ヨハンVSアドルフ4
「私が…今から…?」
最悪の事態だ。それだけは何としても避けなければならない。
今の暴走したヨハンに近づくのは自殺行為。あの無敵の肉体を持つジークフリートでさえ、ヨハンに手を焼いているのだ。
第一、敵に加勢して味方を倒すなどできるはずがない。
「あら、どうなさるのかしら。まさか嫌だなんて仰らないですわよね?」
短刀が更に彼の首に押し付けられる。
苦悩の末、ペンドルトンは決心した。
「わかりました。やりましょう!あのジークフリートに加勢して参ります!」
女は短刀を懐にしまうと魔法を解き、ペンドルトンに言い放った。
「うふふ、ではいってらっしゃいませ。」
「必ずや止めてみせましょう。ただし、貴女にも一つ手伝っていただきたい。」
「何かしら?」
意外にも聞き分けがいいことに肩透かしを食らったがペンドルトンは続ける。
「あの無敵の肉体の英雄でさえ手こずっている。そんな中に闇雲に乱入するのは愚策。
見たところ貴女は魔術師のようだ。」
「もったいぶらないで要件だけ言ってくださるかしら。」
「失礼…。あの敵は光に弱い。先ほどジークフリートが閃光弾を使った時、一瞬弱っていた。
そこで貴女には閃光で敵を幻惑していただきたい。」
「あなたがすればいいじゃない」
「できるのであれば既にやっています。恥ずかしながら光の魔法は使えないのです。ここからで構いません。それだけお願いしたいのです。」
しばらくペンドルトンをじっと見た後女は納得した。
「いいわ、特別ですわよ。ただし、あなたが段取りを組んで、それとなく私に合図してくださればね。もし私やアドルフ様に危険が及ぶようであればあなたが身を呈して私たちを助けることになりますわ。」
女は右手をペンドルトンに向けると魔法を使った。
ペンドルトンの左胸部に赤い光線が当てられた。
「保険をかけるとは…抜け目ないお方だ。」
「あなたが身勝手な行動を取ったりしたらその魔法であなたの心臓は止まってしまうの、忘れないで下さいね。」
「ええ、承知致しました。それと…お名前だけでも伺っておきたいのですが。」
「………ギーゼラ。ギーゼラと申しますわ。それよりも早く言ってくださるかしら。時間稼ぎをしているようで信用できませんの。」
これ以上粘るのは難しそうだと判断したペンドルトンはしぶしぶアドルフに加勢することにした。