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勇者たちの鎮魂歌  作者: 砂場遊美
第2章コロッセオ編
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歪んだ正義3

「俺たちはあいつの拷問を見るためにここにいるんじゃあねえ‼︎あいつを殺せえ‼︎」


「時代遅れの教会の犬どもがふざけるなよ‼︎」


コロッセオはいよいよ混沌の様相を呈していた。

場内に侵入した者たちはイングリスに向けて猛進しており、その勢いはすさまじいものだった。

しかしイングリスはそんなことに一切気がついていないかのようにジェームズをいたぶっている。


「お前たち、戻れ‼︎その男は危険だから我々勇者機関が対処する!」


さらに場内に侵入した暴徒への対処とイングリスを止めるための勇者機関の人間までもが場内へとなだれこむ。


「てめえら勇者機関だろうが、こんなの戦いじゃねえ!早く止めろよグズが‼︎」


暴徒の勢いはさらに激しさを増していった。そもそも勇者機関は一般人には手出しができないため、この暴徒をかいくぐりイングリスとジェームズの元までたどり着くのは難しい話だった。

おまけに暴徒は勇者機関側にも攻撃を行い見境がついていない状態になっていたのだ。





「おうおうおう、こりゃ初戦から凄いことになっとるなあ。」


骨つき肉の骨をサクサクと食べながらアドルフは混沌としたコロッセオに相変わらずどっしりと構えていた。その出で立ちとオーラには暴徒と化した一般人たちも近寄れずにいた。

ギーゼラも相変わらずアドルフの側にいたがその表情はひどく不機嫌だ。

いつもは豪快でギーゼラの変化にも疎いアドルフでさえ今の彼女に対して少しの不安を感じていた。


「醜い…あの教会のパラディンも、群衆も…一人残らず消し去ってやりたいですわ。」


ギーゼラの右腕の指輪が淡い光を放つ。

あのアルミエーレの兵たちを倒した毒の霧、それを彼女はここで使おうとしていたのだ。彼女の表情は淡く光る指輪とは対照的に激しい怒りに満ちている。

しかし指輪の光はアドルフの大きな手によって遮られた。

彼が魔法の発動を止めたのだ。


ギーゼラは一瞬はっとした表情になった後アドルフにもたれかかりしばらくおとなしくなった。


「こんな奴らなど放っておけ。バルムンクやギーゼラの手を汚すまでもない。」


ギーゼラは俯いたまま何も話さない。



「さて、ハルトマンでも探しにいくとするか!しばらくこの喧騒は続くだろう。」


アドルフがそう言い放ち席をたったその時、彼は見てしまった。

自分が探し求めていたものをー。

いや正確にはそれは人物だったのだが、ギーゼラを諌めなければならないはずのアドルフの心を大きく揺さぶる者が視界に入ってしまったのだ。



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