生と死5
「仕方あるまい、だがこの俺直々に戦うのだ。お前たち、少しでも見苦しい真似をしてみろ、命はないと思え。」
ゴドフロア10世チェスター。若干17歳にして当主となった聖騎士。
味方をも威圧するその態度はまさしく圧倒的であった。
あのイングリスやハンナでさえ、当主の前に膝まづいている。
「クラウ•ソラスを使う。この亜人種共は一筋縄ではいかないようだ。」
悠々と、まるで庭園でも歩くかの如く優雅に歩くその姿には一切の付け入る隙がなかった。
近づこうものなら両断されかねない威圧感。
ただものではないことだけは確かだった。
イングリスとハンナもゆっくりと起き上がり、こちらに対峙する。
竜人は乗ってきたワイバーンにコロッセオの外で待機するよう指示した。
「おい竜人、あいつはやばい。気をつけろ。」
ウルフがわずかに後ずさる。
「………来る…!」
セミラミスが呟いたのと同時にイングリスが猛スピードで竜人めがけて突進する。
ウルフとセミラミスは竜人の支援をしようとしたが、間髪入れずハンナの召喚獣による攻撃が始まった。
目の前に大型の竜巻が現れた。それは召喚獣ケツアコアトルのものだった。
竜巻はハンナとチェスターを覆い、攻撃を寄せ付けない結界のような役割を果たしていた。
それだけではなく、コロッセオ上空には雷雲が発生している。
さらにもう一体小さな緑色の愛らしい獣が姿を現した。
「カーバンクル…あの女の人すごい召喚能力ね。」
カーバンクルは額に宝石が埋め込まれており、その額の宝石の輝きで、パーティにバリアを張る魔法を使える。
カーバンクルにも何種類かおり、額の宝石の色で大まかに何を反射するバリアか識別できるのだ。
「ウルフ‼︎あのカーバンクルの額にある宝石が何色かわかる?」
セミラミスがウルフに問いかける。
「赤だ‼︎赤い色の宝石だ‼︎
でもよ、あいつが召喚獣をどれだけ展開できるか、まだわからないんだろ⁉︎
俺たちの視界を幻惑させる召喚獣とかを出して、色を誤認させてる可能性はないのか⁉︎」
「ウルフらしくない分析ね。
でも大丈夫よ。私も何体か召喚獣と契約してるからわかるけど、召喚獣は召喚するときにわずかながら独特な気配を出すの。それが召喚獣の特徴でもあり弱点。
だから心配しないで。そんなものを出したらすぐわかるから。」
カーバンクルの額が光り、チェスターのパーティを包み込む。竜巻で見えはしないが、おそらく竜巻内の2人にもカーバンクルの魔法がかかっているに違いない。