竜人VSチェスター4
「当主殿、イングリスはまだ気を失っているようでございます。
それにじき、カーバンクルの魔法が切れるでしょう、いかがなさいますか?」
竜巻内部ー
召喚術師ハンナと聖騎士ゴドフロア10世チェスターは未だ戦いに参加してはいなかった。
ハンナは召喚獣の維持で魔力を使ってはいたが、さほど影響はないようだった。
外では亜人種たちとイングリスの戦闘が行われていたようだが、イングリスは気絶してしまったようだ。思わずため息が出る。
「また変ないたぶり方を試そうとして返り討ちにあったのね。この立場でなければ、あんな奴とは絶対一緒にいたくないわ。」
「ハンナ、召喚獣を戻せ。」
しびれを切らしたチェスターが言う。
チェスターは戦いを楽しみにしていたが、イングリスとハンナに出張られて何もできずにいたからだ。
「今すぐでございますか?しかしこのまま消耗させれば私1人でも大丈夫かと思われますが」
「お前たちこの俺に力添えをしろと言いながら、何もさせぬのか。
であれば最初から俺がいる必要はなかったのではないか?」
ハンナはあまりの威圧的なオーラに竦んだ。
これ以上下手なことをすれば自分ですら首が飛ぶかもしれない。
そんな恐怖がハンナの中に生まれた。
「か、かしこまりました。ご無礼お許し下さいゴドフロアよ。」
「そもそもあいつの戦いは冗長でつまらん。弱いものをいたぶれるとわかると、戦いをそっちのけでそちらに集中する。」
「おっしゃる通りでございます………」
気まずい沈黙が流れる。
ハンナは召喚獣を戻した。竜巻が消え、コロッセオを覆っていた雷雲もなくなった。
同時にカーバンクルも消えたことでバリアも消滅した。
「ハンナ、イングリスを叩き起こせ」
「……承知致しました。」
ハンナは魔法で水の球を作り、それを気絶しているイングリスの頭に被せた。気絶していても呼吸ができないことでイングリスは半ば強制的に意識を戻された。
「うえっ…げほげほっ…ごぼっ…」
「イングリス…当主がお怒りよ。」
水の球はなくなり、イングリスは怯え切った目でチェスターを見上げた。
「貴様はどれだけ恥を晒せば気が済むのだ?」
「げほっげほっ…も、申し訳ありません…」
「誰が気絶していいと許可した?ろくに敵を消耗させずに、趣味に興じるか。いい身分だな貴様は。」
「面目次第もございませぬ…」
チェスターがクラウ•ソラスをイングリスの首元に当てる。
「教会の戦士ならば誇りをもって戦え。次はないぞ、わかったな?」
チェスターはクラウ•ソラスを構えるとイングリスとハンナの前に出た。
「貴様らは俺を支援しろ。あの亜人種共に見せつけてやるのだ、教会の力をな。」