戦場2
「はっはっはっは」
バート将軍は大声で笑った。やはり年齢を重ねると相応の落ち着きというのか、人の悩みというものを受け止めるだけの器量というものが備わるのかもしれない。バートはダンテに諭すように言った。
「あなたはまだお若い。そして強い。事実アーサー王から国どころか世界の命運がかかった戦場を任されている。それに、戦場を見てくだされ。」
バートは眼下の戦場を見た。虚ろな視線だったダンテもハッとして戦場の様子を見ると、そこには協力して戦線の準備を整えるログレスの軍と亜人種の兵達の姿があった。
「確かにあなたはアーサー王ではない。だがそれは悲観すべきことではない。
あなたは他でもないダンテという人物なのだから。そしてあなたにはあなたしかできないことがある。」
「………」
「すみませんなあ、少し説教臭かったですかな。」
バートは少し悪びれるように笑った。純粋な笑顔だ。
「いえ、少しすっきりしました。」
ダンテは装備を確認していよいよ迫る魔物達との戦いのため準備を始めた。
「私にしかできないことか…」
ダンテは決意を決めた。
「バート将軍ありがとうございます。さあ、配置につきましょう。世界の命運をかけた戦いのために!」
首都フィンガルト 東ゲート
「我こそはアーサー17世ヨハンである‼︎首都防衛のため馳せ参じた‼︎開門していただきたい‼︎」
首都には東西南北にそれぞれゲートがある。
普段は開放されているが、有事の際には門は閉められ、入れなくなる。閉じられているゲートは無人だが、強力な結界が張られており、許可なしに入るとゴーレムに迎撃されてしまうのだ。
「私がアーサー王であるという証はこのエクスカリバーだ。」
ヨハンはエクスカリバーをゲートにかざした。エクスカリバーは黄金の輝きを放っており、それに呼応するかのようにゲートも輝きだし、重い音を響かせながら開門した。
「アーサー王よ、戦いがすぐそこまで迫っていますな。」
「ご心配は無用でございます。不届き者はこのシモーヌが仕留めますゆえ。」
今回首都遠征に際し、ヨハンが連れ立ったのはログレスでも名高い2人の英傑である。
予言、感知、補助魔法に特化した魔術師ギルバートと百発百中の腕前を持つ元ハンターの女性の弓兵、シモーヌだ。
東ゲートから首都の中王区、勇者機関本部まではまっすぐ道が続いている。
「私の中の勇者の血が騒いでいる。魔物や魔王を前にすると、やはり滾るものがあるな。」
「それはそれはご結構なことで。このギルバートめもアーサー王のご雄姿、この目に焼き付ける所存であります。」
ギルバートは黒いローブを頭から纏い、その表情はかいま見えないが、ヨハンの発言を嬉しく思ったのか安心しているようだ。
「後方支援はお任せを、いやいざとなれは王の盾となるのも私の責務でございます。」