光の使者たち
「イングリス、あなたの責任よ。」
光のゴーレムは勇者たちを結界で閉じ込める行動をとっていたが、唯一教会の戦士たちに対しては攻撃を行っていた。
コロッセオで竜人と戦っていたチェスター達は突如目の前に現れたゴーレムを対処せざるを得なくなっていた。
竜人はゴーレムの結界に覆われ、こちらからは手が出せなくなってしまった上に複数のゴーレムが彼等に襲いかかったからだ。
「当主殿、これではキリがない。今のテレパシーでもあった通り、我々はこれから狙われる立場だ。
私が申し上げるのもおこがましいが一旦退却いたしましょう。」
イングリスがゴーレムを叩き潰しながら言う。
既にコロッセオにはゴーレムがぞろぞろと集結しつつある。
「本当にあんたが言えた立場かしら?
どちらにしろ後であなたは折檻を食らうわ」
イングリスは黙る。
一方、聖剣で黙々とゴーレムを倒しながらチェスターは竜人に止めが刺せなかったことを悔やんでいた。
次々と瓦礫のように積み重なるゴーレムを聖剣で吹き飛ばしながらチェスターは怒りの感情を隠しきれずにいた。
そのあまりの恐ろしさにイングリスとハンナは身震いした。
「お前達、今は退くしかあるまい。時空魔法の準備をしろ。どのみち首都にはおれん。
しばらくヴァルハラにいるとしよう。」
その言葉を聞き、2人は準備を始めた。
コロッセオ内部で連携して大規模な時空魔法を発動するためだ。
絶えることなくゴーレムが襲いかかるが、3人は魔法を発動するために攻撃に耐えた。幸い傷を負ってもチェスターとハンナはすぐに回復するため、さほど影響はないようだった。イングリスは持ち前の耐久力でゴーレムの攻撃に耐えていた。
3人はそれぞれコロッセオの端に立ち、3人で三角形を成すように位置し、呪文の詠唱を始めた。
光り輝くゴーレムよりも遥かに強い光がコロッセオを包む。コロッセオに魔法陣が現れた。やがて魔法陣が宙に浮かぶと、魔法陣は回転しそこから空中に光の城が現れ始めた。
3人は魔力を全解放させ、空に浮かぶ光の城へと吸い込まれていった。これがチェスターの言うヴァルハラなのだろうか。
光の城へはゴーレムは近寄れず、近づいただけでバラバラになってしまった。
そして光の城もやがてフェードアウトするように空に消えていった。
「亜人種か……俺の右手を切断し、クラウ•ソラスの能力を見せることになろうとはな。
いずれこの手で引導を渡してくれる。」
チェスターは聖剣を鞘に収め、眼下のコロッセオを見ながら呟いた。