魔王討伐
今より遡ること3年前ー
世界は繰り返される呪いのような運命と何十回目かの対峙を余儀無くされていた。
魔王が復活したのである。
空は暗黒に覆われ、地には魔物が蔓延った。
魔族は国々に侵攻し次第にその勢力を拡大させていった。
彼等の出現は何の前触れなく突然起きる。何十年周期かあるいは数年周期か、どちらにせよ人間に心休まる時間はなかったのだ。
このような事態に際し勇者を統括する世界的組織、勇者機関は各国にいる勇者達に呼びかけ、魔王討伐の号令を発したのである。
そしてそれはあの伝説の勇者、アーサーのいるログレス王国にも当然発せられた。
「アーサー王、勇者機関からの号令にございます。」
ログレス王国玉座、使いの者から知らせを受け取り、アーサー王、17世ヨハンは遂に戦いの時が来たのだと悟った。
端正な顔つき、白銀の鎧に身を包み一目で感じ取ることができる聖なるオーラを発する勇者の中の勇者。それがヨハンだ。
「あなた…」
隣では妃であるモルガンがヨハンを心配そうに見つめていた。
空は厚い雲で覆われ陽の光はもう見えない。
「モルガン、そのような顔をするな。私は王である以前に代々続く勇者の血を引いている。これは避けられない宿命なんだ。」
ヨハンは不安そうな表情のモルガンとは違い、余裕のある爽やかな顔つきで彼女をたしなめた。
玉座には王国騎士団の名だたる兵達が膝まづき控えている。
ヨハンは彼等に呼びかけた。
「諸君!この度魔王が復活した。我々は勇者として魔王を何としても討伐せねばならない。この国の兵は精強だ、私はそれを信じている。家族を、民を、国を守ってこそ我々は17代も生き残ることができる!
剣を取れ‼︎貴殿らの曇りなき闘志こそが、この闇を打ち払うことができるのだ‼︎
これより、魔王討伐を開始する‼︎」
アーサーは傍にある鞘から剣を引き抜いて掲げた。聖剣エクスカリバー。
勇者にのみ授けられる最強の聖剣。
異世界の神話、アーサー王伝説に伝わる剣。
この世界でもエクスカリバーこそがアーサーにふさわしい聖剣なのだ。
黄金よりも華やかで、神々しいそのオーラは見るものを圧倒する。
兵達も剣を掲げ、誓いを立てた。
「我ら兵士一同この命、アーサー王、そして祖国ログレスのために‼︎」