悪魔との攻防3
「くくくく、随分と面白い仲間じゃないか。
もう少し見せてもらえないかね?」
アンセム達の目の前に現れたのは黒い服を着て、メガネをかけ、やややつれた感じの男だった。
その風貌から異様さは際立っているものの、さして強そうな雰囲気もせず、むしろ1対3の状況で堂々と姿を見せたことにアンセムは驚きを隠せずにいた。
だがグレンを操っている魔術師はあの男の底知れぬ何かを感じ取っていた。
「パーティ同士で話し合っているところに出しゃばってくるなんて趣味が悪いな。」
『アンセムよ。下手な行動は取らんほうがいいぞ。あの男はー
魔術師が話をしている最中、黒服の男は突然背後から現れた何者かによって斬り伏せられた。
紫色の毒々しいオーラを纏った骸骨の兵士、スケルトンによって。
下顎の骨を上下にカチカチと鳴らしながらスケルトンは間髪入れず、斬り伏せられた男に剣を突き刺す。
「残念だがお前のような奴と遊んでいる暇はない。
それよりも魔術師、早くグレンを元に戻せ。」
アンセムがスケルトンを召喚したのだ。ネクロマンサーである彼にとってスケルトンやアンデッドの召喚は最早お手の物である。
その能力には、かつての白魔導師の面影はない。
アンセムは相変わらず人形のように動かないアイリとグレンを元に戻すため、魔術師に食ってかかる。
だが魔術師はグレンを通して落胆の溜息をついた。
『人の話は最後まで聞くものだ、アンセム。今の迂闊な行動は間違いなく命取りになる。』
「何を言っているんだ!あの男は間違いなく死んだ。」
「ああそうさ、今の男は間違いなく死んでいる。」
アンセムはぎょっとして声の方を向く。
そこには先ほどスケルトンに倒されたはずの男が何事もなかったかのように立っていた。
「そんなに驚かなくてもいいじゃないか。しかし、君は面白いな。
スケルトンを召喚するなど並のクラスではできん芸当だ。」
男は目をギョロリとしながら、品定めするかのような目つきでアンセムを眺め始めた。
メガネをくいっと上げながらアンセムのことを観察し、時折ぶつぶつと独り言を呟く。
その様は正直不気味という一言に尽きる。
「お前、魔術師の類だな。俺に幻惑をかけているのか、それとも分身でも作り出したか…」
アンセムは周囲にさらにスケルトンを10体ほど展開した。地面から剣を持った骸骨達がわらわらと湧き出る。
それは白魔導師のローブを着たアンセムとはあまりにも不釣り合いな光景だった。
「ほう…君は白魔導師ではないのだな。では君は何なのかねえ、とても気になるよ。」
男はニヤニヤと笑いながらスケルトンの群れを見ていた。
だが次の瞬間またしても背後から現れたスケルトンによって今度は地面に引きずり込まれていった。