邂逅5
ペンドルトンはわかっていた。
彼はその魔剣に魅入られているだけでなく、体から勇者の血がなくなっていることも。
彼の肉体に流れているのは魔王討伐で倒した魔物たちの血。彼の勇者の肉体に魔物たちの血が流れている。
聖と魔、光と闇、相反する2つのものは決して交わることはなく激しい拒絶反応を招く。
そして今、普通の人間ですら感知できてしまうほどの邪悪なオーラがコロッセオ外部から発せられていた。
それはヨハンが体内の魔物に負けてしまったということを意味していた。
それに加えてペンドルトンがヨハンのことを感知できた理由はもう一つあった。
ペンドルトンはヨハンにもしものことがあったことを想定して彼に使い魔を付けていたのだ。
だがその居場所を感知するための使い魔も、この暴動によって居場所を知らせるという本来の役目を果たせずにいた。
群衆が多すぎて使い魔のみの感知が難しいからだ。
しかし恐らくヨハンの暴走によって使い魔の気配がぱたりと消えたのだ。
「この気配からおおよその居場所はわかる…グリージャ殿のこともありますが、今は後回しにせざるを得ないでしょう。」
だがこの時ペンドルトンはもう一つの気配に気づいてしまった。
ペンドルトンはこの気配に今まで気づけなかったことに酷く後悔した、と同時に今ヨハンが置かれている状況を想定して肩を落とす。
「こ、このオーラは…ヨハン殿の邪悪な気配で気づかなかったとは…
恐らくこの荒々しい気配…まさか、ジークフリート…?」
ペンドルトンの予想が当たっているならそれは最悪の状況に他ならない。
ただでさえ不安定な状態で、あの男を相手に無傷で済むわけがない。
ジークフリートのパーティーには自分と同じ黒魔術師、そして得体の知れない錬金術師がいたはず。
今ジークフリートの増援が駆けつけたなら明らかに不利ー
仮にジークフリートを退けたとしてもこちら側の被害は大きい。これから先の戦いが苦しくなるのは明白。
ペンドルトンはいち早くヨハンの元へ駆けつけ、彼を連れ帰らなければならなかった。
なぜなら、あの男ジークフリートはー
攻撃を通さない無敵の肉体を持っているからだ。