戦場5
首都フィンガルト 勇者機関本部
「魔物の軍勢、進軍を開始した模様‼︎
物凄いスピードで各戦線へと向かっています!」
「予定より早いぞ…各戦線の状況は?」
「各戦線の配置はほぼ完了している様子だが…北東部戦線のみ配置が未完了です!」
魔物の侵攻予定時刻より2時間まで迫ったころ勇者機関本部では各戦線の配置確認が行われていたが、突如として魔物達が進軍を開始した。
ほとんどの箇所では配置が完了し、戦闘準備は万端だったが北東部戦線のみ未だ配置が完了していなかった。
「北東部戦線は本国の勇者が全員残っているのではなかったのか?」
大司教が落胆したように神官に尋ねる。
「勇者と亜人種の間で争いが起きているとの情報が入っております。
まずいですね…一番早く到達するのが北東部だぞ…」
「この様子だと北東部戦線は壊滅してしまいます‼︎」
勇者機関に不穏な空気が立ち込める。
重苦しい沈黙が続いた後、大司教が話し始めた。
「首都から神官団を派遣する。ジェラルドを筆頭に至急結成の準備をさせ、1時間後には転送魔法で現地へ送れ。」
大司教の判断で急遽神官団が結成され、転送魔法でアリゼイユまで派遣されることとなった。
だが大本営である首都からの人員の削減は今の状況ではあまりにも痛い。
だが戦線の陥落は避けなければならない。
苦渋の決断だった。
「神官団到着までアリゼイユには何としても持ちこたえてもらわねばならぬ。」
大司教の目が険しくなる。
北東部戦線アリゼイユ アリゼイユ大平原
「貴様らなぜ言うことを聞かない⁉︎
奴隷風情がいい気になるのではないぞ‼︎」
「へへへ、俺たち日頃の労働で疲れてるんですよ。」
「心配せんでください、自分の身は自分で守れますから、自分の身はね。」
戦線は最早機能していなかった。
亜人種は言うことを聞かず、平原でごろつき、中には人間に襲いかかるものもいた。
本国の勇者達が対処するも、勇者達は自分の権力や凄さを声を荒げて話すだけで、何の意味もなさなかったのだ。
「くそ…貴様ら一匹残らず根絶やしにしてやるからな‼︎
………ん?まさか…」
アリゼイユの将軍は亜人種に気を取られて眼前の状況に気づいていなかった。
まるで黒雲のようにうごめく謎の影、それが遠く一面に広がっている。
それは最初、暗く淀んだ空かと思ったが違ったのだ。
空から、地から、それはアリゼイユ目掛けて侵攻していた。
「まっ、魔物の軍勢だあああああああああ‼︎」