魔王討伐4
「2億。」
ピサロ2世はぶっきらぼうに単語だけ言い放った。奴隷が彼に酒を用意し、ピサロ2世はその酒を飲み始めた。
機関の使いは頭を上げもう一度王に確認した。
「王よ、もう一度おっしゃっていただいてもよろしいでしょうか?」
「だーかーらー、2億ゴールドだと言っておるのだえ‼︎それと浮遊石、魔法石の取れ高30%も付け加えるぞい。」
王は興奮して喋り始めた。口からは今飲んでいる酒が飛び散る。
「王よ、今は世界の危機なのです‼︎このような非常事態に金銭を要求するとは…あなたは世界がどうなっても構わないとおっしゃるか‼︎」
「うるさいぞい‼︎わがままなのはそっちだえ!突然押しかけ、奴隷を渡せと?
無礼者じゃ、無礼極まりないのじゃ‼︎」
王は興奮してもうどうにもならなくなってしまった。
機関の使いは、緊急の今これ以上交渉している余地はないと判断。王の要求を聞き入れすぐさま奴隷達を戦線へと派遣してもらうよう依頼した。
ログレス王国、ログレス城ー
機関の話によると、今回の戦いは魔物の対処がこれまで通りとはいかないようだった。
また魔王出現から侵攻までの速さが凄まじく、布陣の展開に手こずっていたのも事実だった。
ヨハンは配下である王国騎士大隊の面々に戦線の防衛を指示。更に前回の魔王出現時、あっという間に制圧されたことを踏まえ周辺諸国と連携を取り、防衛に当たることにした。
だが問題はまだいくつか残っていた。
「アーサー王、大隊の布陣は概ね完了致しました。」
「そうか。さすがはダンテ将軍だ。だがまだ安心はできんな。」
城内作戦会議室ー
ここでヨハンは王国騎士大隊の大将軍ダンテと現時点での作戦の進捗状況の確認を行っていた。
ダンテは国内だけでなく国外にもその武勇が知れ渡るほどの武術、魔術の使い手であり彼の存在はヨハンにとって、またログレスにとって大きな支えだった。
剣術、体術、槍術、暗殺術、攻撃魔法、回復魔法、補助魔法と数多くの武技に精通した根っからの武人である。
ログレスの鎧に身を包んだ長身、金髪碧眼で肌は白く、落ち着いた雰囲気の中に隙のない、言い方を変えれば近寄りがたい厳格さを備えた人物だった。
「遠征に出ている3部隊が戻るまであと2日ほどといったところですね。魔物の侵攻予定時刻はあと16時間ほど…まず援軍のことを考えるのは得策ではありません。」