竜人VSチェスター3
「どけよてめえええええ‼︎」
壁際で講釈をたれていたイングリスの右側頭部を竜人の強烈な膝蹴りが直撃する。
イングリスは再び吹き飛ばされ倒れた。
「ウルフ無事か⁉︎」
圧迫から解放されたウルフは咳き込みながら無事なことを竜人に伝えた。
だがそんな彼らの頭上を落雷が襲う。竜人が間一髪でウルフ共々、落雷から逃げる。
「くっそ…この落雷もやばいな」
「かっ…げほげほっ…‼︎」
「ウルフ喋るな!セミラミスは隠れているだけだろ?今に回復してくれるさ」
「すまねえ…!しかしあの男…あいつは正真正銘の狂人だ!
あんな奴が教会の使いなのか⁉︎」
ウルフがやや怯えたような目つきで倒れたイングリスを見る。
ウルフの身体を今度は暖かなオーラが包み込む。セミラミスが回復魔法をかけたのだ。
痛んだ腹部が元に戻っていく。
「作戦変更だウルフ、イングリスは無視だ。まずはこの雷雨を何とかするぞ。
そうしないとこちらが消耗するばかりだ。」
「確かにな。となると召喚獣本体を叩くしかないな。どこに隠れてやがる…」
2人は辺りを警戒する。あらゆる方向ならの攻撃に備え、お互い背中合わせで構える。
「それにしてもおかしくないか、竜人。」
ウルフが竜人に問いかける。
「なんだよ」
「俺たちは仮にも亜人種だ。ただの人間相手にここまで苦労するはずがないだろ?
身体能力、魔力、感知能力、全てが俺たちより高いわけがないんだ‼︎」
「確かに頑丈なやつだよ、あいつは。
けどここで自分の力を過信するのは危険だ!雷来るぞ‼︎」
竜人がそう言うのとほぼ同じタイミングで雷が2人目掛けて落ちた。
2人は難なくこれを避けたが、未だ召喚獣攻略の糸口は掴めていない。
イングリスは気絶しているようだが、今までのことを考えると、恐らく少し経てば意識は戻るだろう。
それまでになんとかしなければならない。
ー聞いて……雷雨の……の正体がわか……のー
突然2人の頭にセミラミスの声が響いた。
彼女のテレパシーだ。
あいにく2人ともテレパシーは使えないため、彼女からの一方通行の伝言を受け取っていることになる。
だがこの雷雨を打破する貴重な情報だ。
しかしうまく声が聞き取れない。おそらく竜巻の中にいる術師がジャミングの魔法を使っているのだろう。
ーあの……が…雷なの……避けない……でー
ノイズまじりのテレパシーはやがてフェードアウトするように聞こえなくなった。




