聖剣の真価5
「貴様はよくやった方だ、褒めてやろう。並の者なら今ので全滅して当然だからな。」
チェスターの身体が輝き出す。
彼のオーラを目の当たりにした竜人は何か気付いたような感じで言った。
「そうか、お前そういうことだったのか。
お前のその異常なオーラ、何なのか気になってしょうがなかったが、全部精霊なんだな?」
チェスターの背後、彼を覆い、見守る精霊。だがその数が尋常ではない。何体いるのかわからない。見えるものからすれば、チェスターは精霊の数の多さで見えないだろう。
「そうだ。やっと気付いたか。壮観だろう?
これが聖騎士の力だ。この精霊達の加護こそが、聖なる力の源。傷や呪いはたちどころに回復し、運勢に左右される不確定な事象はことごとく俺に有利に作用する。」
チェスターの傷は全回復し、切断された腕だけでなく、その鎧の腕の部分まで元通りになっていた。
聖剣が竜人に襲いかかる。
チェスターが使っていた時と遜色ないような動きで竜人に攻撃してきた。
チェスターは懐から短刀を取り出すと聖剣と共に竜人に攻撃し始めた。
「この状態でどこまで対処できる?亜人種よ。」
竜人は聖剣、チェスター両方の攻撃を防いでいたが、一瞬の隙をつかれ、聖剣からの斬撃を腹部に受けた。
畳み掛けるようにチェスターが背中を切りつける。
こうなるともう止まらない。実質2対1の状態、相手は万全、そうなると竜人の不利は決定的だった。
ガードもできないまま攻撃を受け続けるしかなかった。
やがて竜人は倒れた。
「戻れ、クラウ•ソラスよ。」
チェスターは短刀を懐にしまうと、右手を前方に差し出し、聖剣を掴んだ。
「これが聖剣クラウ•ソラスの力だ。
持ち主から離れても自律して行動する。武器は持っていなければ話にならない、相手に使用される、そういった弱点を克服した、まさしく最強の武器だ。」
見上げるとイングリスとハンナもいた。
「お前たちは野蛮で困る。首に噛みつきおって…節操がないんだ節操が‼︎」
イングリスが竜人を踏みつける。
「あの女と狼男は尻尾巻いて逃げたのね。あんた1人だけ英雄気取り?」
ハンナは竜人の両腕両足に氷柱を打ち込んだ。
「こいつらも俺と同じ精霊の加護を受けている。これが教会の戦士の力だ。
お前たち、離れていろ。こいつはしぶとい。グランドクロスで仕留めてやる。」