光の使者たち4
「そうか、それは済まなかった。助けていただいたこと、深く感謝する。何より自分の無力さに腹が立つ。」
ジェームズは親指のない右手を見ながら呟いた。その声はイングリスに喉が潰されたせいか若干掠れたような声だった。
「お仲間も今や消息不明だ。今は一時休戦状態だし、俺たちはこれからもう1人の仲間と合流する。お前はどうするんだ?」
「俺は…」
「一緒に来ない?」
唐突にセミラミスが言う。ウルフもジェームズも彼女の発言に驚いて声の方を向いた。
ジェームズに至っては驚いて空いた口が塞がらない状態だった。
「セミラミス本気か⁉︎俺は構わないが…」
「お誘いは嬉しいが俺はこの有様だ。戦力にはならないし、まずなれない。
それに仲間も探さないといけない。」
「今のあなた1人でそれができるの?」
「……それは…」
単刀直入すぎる発言に今度はウルフがフォローに入る。
「おいおいセミラミス!」
「私たちが亜人種だから?」
彼女の発言に一同が沈黙する。
そう、ジェームズは真っ当な人間、ヒトだ。
未だ亜人種に対する根強い差別は人間の間では残っている。
「違うそうではない。私では役不足だと言っているのだ。」
「じゃあ言い方を変えるわ。私たちと一緒に来て、これは命令よ。助けてあげたんだから協力してくれてもいいわよね?」
「か、構わないが…」
「あなたの仲間も探してあげるから。
ただし、人間と亜人種が手を組んでいたら怪しまれるし、悪い意味で目立つわ。」
自虐しながらセミラミスが言う。
「あなたはこれから私たちの協力者よ。メインで戦いに参加はしなくていいから、敵の情報とか、役に立ちそうなことを伝えて欲しいの。」
彼女の強かさが垣間見える。
「了解した。これからは協力関係だ。」
「テレパシーは使える?」
「もちろん。それで情報のやりとりをしよう。」
トントン拍子に話が進んで行き、ウルフは流れについていけなくなった。同時にセミラミスの強かな一面を見ることができて嬉しくもあった。
「しかしあれだな。」
ジェームズが呟く。
「私は亜人種に対して今まで間違った見方をしていたようだ。あなた方を見てそれを感じたよ。」
「………フン、竜人を探しに行くぞ。」
「うん。」
「私はその竜人に挨拶だけでもさせていただきたい。」
「構わねえがあいつはおっかねえぞ。」
「私は仮にも勇者だ。」
人間と亜人種、今までいがみ合っていた胃種族が手を組んだ。この出会いがどのような化学反応を起こすかはわからない。だが不思議とこの3人に不和はないようだ。
3人は青空の下歩き始めた。