光の使者たち3
「参加するに決まってるだろ‼︎あいつらは、竜人を、セミラミスを…絶対許さねえ‼︎」
ウルフは満身創痍だったが、結界の中でテレパシーを聞き、再び闘志が燃え上がった。
セミラミスは竜人の血で致命傷は避けたが、未だ意識は戻らない。ジェームズも同様だ。
コロッセオからセミラミスを抱きかかえ、ジェームズを引きずりながら這々の体で逃げ出した矢先のこの出来事だ。
イングリスから受けた傷がまだ痛む。
ウルフの意思を聞き入れ、ゴーレムは地面へと消えた。ウルフは倒れた。
「血を流しすぎたか…竜人…無事なのかよ…」
薄れてゆく意識の中で竜人の言葉が蘇る。
ー自由を掴むんだろ?ー
「あいつは凄いやつだ。堂々としていて…まっすぐで…俺はあいつには及ばない。魔法も使えないし、チキン野郎だ、狼なのによ…」
その直後暖かい光がウルフを包む。
「?」
セミラミスが意識を取り戻していた。彼女は白魔法でウルフの傷を治癒していた。彼女の暖かい雰囲気はまるで聖母のようだ。
「彼を迎えに行こう、ウルフ。」
セミラミスの耳が上下する。気がつくと彼女に見とれていた。ウルフは今の独り言を聞かれたかと思うと恥ずかしさで地面に顔を伏せた。
「あ、当たり前だろ‼︎あいつは多分まだコロッセオにいるはずだ、行くぞ!」
「ええ。それと…」
「何だよ…」
「助けてくれてありがとう。今回の戦いでは私、足手まといにしかなってなかったから…」
セミラミスは目を伏せた。
今の彼女の顔はあの奴隷の頃のような、暗く冷たい表情になりつつあった。
ウルフはそのことに気づくと起き上がり、毛の汚れを払いながら言った。
「そんなことはない。俺が言えたことじゃないが…セミラミスのおかげで俺は助かったんだ!足手まといなんて思ったことは一度もない!」
「………」
「だからそんな顔するなよ。このパーティは俺たち3人で一つなんだからさ!」
セミラミスはそれを聞くと、表情に明るさが戻った。
「ん……一体…ここは…?」
その時、ジェームズの意識も戻った。
「お‼︎目が覚めたか!」
「うわあ‼︎な、なんだお前ら⁉︎」
ジェームズが驚くのも無理はない。彼は一連の亜人種たちの救出劇を知らないからだ。
イングリスとの戦いで意識を失い、目が覚めたら目の前には人外の者たち。
ジェームズは警戒心を露わにした。
「何だその言い草は!俺たちはお前の命の恩人だぞ‼︎」
「やめなよウルフ。彼は意識を失ってたんだからわからなくても当然よ。」
それからセミラミスが一連の流れを説明し、ジェームズは状況を理解した。
彼は竜の血で一命は取り留め、傷もほぼ全快したが唯一、右手親指だけは再生できなかったようだ。