戦場の修羅たち
「す…すごい…あれほどの大群を剣の一振りだけで…」
フィンガルトからはるか西、ここアルミエーレは隣国カルタジャーラと領土、資源争いを度々繰り返していた。
アルミエーレは領土内に多くの鉱山があり、そこから取れる鉄やミスリルといった鉱物資源が国の経済を成り立たせていた。
しかし、隣国カルタジャーラとの国境が曖昧で、そのせいで資源争いが頻発。
やがてそれは両国間の戦争へと発展した。
両国の戦争は長くに渡って膠着状態が続きお互いに疲弊していた。
そこでこの状況を打破すべくアルミエーレはある人物に協力を申し出た。
「ガハハハハハハ‼︎我がバルムンクに敵うものなし!」
2mは超えるであろう身長、筋骨粒々な肉体、そしてその2mの体躯と同じほどの大きさの大剣〝バルムンク〟を携えた勇者にー
「カルタジャーラの大群を一掃したか…!
さすが噂に違わぬ豪傑よ!」
アルミエーレの兵達はこの大男、アドルフの後ろでただこの男の戦いぶりを見ているだけしかできなかった。
「我こそはジークフリート14世、アドルフ!
腕に覚えのあるものは名乗り出よ‼︎
おっと、敵兵は残らず駆逐してやったからもういないのか、ガハハハハハハ‼︎」
アドルフは高らかに自分の勝利を宣言し、アルミエーレの城へと戻った。
「あんなのがいたら俺たちもう戦わなくていいんじゃないか」
「あいつ1人でカルタジャーラとの戦いは決まったな!」
兵達の畏怖とも賞賛ともとれる言葉を聞きながら、アドルフは威風堂々と凱旋した。
「戻ったぞ!」
「おおよく戻ったなアドルフよ。此度の勝利は貴殿の活躍の賜物だな。」
アルミエーレ王は今回の戦いで、カルタジャーラへの懸念が払拭できたのがよほど嬉しかったのか、アドルフを迎えに玉座の間から出てきていた。
王は側近の兵達に詰所で待機するよう言い渡し、玉座へとアドルフを連れて行った。
玉座の間は城の中でも一際絢爛な作りをしており、それはアルミエーレの繁栄を表していた。
「ここアルミエーレは鉱山の国。何世紀にも渡って先祖代々鉱山資源の輸出によって成り立っていた。
それをあのカルタジャーラは…自国の経済が厳しくなったのを自分たちのせいとも認めず、国境を侵し、そのうえ鉱山まで自分のものと主張しおる。
たまげた奴らだ。」
王の話を跪きながらアドルフは聞いていた。
しかし、アドルフの体は小刻みに震えていた。