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虚空よりの使者  作者: 最有機
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第一話 学校

妹がワームに飲まれてから十年が経過した。

僕は十六歳になって高校生になっていた。


もうすぐ夏の季節が到来する。

日差しは日に日に強くなっていく気がした。

外では衣替えが始まったばかりで、夏服の着用で賑わう一般学科の生徒たち。


上の教室から見ていた平和そうなひと時。

「あいつらは楽しそうだなぁ。」

僕はふとつぶやいた。

「なんだ、一輝も夏服が好きなのか?」

一人の学友が声をかけてきた。


「もう具合はいいのかい?」

先日まで入院していた学友、白馬勝(はくば まさる)がいた。

「うむ、問題ない。それよりも知っているか?一輝。

 この世で一番淫らな生物は、夜勤明けの看護師だということを。」

何を見てきたか知らないが、バカだなぁと思う。

「相変わらず頭が悪いみたいだね。もう一度入院して来たら?

 なんなら救急車呼ぶよ。」

「ん、お前も好きなんだな。そう恥ずかしがるな。」

僕は無視して席に向かう。

白馬はそれなりに元気そうだ。

「待て待て、無視は良くない。帰りの会で取り上げるぞ!」

こいつは、ホントに騒がしいな。

白馬と他愛無い会話を続けながら、席につき今日の授業の準備に入った。



この学校、『私立釈迦院高等学校』は一般学科以外に魔術師学科がある。

各地のある所の近くに魔術師学科が設けられていて、この学科は様々な特典があった。

まず、授業料の免除、宿泊施設・食事・訓練施設の自由使用化がある。

だが、その優遇特典は生きていればこそだ。


そう、この学科はワームが発見されたら被害拡大を防ぐため、ワーム内に侵入しなければならない。

ワーム内にいる謎の寄生虫に感染した人間を殺さなければ、

穴の中からさらに寄生虫が出て、どんどん繁殖する。

少しでも被害を減らすために僕たちは自分たちより、幼い命を刈り取らなければならなかった。


ワームホール。

十年前に突如世界に現れた異界に繋がる4つの原初の穴。

日本とアメリカ、ロシア、エジプトに半径7キロのどす黒い蠢く穴が出来た。

日本の場合だが、北関東エリアにこれが発生した。

被災地しか影響がなかったに見えた、その為調査部隊と研究チームが派遣された。

その中に僕たち兄妹の父がいて、妹は中から出てきたと思われる寄生虫ワームに感染した。


通称:ワーム

・15歳以下の子供に感染する。

・感染した子供はまず体のどこかに異界に繋がる穴が出来る。

・感染者を飲み込むとそこを中心に周りの現実世界をも飲み込む。

・内部の異界は原初の穴に近いが、内部の規模、構造、構成は様々。

・ワームの各大規模はまた様々で半径1キロから7キロに到達することもある。

・ワームの拡大が治まると中から謎の生物が溢れ出て次の穴が発生する。

・ワーム内に侵入し中の原因の寄生虫を駆除すればその穴からは感染者がでなくなる。

・寄生虫は感染者と一体となっており、感染者は例外なく死に至っている。


そのワームの入口の監視・防衛のために日本では魔術師学校が設立された。

現在のワームの数は、日本では5個だ。

海外にも多数あり国によるが、軍が独占したり、ある企業が独占したりと様々だ。

日本では4個が個人により独占されている。

学校の創設者、釈迦院國彦(しゃかいん くにひこ)によって。

もう一つは、仙洞重工(せんとうじゅうこう)が所持していた。



ワームホールは最早、人ではなく異界との道となり、

大きさが様々であたり一面を飲み込み、死を、災厄を振りまく。

日本での管理、封印は軍と仙洞重工そして魔術師学校が共同であたっていた。


世界各地でも最初の頃は、対処できずになすすべなく飲まれていった。

だが、人類は生き延びていた。

誰が最初に成し遂げたかはわからないが、なんとワーム内から新しい技術を持ち帰り、

科学と融合させて発展さてしまった。

それを魔法と呼んだ。


人間に使用できるようにしたのだが、15歳くらいから20代前半までの

未発達の脳を持つものしか使えなかった。

BMC通称ブレイン・マシン・チップ。

これを未発達の脳に埋め込み、魔法の効果を保存したメモリー、

魔法を発現するマシンデバイスを連動させて、

シナジェティックシンクロ効果を発動させ、ようやく発動できる。

大人達が試みたが自我をしっかりと持っている脳には負担がかかりまともに作動しなかった。


さらに魔法は通常の人の脳では処理しきれない程のデータ量を持っていて、

BMCで情報処理を補助しつつ、

マシンデバイスに魔法のデータが入ったメモリーを差し込み魔法は発現する。

マシンデバイスは主にワーム内での戦闘を考慮されていて、

使用魔法の種類によって形状が異なっている。


また魔法を発動出来る種類は、マシンデバイス一台で処理しきれる程度で、

魔法のデータ量によって異なっている。

メモリーの属性専用の処理システムが必要で、それがまた重く多く入れられない。

また一種類は、ワームへの突入・ワーム内での生命維持・ワームからの脱出

の魔法に使われるので、

メモリー属性のデータ量によるが3種類程度が限度である。

デバイスを複数持てばその限りではないが、利便性を考えると得策ではない。

そのため、ほとんどの魔術師たちはメモリーとマシンデバイスを

自分の戦闘スタイルに合わせてセットする。


危険と隣合わせで、いつ死ぬかわからないこの学校の魔術師学科だが、

補充人員を募集すると希望者は多い。

なぜかというと、処理したワームのランクに応じて国から報奨金が貰える。

またワーム内で各々が持ち帰った魔法の所有権は個人にあり、

各企業や国家機関、研究施設が高い性能の魔法の獲得に躍起になっている。

実用化に成功した時の経済利益は絶大で、どこでも欲しがっていた。

そのため高い金額で魔法が取引されて、はっきり言って儲かるからだ。


中には何度も生還して、数多くの魔法を所持する人物は個人契約して、

スポンサーとして多額の金額で契約して、魔法やデバイスの開発の協力もしていた。


今まさに話しているこの目の前のバカ、白馬 勝もその優秀な人物だった。

釈迦院学校に四魔騎士と呼ばれる強力な魔術師の一人だ。

四魔騎士は、学校の中でもさらに特別待遇を受けられる。

そのかわり学校の犬とならなければならない。

いや、釈迦院國彦の。


それを受け入れ且、特別なテストをクリアして現在の4人は選ばれた。

今後は彼らが戦死した後、選定テストをクリアして選ばれるか、

学期末実技テストの時、希望者は四魔騎士に挑戦でき、勝利すると変更される。

しかし、今のところ変更された試しがない。


四魔騎士の証として、専用の小型召喚デバイスと群軍馬メモリーが譲渡される。

ちなみにこいつは苗字が白馬だからという理由で、白いユニコーンが渡されそれに騎乗する。

またこの召喚獣は強力で生還率がかなり上がる。機動性と強靭さを兼ね備えた強力なメモリーだ。

白馬は他にメインで、変換特化式弓型の武器デバイスで、色々な属性の矢を放って戦う。

その為エレメントアーチャーと言われている。



「一輝よ、今日も勧誘するが、どうだ、うちのチームに入らないか?」

「白馬、今日も断るけどしつこいね。」

「口説くときはしつこい位が・・・・ちょうどいいのさ。」

ドヤって顔で訴えてくる。

「白馬君、僕のコンビに付きまとうのはいい加減にやめてくれないかな?」

声の方を向くと、少し小柄だがしっかりした体つきで、見事なおしゃれ七三に決めて、

物凄く目つきの悪い男が近づいてきた。

「別に一輝は釈迦院とずっと一緒のチームがいいってわけじゃないだろ、こちらの勝手だ。お前に言われる筋合いはない。」

彼は釈迦院(しゃかいん) 黄河(こうが)、苗字の通り学長の孫だ。そして彼もまた四魔騎士の一角を担っていた。

彼のデバイスとメモリーは強力且つ最新式で、まさに成金の申し子だった。

群軍馬メモリーからは、ただの青い馬だがアンデットらしくこれまた強い。

さらに個人のデバイスも具現特化式三型と具現特化型最新のデバイスを使用して、

幻影軍団を次々に召喚し、ほぼ自分が戦うことなく進軍できる。

自身もかなりの戦闘技術を体得しており、仲間がいなくとも

そこいらのチームでは勝てないぐらい強力だった。

その魔法とお坊ちゃん気質が邪魔して、

俺と同じボッチなのでワーム突入時にボッチ同士でよく一緒になる。

「僕の能力は周りに迷惑がかかり過ぎるから、釈迦院の幻影軍団と相性が良いのよ。

 よっぽどの事がないと、チーム入っても邪魔になるだけだよ。しばらくは釈迦院とやるよ。」

「ふん、ほらみろ、この通り一輝は僕を選ぶのさ。わかったらもう付きまとうな。」

これまた立派などや顔で釈迦院は白馬に勝ち誇っていた。

「ま、気が変わったら声をかけてくれや。」

そう言って白馬は自分の席に戻っていった。

そのすぐ後に釈迦院も戻っていく。

そして、本鈴と共に教師兼実技教導官が入ってきた。

いつの間にか、予鈴が鳴っていたらしい。

この担任は若く、二十代前半てっとこで紺のスーツを着て、茶髪で体も引き締まっており美人だ。

そして、何よりもこの教室の誰よりもクズだ。すごくそう思う。

「さぁ、お金の源泉のみんな!今日もゴミ虫を駆逐して世界を救う訓練を始めましょう。」

とびっきりの笑顔で高らかに言い放った。

こいつはいつもそうだ。

感染者を、罪の無い子達をゴミ虫と言い、僕らを金の湧き出る油田のように思っている。

「ま、人殺しは僕らもか。」


今日もまた、人を殺す為の一日が始まった。









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