休戦
「コロッセオ内部、周辺至る所で戦いが始まっています‼︎これでは首都の住民に被害が及ぶ…ジェラルド殿、今すぐご命令を‼︎」
デニスがジェラルドに詰め寄る。
彼らはコロッセオで混乱が起きた際、部下に事態の収拾を任せ本部へと帰還していた。
だが暴動、コロッセオからの邪悪なオーラ、突如現れた雷雲など異変が立て続けに起きたため、対策を立てていた。
「マキシの準備がもうじき終わるそうだ。
合図があり次第、すぐにでも始める。」
そのとき彼らの前に1人の男が現れた。
やや小柄で顔つきに幼さは残っているが、その表情は人形のようで一切の感情が読み取れない顔だった。
「すまない、遅くなってしまったね。だけど大丈夫、準備はできたよ。」
「マキシお前、準備に時間をかけすぎじゃないのか⁉︎
本来ならあと1時間は早くあの騒ぎを止められていたはずだ!
それをお前は…」
デニスは怒りを抑えているが、端から見れば抑えきれてはいなかった。
「デニスやめろ。準備は順調ではなかったのか?」
ジェラルドもマキシに詰め寄る。
この男マキシもまた勇者機関の神官だ。
彼はいついかなる時でも冷静さを失わない、まるで機械のような男だった。
デニスとジェラルドを一瞥すると、椅子に座り話し始めた。
「ご存知の通り、教会側がこちらに敵意むき出しで行動を起こしたんだよ。
しかも当主は17歳で就任したばかりの若手中の若手さ。
ノーマークだっただろ?あのゴドフロアに対しては。能力もわかったもんじゃない。」
「それとこれと何の関係がある?」
「大ありさ。いずれ彼らは私達と戦うだろう。その時に備えて情報収集してた。」
デニスがマキシの胸倉を掴む。
マキシの目をまっすぐ睨みつけながら怒りを露わにした。
「既に機関の死者も出ている。コロッセオ内部だけではなく周辺でも暴動が起き、勇者たちまで暴れる始末だ。
貴様責任はどう取るつもりだ⁉︎」
「そんなに怒らないでよデニス。いくらかの犠牲はやむを得ないって言ったのはジェラルド殿じゃないか。
それにこれはもともと戦争だよ。300人もいる勇者は少し減らした方がいいじゃないか。」
「………デニス放してやれ。ここに来たということは準備ができたという合図で構わんということだな。ここから先不都合が起きたならば、責任はマキシ、お前が被ることになる。異論はないな?」
「はいはい、誓いますよジェラルド殿。」
「よし、では始めるぞ」