聖剣の真価3
「ここまで俺の攻撃を捌き切るとは、いい腕をしている。」
竜人はチェスターの攻撃をかわすのに精一杯で喋っている余裕などなかった。
彼の脳裏にはなぜ炎が通用しないのかということがあったが、それを深く考えている時間がなく、有効打を与えられないまま今に至る。
チェスターが聖剣の刀身の呪文を指でなぞると、彼の身体が光り始め、やがて強い光を放った。
「くっ、目くらましか‼︎」
光によって竜人は動きを止めた隙にチェスターは追撃をしかけ、竜人の足を切りつけた。
竜人は態勢を崩し倒れこむ。
竜人は炎を吐いてチェスターを牽制しようとしたが、その攻撃は見破られており、彼の眼前からチェスターは姿を消していた。
「奴は…どこだ…?」
すると彼の真横からチェスターが聖剣で翼を切り裂いた。
「がっ…ぐあああ」
しかし竜人はチェスターが接近した好機を逃すまいと、聖剣を持つ右腕ごとチェスターの腕を切断した。
チェスターは声を上げず、切断された右腕を見た。
彼の右腕は聖剣を握りしめたまま地面に転がっている。
竜人はここぞとばかりに深手を負ったチェスターに対し猛攻を仕掛ける。
チェスターに対し、打撃の連打。右腕がなくなったことでガードができない相手の右側から執拗に攻撃を行う。
チェスターは防戦一方になる。怪我をした部位への攻撃で彼は始めて苦痛に歪んだ声を上げた。
竜人はさらに間髪入れず回し蹴りを鳩尾に叩き込んだ。
チェスターは連続攻撃を受けてその場に倒れた。
切り裂かれた翼が痛む。なかなかの強敵だったが、圧倒的な力による部位破壊は亜人種ならではの戦法だ。
「これで…ひと段落着いたか……あいつらはどうなった?」
「よう竜人、お前もボロボロじゃねえか…」
声のする方を向くとそこにはウルフが左腕と右足に怪我を負いながら歩いてきた。
それだけでなく口の周りや身体も血で染まっていた。察するに壮絶な戦いだったのだろう。
左腕は最早機能しておらず、力なくだらんとぶら下がっている。
右足も重症なのか引きずってやっとのことで歩いてきたようだ。
「セミラミスは無事なのか?」
ウルフが竜人に尋ねる。
「わからねえ。すまないがそちらに構ってる余裕がなくてな。」
「私は無事よ。」
セミラミスは無事だった。
魔力を相当使ったのか、かなり疲弊している様子だが彼女もまたなんとか生き残ったようだ。