ヨハンVSアドルフ3
「うおおおおおおおお‼︎」
雄叫びとともにバルムンクを構える。
ヨハンはまだ目が見えないのかよろめいていた。
だが、アドルフの気配に気づいたのか彼の方を向いた。
しかし、魔剣は地面に深く突き刺さったままで剣で攻撃はできない。
オーラも消え、剣も使えない。本人は目が見えずよろめいている。
「アーサーよ‼︎これで終わりだ‼︎」
だがバルムンクの攻撃はヨハンに直撃する寸前で止められた。
「⁉︎」
アドルフは攻撃が弾かれたと気づくと一旦ヨハンから離れ、注意を辺りに向けた。
彼がヨハンと接近戦に持ち込める唯一の状況。そんな中、攻撃が弾かれたのだ。まだ何者かが潜んでいると考え、再び距離を保つ。
「なんとか攻撃は弾きましたが…いささか厳しい状況ですな。」
ペンドルトンは2人の戦いを物陰から見ていた。気配を完全に絶ち、様子を伺っていたがヨハンが危機に陥っているとわかると、魔法攻撃でアドルフの攻撃を弾いたのだ。
だが状況は芳しくなかった。
あの様子を見るにヨハンの意識は完全にないだろう。閃光弾で黒いオーラが消えるのは見ていたが、恐らくしばらくすれば復活する。
今の状態ではヨハンを助けるどころか、彼に自分が殺されてしまう。
第一、アドルフに姿を見せればヨハンに殺される前にアドルフにも狙われかねないのだ。
「今は気配を消し、傍観に徹するのが最善の策…。ヨハン殿の意識が戻りさえすれば…」
ペンドルトンはグリージャにテレパシーを送り状況を知らせた。
ヨハンが暴走していること、アドルフと対決していること、そしてこの場には来てはいけないこと。
あのような状態では止めることは不可能だ。
「そんなところでこそこそと何をしているんですの?」
突然背後から声が聞こえた。だが時すでに遅し。声の主ー恐らく女ーが魔法をかけたのか、ペンドルトンは身動きが一切取れなくなった。
指先すら動かせず、半ば金縛りの状態。
ヨハンに気を取られ、アドルフにも仲間がいるというあまりにも簡単な思考に行き着かなかったのだ。
「ぐっ…背後を取られるとは不覚…」
唯一動かせる口で悪あがきをする。
が、術者はそんな彼の様子を見て楽しんでいる。まるで巣にかかった獲物を狙う蜘蛛のように。
「覗き見は恥ずべき行為…でも心配なさらないで…」
艶やかな声が耳元で囁く。
女は短刀を取り出しペンドルトンの首に近づけた。
「見たところあなたアドルフ様の敵の一派ね。これからいくつか質問するから答えなさい。さもないと…」
女が短刀をペンドルトンの首にぐっと押し付ける。
今彼の命はこの女の手の中だ。
「わかりました…あなたの質問に答えましょう。
ですがこれだけはお聞きいただきたい。
あのジークフリートの敵…彼を止めないことには我々もどうしようもないのです。」
ペンドルトンがこの状況で取れるただ一つの抵抗は交渉と時間稼ぎのみ。とにかく相手の手を止める、とまではいかなくとも自分の死を先延ばしにすることが死活問題なのだ。
彼の言うことを聞いた後、女は冷酷な笑みを浮かべるとペンドルトンの耳元で囁いた。
「簡単なことね。あなたが今からアドルフ様に加勢してあの男を止めてくださればいいのですわ。」