聖剣の真価4
「あの召喚術師、冷静な判断ができなくなってたみたい。よっぽど当主が怖かったのね。」
ちらりとハンナの方を見ると呪文が帯状になって彼女の身体に巻きついており、動きができなくなっているようだ。
更に氷柱もいくつか刺さっている。
「傷を治してあげたいのだけれどあいにく魔力が足りなくて…」
見ると彼女の体には血の跡がいくつもあった。
「セミラミス、氷柱の攻撃を受けたのか…?」
ウルフが問いかける。
「見てたのね、そうよあの女氷柱ばかり見境なしに連射してきたんだもの。避けきれず何回か受けてしまったの。」
「まあ何にせよ、みんなよく生き残ったよ。」
3人は戦場となったコロッセオを見回す。
崩壊した壁、兵士の死体、炎が消えず燃え盛っている箇所もある。
そしてその中にあのジェームズの姿もあった。
竜人は急いで駆け寄る。
意識はないが、まだ息はある。
彼は切り裂かれた翼から血を、彼の口に垂らした。
「間に合ったぜ…ギリギリだったがな。」
「ふう〜よかったぜえ。さあ早くこっからとんずらだ。
それにしても腕を切断して聖剣を弾き飛ばしたんだな。
いくらなんでも持ってさえいなきゃ、武器なんて何の役にも立たないからな。」
ウルフが関心したように地面に転がったチェスターの腕を見る。
「……この戦いは、これからどうなるんだろうね。」
セミラミスが呟く。
確かに第一回戦からこの出来事は予想外だったはずだ。
「あとは機関の人間が何とかするだろうさ。
さあ、ここから出て休もう‼︎」
次の瞬間、セミラミスの身体を聖剣が貫いていた。
セミラミスは吐血し、その場に倒れこんだ。
2人は突然の事態に一瞬何が起こったのか理解できなかったが、すぐさまセミラミスの側に駆け寄った。
聖剣は彼女の身体から抜かれた。
しかし不思議なことに聖剣は一人でに動いていたのだ。
聖剣は切断された右腕と共に宙に浮いていた。だが、腕が邪魔なのか左右に振り回しながら、腕を振り払った。
腕はボトリと地面に落ちたが、聖剣は竜人達の方へその剣先を向けた。剣は喋らず無機質なままだったが、敵意があるように見える。
「セミラミスしっかりしろ‼︎」
「一体何が起こったんだ⁉︎剣が一人で動いてやがる‼︎」
竜人はすぐさま血をセミラミスに飲ませ、ウルフに安全な場所へ連れ出すよう言うと聖剣と対峙した。
「腕を切り落とすとはやることが違うな、亜人種よ。」
声の方にはチェスターがいた。
だがおかしい。傷が回復している。切断されたはずの右腕も元通り生えている。