前哨戦2
奴隷運搬用飛空挺 自由の女神 内部ー
「またこの3人は一緒か!もう腐れ縁だよな〜」
いつもなら炎天下の中、住宅地や城下町、リゾート地の開発という名の労働をさせられていた彼らだったが、今回は事情が違ったようだ。
今朝いつものように集合場所に到着すると、そこにはいつもの監督役ではなく勇者機関と呼ばれる組織の人間達が大勢いたのだ。
「突然で申し訳ないが、これからお前達には戦ってもらう。」
それだけ言うと奴隷達を5つの班に振り分け、自由の女神という名の趣味の悪い飛空挺に乗船させた。
いつもボロ雑巾のようにこき使われ常に理不尽な目にあわされていただけあって、さらに日頃の疲れもあって奴隷達はそれほど大きな反応を示さず飛空挺へと乗り込んだ。
5つに分かれたとはいえ、もともと何十人も乗せることなど考えていない代物なので内部はこれでもかというほど混雑していた。
「フゴゴ…暑い、暑すぎる…」
オークの奴隷81号は蒸風呂状態の飛空挺に乗せられグロッキー気味だ。彼の体からは滝のように汗が流れている。
「359号はどこにいるの?」
長く尖った耳を上下させながら、エルフの奴隷412号が81号に話しかける。
412号は魔法で自分の身体を適温に保っているため、他の奴隷と比べてもそんなに苦しそうではなかった。
ただ話しかけられた81号は暑さでそれどころではないらしく、力なく359号の方を指差した。
「うわあ高所恐怖症って本当なんだね。」
81号が指差す方には、その図体に似合わず、子犬のように震える359号がいた。
何やらぶつぶつ呟きながら頭を抱えている。
「怖くない…怖くない…そうだ、大丈夫…きっと大丈夫…」
「フゴゴ、あいつ飛空挺乗るの、最後まで渋ってた…」
「359号‼︎」
412号が359号に駆け寄る。駆け寄ると言っても混雑した飛空挺内を、亜人種たちを掻き分けてだが。
「おお、412号…俺はもう覚悟を決めた…」
「何馬鹿なこと言ってるんだよー、あともう少しで着くんだから大丈夫だって!」
飛空挺はそろそろ着地するようなのか、やや右方向に傾きながら降下し始めた。
その時の独特の浮遊感を飛空挺内の者は感じたが、359号はその感覚が嫌なのか失神してしまった。
「もうすぐ、着く…フゴ…この暑い機内ともおさらばだ…フゴフゴ」
ログレス王国 大平原 飛空挺到着ー