邂逅2
「アンセムよ…お前にハーデスが見えないのも当然だ。まだお前はネクロマンサーになったばかりなのだからな。
ネクロマンサーとして熟練度を上げれば姿が見えるようになるだろう…」
今までの態度から魔術師の言葉はあまり信じられなかったが、かつての仲間と会えた嬉しさの方がその疑問より勝っていた。
「実は2人に話があるんだ。近いうちに首都で戦いが行われるー」
そして現在ー
今こうして3人は戦いに参加していた。
「とにかくほとぼりが冷めるまでじっとしていよう。この混乱に乗じて襲撃して来る輩がいるかもしれない。」
「………」
アイリはじっとアンセムを見ている。
その目はただ真っ直ぐに彼を捉えていた。
「どうしたの?アイリ」
「なんかアンセム…逞しくなったね!こんなキリッとしてなかったよ前は!」
「そんな!照れるよアイリ!
ていうか、今までの俺だってそこまでヘタレじゃなかっただろ?」
『お楽しみのようじゃないか、アンセム』
「⁉︎」
突然アイリとグレンの動きが止まった。
彼らは直立不動のまま顔は正面をむいていたが、その目はぽっかりと穴が空いたように真っ黒だった。
まさしく屍人そのものー
そんな様子で屍人のグレンがあの魔術師の声で話し始めたのだ。
『そういえばこの形で話すのは初めてになるか…しかし、そんなに驚かなくてもいいだろう。』
「お前か…魔術師…!いきなりなんの真似だ⁉︎
2人で遊びやがって…」
大切な仲間を使われたことにアンセムは怒りを露わにした。
目が黒い空洞になったグレンはゆらりとアンセムの方に向きを変えた。
魔術師の意のままに動くその姿はまるで人形のようだった。
アイリは目が空洞だったがその場で動かずじっと立ち尽くしている。
さすがに彼女まで同じようにしたならアンセムの怒りを買うとわかっていたのかもしれない。
『まるで生きている人間と接しているように見えてな。その兆候は危険だ。
あくまでこいつらはお前の駒。屍人兵なのだからな。』
無機質なグレンが喋る。
「この2人を今すぐ元に戻せ。」
静かにアンセムが怒る。だがその怒りは想像以上だった。彼は血が出るほど自分の拳を握りしめていた。
『死人に情が湧いたか。はっきり言っておこう。
こいつらはまがい物だ。本物は既に死んでいる。それはお前自身が一番わかってるんじゃないのか?』
「……」
図星をつかれたのかアンセムは押し黙る。
『それに馴れ合いに興じているうちに…後ろを見てみろ。』
ハッとしてアンセムは振り返る。
人形と化したグレンの向く先にはある人物が立っていた。