戦場の修羅たち2
「ブハハハハハハ‼︎貴様の臭い芝居はとことん凝っておるな‼︎
近くに兵はおらん、元の姿に戻れギーゼラよ」
アドルフは突然笑ったかと思うと、王に対しそう言い放った。
アドルフがそう言うと、王の体は光り出した。次第に光がおさまり、その姿は若い妖艶な女になっていた。
紅い髪と少しきつそうな印象の目つき、肌は雪のように白かったが、体の至るところに紋様のようなものがあった他、腕には宝珠が埋め込まれており、異様な雰囲気を醸し出していた。
「アドルフ様、あたしのアルミエーレ王はお上手だったでしょ?」
「流石というほかないな、ギーゼラの変身魔法は!それでこそ我が同胞よ!
まさかアルミエーレの国民も、既に本物の王が死んでいるとは夢にも思うまい。」
「そう言っていただいて光栄ですわ。
アドルフ様、これでこの国は実質私たちのものになりましたわ。」
遡ること2年前ー
アドルフ達はアルミエーレへと潜入し、密かに王を殺していたのだ。
そして当時から問題視されていた国境や資源による不満を増長させて、さらにはカルタジャーラをもたきつけ、戦争を活発化させていた。
もともと小競り合いが絶えなかった両国だが、アドルフたちの介入によって戦争への流れは避けられないものとなった。
「これでこの国の鉱山資源はもう私たちのものですわ。
アドルフ様、次はどの国へ行かれます?」
ギーゼラはアドルフに近寄り、上目遣いで尋ねた。ギーゼラの立ち居振る舞いはさながら魔女のようだった。
しかし、彼女がアドルフをたきつけているわけではなく、もともと戦いに悦びを感じるアドルフと、他者を翻弄することに悦びを感じるギーゼラの利害が一致しているだけなのだ。
「そうだなあ、しばらくはこの国で英雄として扱いを受け、それに飽いたらまたどこかの小国にでも侵攻するか」
「素晴らしいですわ。また大勢の人間が巻き込まれていくなんて…」
とその時、玉座の間の中央に突然魔法陣が現れた。
魔法陣は青白く輝きだし、同時に魔法陣の上に人が現れた。黒い装束に身を包んだ細身の男で眼鏡をかけており、いかにも学者風な出で立ちをしていた。
顔はやややつれており、目の下には隈があった。
「おやおや、お取り込み中だったかな。」
「あらハルトマン、早かったじゃない」
ギーゼラはアドルフと接する時とは全く違う口調でハルトマンに言い放った。
このハルトマンは魔術にも精通した錬金術師で、大錬金術師パラケルススの直系でもある。
「おおハルトマンよ戻ったか‼︎カルタジャーラへの手引きよくやったな!」