悪魔との攻防5
「気持ちの悪い男だ。その好奇心とやらがあるから、俺を攻撃せずに様子を伺うような真似ばかりしたのか。」
「察しがいいようで何より。計らずも君は自分の手の内をどんどんさらけ出してくれた。私はまだ名前さえ言っていないのに、ね。」
「俺の正体を知ったところで無駄だ。お前の動きは鈍い。
だからこそ背後にスケルトンを何度も配置できたんだ。」
「確かに私は身体能力では他の者より劣る。」
「幻覚か分身か…タネはわからないが、わからないところで問題じゃないのさ。何回俺の前に姿を見せようが、その度にお前を消していく。それで事足りる。」
「わからないことが問題じゃない、だと?」
それまで大人しくしていた男だったが、やや怒ったような、落胆したような表情を見せた。
「君はわからないことをわかるまで探究したいと思う気持ちはないのかね⁉︎」
突然男が感情を露わにする。
普段静かな人物が不意に見せるこういった行動はえてして、他人によりいっそうの警戒心や不安を与えるものだ。
この男も例外ではない。
「なぜなのかという思考に至るからこそ、人は人であるのだ!考えることをやめるということは死ぬに等しい!
「死んでなんかいない!
俺は確かにここにいる‼︎この2人もだ!」
男の一言が今度はアンセムの逆鱗に触れた。
アンセムが怒ったことで逆に男は冷静さを取り戻した。
メガネの位置を直しながら言う。
「くくく…君は死が怖いのだな。」
アンセムは答えず、男を睨む。
「ならばなぜ…君は死人を連れているのかね?死を恐れるはずの君が、だ。」
次の瞬間男は背後から現れたゾンビに喉笛を食いちぎられていた。
「人の神経を逆撫でするのはうまいみたいだな。
言っただろう、何度でも消してやる、と。」
「なぜ君はそんなに単調な攻撃しかできない?」
男はアンセムの後ろ、意識のないアイリとグレンの近くに再び現れた。
「お前…‼︎」
「ほう…やはりこの2人からは生気を感じない。やはりそうか、そうなのだな…」
男は2人をじろじろと観察しながら1人でぶつぶつと呟き始めた。やがて視線を地面に落とし、呟きながらその場を右往左往し始める。
あまりの不気味さにアンセムは身構えているしかできなかった。
しばらくその場をうろうろしていると、男は歩くのを止め、アンセムの方を見ながら何か確信を得たような顔つきで言った。
「君はネクロマンサーだ。」