第三話 学校3
学長と担任から、仙洞さんに一通りの説明があった後、
一旦会話が途切れたので気になったところを質問してみた。
「あれ、でも朝のホームルームで紹介されてないんですけど。」
「ちょっと諸事情で遅れてきたのよ。で、もう午後になるし、
全員が揃うのは明日だから、今日は案内で、
本格的な学校生活は明日からということになったの。」
「申し訳ありません、家で少々あったものですから。」
そりゃ、仙洞重工といえば、まさに学園を目の敵にしているので、
色々あり過ぎるのだろう。
しかし、今日の監視や探りを僕に任せるのはいいとして、
明日以降は先生とかがやるのかね。
なんて思案していると、案内を開始するようにと達示を受けた。
「では、失礼します。」
そして、仙洞 葵と学長室と教員室を退室した。
「あの~、七瀬さん。まずどちらを案内していただけるのですか。」
歩き始めて、すぐに聞かれた。
「もう、目上の人はいないんだから別に敬語はいらないよ。
明日からは、クラスメイトじゃないか。」
「そう、ならあなたもそのふざけた口調をやめてくれる。」
切り替えの早さにちょっと驚いたが返事を返す。
「あなたじゃなくて、僕は一輝という名前があるんだよ。」
「はいはい一輝ね、私も葵でいいわよ。で、どこから行くの。」
やはりこの女は猫被ってたのね。
結構気が強そうな印象を受けた。
「まず、食堂だね。僕は昼休みの開始と同時に呼ばれたからね。
昼食を取ろうと思う。」
「本気で言っているの?」
「本気だよ。葵も昼食一緒にどう?」
「あなたさ、私の校内案内はどうしたのよ。」
「するさ、ついでに昼食でもということだよ。」
彼女は少しあきれた顔をしながら、
「わかった、一輝に御馳走になるわ。」
「じゃぁ、決まりだ昼食といこう。」
そして、まず食堂に向かって歩を進めた。
食堂に到着して、魔術師学科専用の食券券売機の前にきて早速注文を開始した。
「この券売機はね、魔術師学科の学生証をここにかざすと買えるってわけ。」
「なるほどね、これがさっき説明された優遇特権なわけね。」
二人で昼食を購入して空いてる席に座った。
「今後のワームホールへの突入事なんだけど、どっかのチーム入るとか一人で活動するとか、
何か案はあるの?」
僕は唐突に彼女の戦闘に関する質問を投げかけてみた。
「へぇ、チームがあるんだ。一輝、少しチームについて説明がほしいかなぁ。」
「そうだね、基本的にはチームが4つある。リーダーはみんな四魔騎士だね。
まず一番人数が多くて1つのチームで役割すべて揃っているバランス型のチームが、
白馬の率いるチームだね攻撃、防御、索敵、回復、サポート系と、かなり便利なチーム。
次に人数が多いのは、久遠寺のチーム、ここはみんな女性で構成されていて、
まぁまぁバランスが取れているかな。
その次が兼元のチーム、こちらは武闘派集団でやられる前に殺すを体現している攻撃チーム。
最後に釈迦院のチームは、チームというか、僕と釈迦院だけのコンビかな。」
「何それ、最後のチームは問題が多くない。何で二人しかいないの?」
「まぁ、それには訳があって、な。」
言葉を濁しつつ答えようとすると
「どんな訳よ。よっぽど使えないの?」
突っ込まれたので急いで答えた、
「そうじゃなくて、二人とも廻りに非常に迷惑な魔法を使うのと、
釈迦院の性格と、あとは今のとこメンバー増やす理由が少ないことかな。」
「なるほどね。」
彼女は少し思案してから、どのチームに入るか決断したらしく、
「なら、私もあなたのチームに入るわ。」
「はっ?何でそうなる!」
余りに予想外の答えに取り乱しながら答えてしまった。
「まず、私の魔法も廻りに迷惑かけるものが多いのと、一輝も私と居た方が監視とか楽でしょ。」
「・・・なぜ俺が監視役だと?」
でも考えればわかるか、など思案していたら、
「学長に言われたの、これから来る生徒が戦場と授業とかでの監視役だって。」
すごく面倒な説明してくれたなあの無能な学長は。
二人で学食で話していると辺りが少しざわついてきたので、
目を向けるとそこには、騒がしい人物がにこちらに向かっているようだった。
身長は高く、体型はやや痩せ形だが少し筋肉質で、ショートヘアに割と目つきが鋭い美形の女性。
久遠寺 栞、彼女は女性のみで構成されたチームのリーダーで四魔騎士の一人である。
「あなたが、今度転入してきたSクラスの子ね。私は久遠寺 栞、
四魔騎士の一人よ。単刀直入に話すは、あなた私のチームに入りなさい。」
僕は無視か、と思いながら葵が戸惑っているように見えたので、
答えようとしたら隣のほうが早く返事をした。
「えっと、久遠寺さん、すみません私はもう釈迦院君のチームに入ろうと思ってまして、
折角誘っていただいたのに申し訳ありません。」
「そんな二人だけのチームとも呼べない所に所属しても、大して戦果は上げられません。
私のチームなら人数も多いし、何より男共の煩わしさもない。」
「え~、実は私の魔法も広範囲に影響がありますので、出来れば迷惑のかからない一人で行動しようと
していました。でも釈迦院君のチームは二人とも似たような者らしいので、こちらのチームなら
それほど迷惑も少ないと思いまして。」
「・・・どの位、広範囲なの?」
少し顔を引きつらせた久遠寺の事を見逃す仙洞栞ではない。
「話を聞く限りでは、七瀬君と同じくらい迷惑をお掛けしてしまうと思います。」
仙洞はしたたかだ。僕と釈迦院がハブられている理由を見抜いて利用した。
「そうですか、なら仕方ありません。む、無理には誘いませんので悪しからず。
あと今後ともよろしくお願いいたします。でわ。」
そそくさと退却させてしまった。
姿が見えなくなったころに葵が話しを再開してきた、
「一輝と釈迦院君って、物凄く避けられているのね。ここまで露骨だとやっぱり単独の方が
良いような気がしてきたわ。」
「まぁ、実際に体験しないとわからないし、一人でやるにしても席だけは何処かのチームには
入らないと全員で突入する時物凄く面倒だよ。」
「そうなの?例えばどう面倒なの?」
「まず、ワームホールへの突入は緊急時以外は申請と学院の許可がいる。あと緊急時は
間に合う生徒だけで対処するが、基本的に四魔騎士を主軸に人材配置が行われる。
四魔騎士は強いし特権に見合うだけの働きをしないといけないからね。
だから突入も最優先されるし、学院側からのバックアップも多い。
なのでチームに入っているとそのついでで、多数のワームホール潜入の機会がある。
また、四魔騎士は緊急時以外の活動時にワームホール潜入調査も申請や許可無しに入れる。
チームに入っていれば一緒に入れるわけよ。」
「流石は四魔騎士様ね。でも、緊急時の配置で例えば無所属だとどのあたりに配置されるの?」
「主に後方支援や退路確保、並びに被害拡大が無いかの調査かな。」
「なるほどね、新技術や魔法メモリーデータの取得確率がほとんど無くなるわけだ。」
「そそ、だから席だけでも置いておくと良いよ。」
「なら、やっぱり釈迦院君のチームに入るから、一輝、お手伝いをお願い。」
「はいはい、じゃ早速行動いたしますか。」
昼食を終え、二人で釈迦院のもとへ向かい始めた。