正統なる勇者5
「はじめましてっ!グリージャです!」
戦いの後、控え室で面会したヨハンは、このグリージャという女性がグラップラーだとはにわかに信じられなかった。
あどけない仕草、コロコロと表情が変わり喜怒哀楽がはっきりしている、明るく快活な少女、それがグリージャの第一印象だった。
「今はこうやってグラップラーとしていろいろな戦いの場に参加してるんです。旅費もバカにならないんですよ〜、あっそうそう、私グラップラー以外にもシーフとして活動もしてて、みなさんの役に立つような武器だったりアイテムもたくさん持ってるんです!
これなんかはー」
グリージャは話し始めたら止まらないたちだった。このまま彼女の話を止めなかったら日がくれてしまいそうなのでペンドルトンが彼女の話に割って入った。
「グリージャ殿、そのアイテムは後ほど披露していただきましょう。
ヨハン殿、彼女はグラップラーでありながら世界各地を転々とし、武器や宝具、アイテムを盗み出すシーフとしても活躍しておられる方です。」
ペンドルトンの紹介にグリージャは誇らしげに胸を張り、微笑んだ。
「ヨハンさんって元勇者なんですよね?私は魔王討伐には参加してないんですけど、話は聞いてました!」
グリージャがこのまま話続けたら余計なことまで言ってしまいそうだったので再び、ペンドルトンが割って入った。
「この度の戦い、魔王討伐に参加した強者たちとの熾烈な争いとなるのは明白。
そこで私は戦闘力、そして貴重で有用なアイテムの数多くに目をつけ、彼女を抜擢したのです。
魔王討伐に参加していないことについてはご心配なく。機関側も魔王討伐に参加した者全てを把握しているわけではございませんので。」
「えー!アイテムのために抜擢したとかペンさんひどい!」
「ヨハン殿、グリージャ殿はとても心強いお方だ。
いざ我ら3人で、共に戦い抜きましょうぞ!」
2人の掛け合いを見たのち、ヨハンはしばらく黙っていたが少ししたのち口を開いた。
「いいだろう。俺たちで勝ち抜くぞ」
「ほう、マーリンの直系と女グラップラー、そして姿をくらませていた元勇者か。なかなか面白そうだぞデニス。」
ジェラルドは手元の書類に一通り目を通した。事務仕事の疲れもあるのか目の周りを少し指で押していた。
「この3人が最有力候補でしょうか」
「いいやどうだろうか。この3人以外にもまだまだ面白そうなのはいるぞ。
例えば…この3人はどうだろうか」