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勇者たちの鎮魂歌  作者: 砂場遊美
第3章魔王討伐編(過去)
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魔王討伐5

「今の人数では満足に防衛はできないな。近いうちに首都への遠征命令も下るだろう。」


目下の問題は兵力不足だった。今のログレスの兵力では東からの魔物の侵攻を食い止めることは難しかった。ヨハンのエクスカリバーの力があればそれも容易いのだろうが、ヨハンには首都の防衛という別任務が課せられている。

大本営である首都の陥落はすなわち勇者達の敗北を意味する。さらにもう一つ、


「アーサー王それだけではございませぬ。今回機関から送られてきた魔物の詳細でございますが…そのほとんどが能力不明という結果になっています。」


「敵のステータスがわからないのか…となると闇雲に戦ったならば思わぬ痛手を食らうことになるな。」


魔物の能力がほとんどわかっていないのだ。今回の戦いが今までと圧倒的に違う点がこれである。兵力不足の中で敵の能力を把握することの困難さは火を見るよりも明らかだ。


「………私は援軍到着までログレスに残る。」


ヨハンが不意に呟いた。その目には強い決意が秘められていた。


「何をおっしゃるのです⁉︎大本営である首都の防衛は最重要任務。首都が陥落すればもう世界は終わってしまうも同然です‼︎」


ダンテが声を荒げる。今のヨハンの発言は遠回しにダンテ1人に防衛を任せるのは役不足だ、とダンテには聞こえていたからだ。

それだけではなくダンテは、首都の防衛という勇者としての責務をないがしろにしようとする、今の軽率な決断を戒める意味合いも込めて感情が出てしまった。


「ダンテよ、私は勇者であると同時に一国の王なのだ。私はこのログレスを心から愛している。民も兵も大地もだ。心配しなくてもいい。援軍が到着し次第、防衛はお前に任せて私は首都へ向かう。」


ダンテはこれこそが勇者の、そして王の威厳なのだと感じた。この発言だけでわかる溢れる自信、それが彼を勇者足らしめていた。


「私の中にどちらか一つを取り、どちらかを犠牲にするという考えはない。王である限り守らなければならないものは全て守る。代々続くこのアーサーの血が、聖剣エクスカリバーがそれを可能にする。」


「アーサー王……」


ダンテはただアーサー王に見とれていた。自分とは本質的に違う、雲の上の存在。自分では及ばない。だからこそダンテはアーサーに少しでも近づこうと血の滲むような努力をこなし今の地位に登り詰めた。

ただ将軍位についても、国外にも武勇が知れ渡ろうと、アーサー王に近づけば近づくほど自分は頂点に立つ者でないと理解せざるを得なかった。

それゆえ今のダンテには野心も熱意もなかった。ただアーサーの側で彼に仕えてログレスを守護する、それが将軍ダンテという存在なのだ。


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