正統なる勇者3
この世界で始めて勇者と呼ばれる者が現れたのは今から数百年前。
まだ魔物や魔族が力を今以上に持っていた、戦いの絶えない時代ー
人々の中の一部が魔物に対して立ち上がり、戦った。そしていつしかこう呼ばれるようになった。
勇者とー
勇者たちは各地で名をあげた。
そして彼らは異世界の神話、アーサー王伝説などに登場するものたちの名を冠し、名実共に勇者となった。
数多くの試練を越え、精霊の加護や神託の力を得て、戦いを続けた。
魔王は倒れても何十年かすると再び蘇った。
だが人々は寿命を迎える生き物だ。勇者たちはより優秀で魔物に対する力を備えた子孫を残し、勇者としての地位を世襲させていった。
代を重ねるごとに魔王は強くなり、また勇者たちも代を重ねるごとにその血は濃くなっていった。
始まりの勇者の一族、アーサー。
聖剣エクスカリバーを手に果敢に魔物に立ち向かった聖なる勇者。
始まりの魔法使いの一族、マーリン。
アーサーや他の戦士たちを支え、また魔法をもって魔物に立ち向かった偉大な魔術師。
「そのような私達が、こんな形で合間見えるとは…不思議なものですなヨハン殿。」
ペンドルトンはさっきからこの話しかしていない。ヨハンはその風貌の異様さが際立つということで顔が見えないようフードを被せられていた。
これから彼らはもう一人の参加者と会い、そして戦いに参加するため勇者機関へと出向く。そのためにここフィンガルトまでやってきたのだ。
「ヨハン殿、あなたはフードを被っていてもいささか目立ちすぎますなあ、特にその剣ですぞ。」
ペンドルトンはヨハンが持っている黒い剣を指して言った。
刀身に限らず、鞘も黒い異様な剣だ。
「悪いが、この剣は手離せない。」
ヨハンはぶっきらぼうに言う。
「ま、それはいいでしょう。しかし、見てくだされヨハン殿。」
ペンドルトンはあたりを見渡して言った。
「あなたも見知った顔ぶれが多いですなあ。」
ヨハンは辺りを見回したが、確かに魔王討伐の際に共に戦った顔も見てとれた。
「しかし残念ながら向こうからはあなたの顔はわからないでしょうな。フードを被っているからではなく、見た目や雰囲気が3年前とは別人ですからなあ。」
ペンドルトンの言うとおりなのだが、この正論は人の神経を逆撫でするものだとヨハンは思った。
「ヨハン殿こちらです。こちらに我がパーティの3人目、グリージャがおります。」