魔王討伐3
「首都から取引の要請がきたぞい。」
首都から遥か南、大砂漠の奥に存在する国、キングピサロ帝国ー
遥か昔に人間では決して入ることができないとされた未開の地、亜人種の空中都市に侵攻した一族の末裔が治める国だ。
だがその実態は捕らえた亜人種や孤児達を奴隷として扱い、またその奴隷を貿易に使うことによって発展した史上稀に見る最悪の国家であった。
もともと大砂漠を経由しなければ首都へは行けず、海域も治安がいいわけではない。主だった生産物や産業があったわけではなかったが、そういった経済問題を奴隷貿易によって解決したのは国の存続のために必然だったのかもしれない。
近年では奴隷のエルフ、ドワーフ達の技術力で砂嵐吹き荒れる砂漠を越えられる飛空挺の開発も盛んである。
そんな国に勇者機関の神官が直々に依頼を出したのである。彼等がもつ奴隷の派遣を。
国民の幸福度は決して高くはなく、むしろ低い。圧政とも言えるピサロ2世の振る舞いや奴隷たちの悲惨な生活実態は国外にも知れ渡るほどだ。
そんな国に要請しなければいけないほど事態は逼迫していた。
王の間に通された機関の使いは城下町のスラムのような有様と対照的に、贅の限りを尽くし、酒池肉林を来客の前ですら謳歌する王の在り方に吐き気を催すほどだった。
王は黄金の首飾り、宝石が散りばめられたブレスレットを身につけ、両手にはほとんど全裸に近い女たちを侍らせていた。
普段から余程いいものを食べているのだろう。その顔はパンパンに膨れ上がり、目は細く、欲望に満ちた汚れた顔をしている。
部屋には匂いのきついお香がこれでもかと焚かれており、鼻がねじ曲がるほどだ。
だが侍らせている女達の表情がどことなく虚ろなところを見るに、恐らく催眠効果のあるお香なのだろう。
「奴隷が何人必要なのかえ?」
ピサロ2世が下卑た顔つきで尋ねる。
「亜人種の奴隷を、300名ほど…」
「300とな⁉︎おほほほほ、それは大層なことだえ?」
「ピサロ2世よ、ご存知の通り、魔王が復活したのでございます。事態は緊急を要する…是非ともお力添えをお願いしたい‼︎」
機関の使いは頭を床にこすりつけ、これでもかと言うほどへりくだり、ピサロ2世に取引を申し出た。
亜人種の奴隷300名を今すぐ、飛空挺によって戦場の最前線へと派遣するのである。
魔物の侵攻度合いから見ても、勇者達では間に合わないのだ。