歪んだ正義4
「へえ〜、下は大変なことになってるんだな。」
「ざわざわしてここからでもうるさい。もっと上へ行こう、ねえ“ウルフ“。」
「おいおい冗談だろ?今ので十分じゃねえか。2人は上へ行ってもいいが俺はここに残る!なあ相棒!」
「しっかし、あのパラディンも肩書きだけのとんだ狂人だな。あれだけ他人をいたぶれるのはもう才能の域だ。」
ここは首都フィンガルトのコロッセオー
ではなくそのコロッセオの遥か上空である。
浅黒い肌に浮き出た鱗、紅い髪を持ち背中には翼も生えている。
そう、彼らは亜人種の一派だ。
竜人は翼があるため1人で空中を飛び回っているが、彼の仲間である2人は中型のワイバーン(ドラゴンのような生物)に跨りこの遥か上空にいるのだ。
長い耳、美しい金色の髪、透き通るような白い肌を持ち、宝石のような輝きを放つ金色の目をするのはエルフであるセミラミス。
そして高い所が苦手なのはワーウルフであるウルフだ。
彼は高所恐怖症なのかワイバーンにしがみつき、2人よりも低位置にいた。
その筋骨隆々とした図体からは想像できない怖がり方をしている。
人間たちと同じコロッセオにいても居づらいと感じたのか、竜人が手配したワイバーンで上空から試合を見ていたのだ。
だがその内容は到底パラディンというクラスが行うにふさわしくないものだった。
彼ら亜人種は目や耳がいいのでここからでも試合の内容をはっきりと見て取れた。
そして、暴動が起きているのもはっきりと見ていた。
あの反乱計画から1年ー
3人は方々を彷徨い、やっとの思いで首都へとたどり着いた。
彼らが奴隷として扱われていたあの悪夢のような国からの脱出は困難を極めた。
首都から遥か南に位置するキングピサロ帝国ーその国こそが史上稀に見る奴隷国家として悪名高い国だったのだから。
異世界で征服者として、インカ帝国に対し暴虐の限りを尽くしたフランシスコ•ピサロの名を冠する暴君、ピサロ2世シャルルがその原因だった。
だが現在、彼らの反乱が功を奏したのか帝国は崩壊の危機にあるという。
帝国はさておき、彼らは亜人種の集落を渡り歩いた。
追っ手から逃げ、時に戦い、ようやく首都へたどり着いたのだ。
今までは番号でした呼ばれたことがなかった彼らだが帝国から逃げる際、名前をつけることにした。