戦場4
その時ヨハンがシモーヌを止めた。
彼はシモーヌの前に立ち、案内役に対して謝罪すると講堂へと向かった。
「何故ですアーサー王!あの者の態度は目に余る‼︎それで良いと仰るのですか⁉︎」
「シモーヌ、その激情は戦で発揮するものだ。開戦前に争うのは双方にとって良くはない。」
ヨハンは淡々と喋る。
ギルバートは横で黙っている。面倒ごとには関わりたくないのだろうか。
「お前のその厳格さは私の誇りだ。どうかそれを戦で、人を守るために発揮して欲しいのだ。」
「アーサー王…」
「さあ、そろそろはじまるようだぞ。」
講堂では大司教が説明を始めた。
同時刻
首都フィンガルト 南地区
空中からまるでドラゴンのように降り立つ飛空艇は物凄い存在感だった。
しかもその巨大な飛空艇にはわずか1名しか乗船していない。
勇者機関の者が飛空挺を取り囲む。固唾を飲んで中の者を待ち構える。それはこれから共に戦うものへの態度などではなかった。
未知との遭遇、それに他ならない。
やがて飛空挺の中からは1人の男が降りてきた。
たった1人、だがその存在感は飛空挺以上に凄まじいものだった。
「見ろ、竜人だ。」
「凄えオーラだ。」
「あれさえいればこの前哨戦は貰ったな。」
ドラゴンと人間のハーフ、竜人。
背中には大きな翼が生え、よく見ると角も生えている。だがその姿は人間のもの。
拘束具も何も、彼を押さえつけるものは何もついていなかった。それだけに勇者機関の者は突然竜人が裏切って、こちらに危害を加えるのではないかとの不安を募らせていたのだ。
「いい歓迎だなおい。」
竜人が呟く。1人1人、取り囲む者達を見ながら。
機関の兵も竜人が近づくにつれ、やや後退し、案内役どころではないようだ。
「そんなにビビるなよ、呼んだのはお前らだろ?」
「くっ…勝手に動くな‼︎
お、お前は奴隷なのだろ⁉︎」
兵が槍を向ける。だがそれはあからさまに攻撃や威嚇ではなく、防御や逃げに徹したものなのは明白だった。
竜人は何食わぬ顔で槍を構えた兵に近寄る。
「ひっ、ひい」
「情けない声を上げるなよ、まだ何もしてねえだろ」
竜人は素早い動きで槍をへし折ると、へし折った先端部分を後方に投げた。
「早く案内してくれ。
大丈夫だ、お前らに危害は加えねえよ。
こっちだって他の仲間を人質に取られてるようなもんだし。」