」

答えは返ってこない、ただ空虚が明るい部屋を支配した。

涙腺が枯れるのではないかというほどの涙が出た。

ベッドの上の布団が涙でぐしゃぐしゃになった。

しばらくした後ドアが開き、雪弘が入ってくる。

「速人、その…

俺、正規パイロットになったよ。」

申し訳無さそうに雪弘は呟いた。

「その…なんだ…弓佳のことは…」

「弓佳の事は、やめてくれないか?

俺も正規パイロットになっちまったんだ、どうせなら死んだっていい、それで弓佳の所に行けるってんなら、俺の命なんて安いさ。」

自分の言葉で雪弘の言葉を遮った。

「お前もどうせ戦って死ぬんだろ?どうせ死ぬんだよ、俺達は。」

返って来たのは言葉ではなく、拳だった。

顔面にぶつかり鈍い音が鳴った。

「お前本気で言ってんのかこの野郎!俺達がやらなきゃコロニー3の人間はどうなる!?なんのためのパイロットだよ!」

外で待機していたからか、三人ほどの人間が止めに入った。

「俺だってわかってる…でも俺には無理だ…」

「ッ!離せこの野郎!」

「やめろ田神!伊勢川はまだ精神のダメージが回復していない!仕方ないんだ!止めろ!」

「次会ったら話してやる!覚悟してろよ!」

そう言って雪弘は部屋から引きずり出された。「…悪い、雪弘…」

そうして三日後、俺は病院を退院した。

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